深夜、趣味に興じる
妻子が寝静まった後で、いそいそとパソコンを開く。
将棋王将戦、藤井三冠対羽生九段。
新旧の天才がまみえる一局。この日を楽しみにしていた。
かつて棋士に憧れた。
私の一番のアイドルは羽生善治その人。
最近は寄る年波か往年の活躍は見られない。
だけど一九歳の次世代スターとの対局には、当人も並々ならぬ意欲を燃やしているはず。
先手▲(羽生)側を持ち、棋譜を並べていく。
迷いなく▲1八角と打った手に羽生さんの溌溂さを感じ取った。
仕掛けていく老練と、見切った受けをする若武者。
深夜ながら興奮が止まらない。妻の赤ワインを開けて小休憩。
終盤▲3九飛に羽生マジックを感じて歓喜し、見事な返し技△5六角、勝利宣言△8一飛に震えた。
勝負あり。
悪あがきをしない、首を差し出す一手を羽生さんが指す。
悔しさを背負いながらなお、恭順。
追い抜いていく才能に、何を思うのか。
うう、全く自分と関係ないのに涙が……。
酒はやっぱり控えよう。
冬の雨かたち作りの▲5三歩
(ふゆのあめかたちづくりのごうさんふ)
季語(三冬): 冬の雨、寒の雨
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