ポップコーンは買わない。vol.105
ニーナ・シモン 魂の歌
ニーナ・シモンをご存知?
私は名前で聞いたことある程度だった。あとは黒人のミュージシャンであるということくらいの薄い知識。
サマーオブソウルという映画が今年の夏に公開され話題となっていたようだ。
私もたびたび観たいと思っていたのだが、地方にはなかなか上映の機会が恵まれず悔しい思いをしている。
サマーオブソウルとはどんな映画なのかというと、1960年代の末、ウッドストックという愛と平和の祭典として開かれた野外音楽フェスティバルがあった。そのバカでかいフェスの裏でこじんまりとやっていた黒人限定のライブがあった。
それが、ハーレム・カルチュラル・フェスティバルと呼ばれた野外音楽フェスティバルで、スライ&ザファミリーストーンだったり、若きスティービーワンダーだったり、BBキングだったりとそうそうたる黒人アーティストの中、ひときわ存在感を示していたのが、今回紹介するニーナ・シモンであった。
黒人ばかりの音楽フェスから想像できるように、とてもイデオロギーの強い雰囲気が感じ取られる。ベトナム戦争の絡みもあってこの頃のアメリカでは黒人差別への抗議を主張するアーティストも多かった。有名なところでいえばマーヴィン・ゲイとかね。
そんな中でニーナ・シモンは自分たちの権利を守るには自分たちが立ち上がらなくてはいけないということで、そのためには暴力も必要で、自分たちの自治区をつくった方がいいというように説いていた。なかなか激しい思想である。
その思想の根源には大変なつらい思いをしてきた過去があるのではないかと考える。それが彼女の精神を蝕み続け浮き沈みの激しい人生を送ることになったのだった。
夫からのDV
これは長年疑問に思っていて、DVをする人の思考が分からないんだな。
女の人、ましてや自分の嫁を殴りつけることでいうことをきかせたいだけなのだろうか、そこになぜ暴力が必要なのか、さっぱり分からない。
子供に対する暴力も同様に。
こんなこと言うのも嫌なくらい当たり前なことだと思っているのだが、それがなくならないということはだ、何かしらの潜在的差別意識が残ってるからに違いない。
夫でニーナ・シモンのマネジャーも務めていたアンドリューは、ニーナに対して暴力を日常的にふるっていたという。
暴力の挙句にレイプをしてしまうというエピソードまで出されていて、
いや、あんたにとってなんなんだよ。金を稼ぐ装置かなにかかと思ってるのか、それでたまに欲も発散できればとか思ってんのか。
観ていてとても怒りを覚えた。インタビューでもアンドリューは平然と語ってるのがなおのこと腹が立つ。
それが火種になっているかどうかは定かではないが、ニーナがキング牧師に傾倒し、政治運動を始めるあたりから明らかに人格が変わったようにニーナ自身も暴力的な思想になっていった。
そして、ついに自分が暴力をふるう立場になってしまう。その矛先は自分の娘に…。
とても残酷な話である。
繰り返させる悲劇、どうしたら止められるのか。
聞いたことのある話では、DVは身体的な傷以上に精神的な傷の方が危ういとされている。
幼少期にそういった経験をしてしまうと将来的に自分も子供に同じようなことをしてしまうという傾向にあるらしい。
当時のニーナを助けられる人はいなかったのだろうか…。
休みって大事
その後、アンドリューと離婚しアフリカへの移住、そこで歌うこともせず自由に暮らしていたらしい。でも生活していくには稼がなくちゃいけない。
でも彼女はピアノと歌以外で稼いだことがなかったので、嫌だけどしぶしぶ歌を歌い始める件がある。
歌、ピアノが近くにあるから不幸になると思っていた彼女にとってトラウマのようなものであったらしいが、改めて客前で演奏するとやはり自分にはピアノと歌しかないんだということに気づかされ、再び復帰の道を歩み始めたのだ。
なにかの激務に追われている人、勇気をもって一度休むというのはとてつもなく大切なのかもと思った。激務の中ではなかなか自分を見つめる機会もない。結果的に馬車馬のように働き、気づいたらぶっ倒れるなんてことも。
休むことで自分にしかないものを見つけられるかも?
伊集院光が好きで毎週深夜のラジオ聴かせてもらっているが、彼は95年から毎週夜中の1時からの放送を続けている。さらに2016年から毎朝帯でラジオ番組を2時間半やってる。
それで先々週とその前の週かな?2週間ラジオの仕事をまるっとお休みしていたらしいのだが、逆に体調を崩してしまったらしい。
たしかに大変な仕事とはいえそれが生活のリズムとなっていてそれがいきなりなくなると体調を崩してしまうというのはなんとなく納得できる話である。
適度に休みがあることが大切なのかもしれないな。
最後に
こういう過去のスターミュージシャンの話はろくなエピソードがない。笑
たいてい薬物中毒だったりアル中だったり、苦労してる人が多い。
そういう業界にいるもんだと思ってしまえばそれまでだが、それが逆にカッコいいという議論にあがることもバカバカしいなと思ってしまう。
でも、ニーナ・シモンの音楽は歴史の中でも重要な位置付けとして挙げられることは多いし、人気も高い。
音楽に政治の思想をのせるなんてとか、音楽はなにも考えずに聴けた方がいいんだという思想も一定層あるのも分かる。
分かるけど、彼女が心から思ってることを曲にしてなにが悪い、数多ある音楽の中でそういった楽曲があってもいいと思うし、楽曲として永遠に残っていくものは歴史を証言するものだから重要であることは間違いないと思う。
だからこそ向き合ってみたい、そんなアーティストだと僕は思う。
背景を知ればなおのこと、楽曲のことがよく分かって味わい深くなる。
こらからも引き続き聴いていきたいと思うよ〜。
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