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聴くとクリエイティブが伝染するバンド、スパークスとは一体なんなのか。 ー 映画「スパークスブラザーズ」

ポップコーンは買わない。vol.136

「ラストナイト・イン・ソーホー」「ベイビー・ドライバー」のエドガー・ライト監督が初めて手がけたドキュメンタリー映画で、謎に包まれた兄弟バンド「スパークス」の真実に迫った音楽ドキュメンタリー。ロン&ラッセル・メイル兄弟によって1960年代に結成されたスパークスは、実験精神あふれる先進的なサウンドとライブパフォーマンスでカルト的な支持を集め、時代とともに革命を起こし続けてきた。半世紀以上にもわたる活動の軌跡を貴重なアーカイブ映像で振り返るほか、彼らの等身大の姿にもカメラを向け、人気の理由をひも解いていく。さらに、ベックやレッド・ホット・チリ・ペッパーズのフリー、フランツ・フェルディナンドのアレックス・カプラノス、トッド・ラングレンなど、スパークスに影響を受けたアーティストたちが出演し、彼らの魅力を語る。

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スパークスはポップデュオであるにも関わらず、印象としては全く大衆に迎合していないと思わせる側面がある。

予告編を見ていただければその感じがわかると思う。

表現者と受容者の共犯関係

自分たちの頭の中で考えていることを外に出して理解してもらえることって考えてやっていたら相当難しいような気がしている。

「ユーモア」には人を楽しませるという側面だけでなく、それと同時に対象やそれを取り巻く社会を揶揄する側面も存在することがある。笑わせる演者側と笑う観客側で共犯関係を結ぶこともしばしばあることだろう。

揶揄の内容が世の中から評価されている現状というのは今の社会的な状況も表しているようにも思える。

逆に過去の音楽や映画などの表現にも、今では受容できない部分や逆に受容されている部分が浮き彫りになってくる。

スパークスとビートルズがオーバーラップする

スパークスのユーモアは、歌詞やレコードのアートワーク、ライブの演出、そしてなにより彼らの言動に表される。

それらはビートルズに共通している部分がある気がしている。

ビートルズの前半期はツアーで世界中を回っていたこともあり、記者会見をする機会も多くあり、またその映像もよく出回っている。その中で注目されるのは彼らの言論である。

社会や政治にも言及を求められることが多くあった中で、彼らは華麗にユーモアで返している場面が印象的だったりする。スパークスにも同じようなエッセンスを感じることができるはずだ。


スパークス間違いなく、ビートルズの影響下だとは思うんだが、のちにポール・マッカートニーがスパークスのメンバーであるロン・メイルに扮してMVに出演したこの逆輸入感はワクワクしたね。


何か作りたくなる。クリエティブさが伝染してしまうスパークスさん。

ビートルズやスパークスには音楽で大衆を熱狂させる要素のほかに、その言動、生き様に引き寄せられてしまう面があると思う。特に若者は、保守的な世の中に不満を感じることも多くある中で、彼らのような人間が矢面に立って芸術表現をしているのは我々にとっても希望だし、触発されて行動できる面もあると思うのだ。

本編でもレッチリのフリー氏がスパークスの音楽や人間性に触発されて自分の表現に向かうんだ的なことを言ってた気がする。

ビートルズも時代を作ってきた人たち。その影響は凄まじいもので、コピーバンドがでるのはもちろんのこと、髪型や服装等の容姿にいたるまで、彼らはさまざまなジャンルを飛び越えながら混ぜながら新たなムーブメントを起こし続けてきた。

だが、そんな中でもビートルズの最大の名盤であるサージェントペパーズはブライアンウィルソン率いるビーチボーイズのペットサウンズから影響をうけて作ったと言われている。もちろんかれらもいろんなものから触発されて、制作しているのだ。

余談にはなるが、
私自身も映画や音楽、絵画などのアート作品から触発されて何か生み出したいという気持ちを得てして受容することはよくある。たいしたものを生み出せていない現状に対してムカムカすることが大半なのだが。

どういう形であれアウトプットをする中で、人に見てもらっていいねしてもらえたり、コメントしてもらったりというのはありがたいことだと思うし、このアウトプットの質を評価してもらえてるようにも感じることができる。もちろん質はどうあれアウトプットすることが大前提であることは間違いない。

そのスタートとして、何かに触発されることというのは非常にモチベーション的な意味でも重要なので、総じて「推し」のような存在は非常にありがたいということをスパークスを通して改めて実感したところだった。

最後に

みなさんにとっての推しがそれぞれで触発を与えてくれて、我々の活力になるのはありがたいことである。

本作も監督のエドガー・ライト氏がスパークスのファンだからこのドキュメントが生まれたという背景がある以上、これに勝る説得力はないだろう。

エドガー・ライト氏が推しという方にとっては彼にとってのなにかしらのモチベーションがあることで我々は作品を受容できている。

誰かの表現は大なり小なり誰かに影響を与える。

いいねの数を気にしていることが問題になったりするけれど、ある程度の承認欲求はやっぱり必要。アウトプットの質を上げる意味においては。


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