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私の遅読を肯定する本に出会った話。

何かと
”はやい”ということがもて囃される世の中。


仕事を筆頭にあげればキリがないが、今回取り上げたいのが

「読書」
における”はやさ”。


タイトルで察するに、私はひどく遅読である。


私には兄妹がいる、長男の私の下に2人の妹、そのうちの上の妹は割と読書な好きなタイプで、

決してハードな読書タイプではないものの、一冊を読み切るスピードは私からしたらものすごく早くて、300ページほどの小説だったら1週間ほどで読み終えてしまう。

それに比べて私はというと、半年はかかるわけで、読み切ればいい方で、他もに読みたい本が出てきて、まだ読み途中であるにもかかわらず、次の本のページをめくり始めてしまうのだ。

これの繰り返しである。

小説なんかは特に物語を読み進めていくのが命なのに、時間が空いてしまうとどんなだったか覚えてなくて、また戻って読み進めたりしながら、まさに五十歩百歩状態で、全然読み進めることができないのだ。

大変に恥ずかしい話である。


どうやったら本をもっと楽しく、なおかつ内容もしっかり入れながら読むことができるのかなと思った時に、見つけた本があった。

その名も
「本の読み方」

思わず笑ってしまうタイトルですが、副題には
「スロー・リーディングの実践」

「本の読み方」 平野啓一郎著

と記されていた。私はまさに俺のことじゃないかと思ったと同時に、
自分を肯定できるいい教材に巡り合ったと楽天ブックスで即買い。

しかも著者はあの平野啓一郎さん

三島由紀夫のドキュメンタリーでその姿は初めてお見かけして、平野さんの考えや、何に興味があるのか、何が好きなのか、ということに興味を持ち始めて、それ以来小説やら映像やらで楽しませてもらっているただのファンだ。


本書では、スロー・リーディングの実践とあるように、読み進めるということよりも、読み深めるということを重点においているように思った。


速読は、文字を追うことだけになってしまって内容のことになると抜けてしまいやすい。
わかる、私も何度か速読に挑戦してみたことがあったが、まさに字を追うだけ、全く内容を覚えていない。

本書ではざっくりと人間の記憶の仕組みから、より理解を深めるためのポイントを小説家だからこそ技術で基に、文章を構成する言葉の一つ一つの機能面を解説しながら、実際の小説でスロー・リーディングの実践までやるという画期的な一冊だった。

ページ数の少ないので非常に読みやすい。読書にコンプレックスのある人にはおすすめしたい一冊である。

本をたくさん読める人は羨ましいし、自分もなるべくそれを目指して知の蓄積を図りたいと思っているが、本を書いている人からすると我々からは計り知れないほどの苦労が詰まっているはずなのに、それを例えば2時間〜数日で蓄積できるかと言われれば無理な話であるとともにそんな煩悩はおこがましいにもほどがあるものである。

著者が魂を削ってつくあげたものであることを意識すると重すぎるし、ハードルも高くなってしまうが、読み終えてもしばらく置いてから再度読んでみることで発見があることも多いかもしれない。

本棚の冊数を気にするよりも一冊の理解を大切にしていきたいと思った。

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