見出し画像

あなたの苦しみの原因を知ろう【英語で歎異抄】

 『歎異抄』第一条
A Record in Lament of Divergences, 1

【英訳】
“Know that the Primal Vow of Amida makes no distinction between people young and old, good and evil; only shinjin is essential. For it is the Vow to save the person whose karmic evil is deep and grave and whose blind passions abound.
(Collected Works of Shinran, p.661)

【日本語訳】 
弥陀の本願には、老少・善悪のひとをえらばれず、ただ信心を要とすとしるべし。そのゆゑは、罪悪深重・煩悩熾盛の衆生をたすけんがための願にまします。
(『註釈版聖典』831頁)

【現代文訳】
阿弥陀仏の本願は老いも若きも善人も悪人もわけへだてなさいません。ただ、その本願を聞きひらく信心がかなめであると心得なければなりません。なぜなら、深く重い罪を持ち、激しい煩悩をかかえて生きるものを救おうとしておこされた願いだからです。
(『現代語版聖典〈歎異抄〉』4頁)

苦しみの原因はわたしのG.A.S.

 阿弥陀如来の本願について、親鸞聖人は、「罪悪深重・煩悩熾盛の衆生をたすけんがための願(深く重い罪を持ち、激しい煩悩をかかえて生きるものを救おうとしておこされた願い)」と述べられています。

 煩悩熾盛とは、苦しみの原因である煩悩が、火の燃え上がるように勢いが盛んなことを意味します。数ある煩悩の中でも、もっとも根源的で断ちにくいとされる煩悩を「三火」といいます。三火の煩悩は、貪欲(貪り執着すること)・瞋恚(嫌い怒ること)・愚痴(物事を知らず迷うこと)の三つです。これら三つは、心を害する毒の意味で、「三毒の煩悩」ともいわれます。

 さて、この三火の煩悩(貪欲・瞋恚・愚痴)について、英語ではとてもキャッチーな覚え方があります。英語では貪欲をGreed、瞋恚をAversion(Anger/hatred)、愚痴をStupidity と表現します。これら三つの単語の頭文字をつなげてみると、「G.A.S.」、つまりガスです。煩悩のガス(G.A.S.)は苦しみの原因を表しています。アメリカ人の先生が仏教の授業で、「仏教の目的は自分のガスを抜くことですが、今ここでそれをしないでください」と言って教室が笑いに包まれたのを覚えています。このようなアクロニムのおかげで、わたしは教えを平易に覚えることができました。
 
南條 了瑛(なんじょう・りょうえい)
龍谷大学大学院文学研究科博士後期課程修了、博士(文学)。専門は真宗学。現在、東京都中央区 法重寺 住職、武蔵野大学仏教文化研究所客員研究員、築地本願寺 英語法座 運営委員、東京仏教学院講師や複数の大学で非常勤講師をつとめている。本願寺派布教使、本願寺派輔教。

※本記事は『築地本願寺新報』掲載の記事を転載したものです。本誌やバックナンバーをご覧になりたい方はこちらからどうぞ。

この記事が参加している募集

#最近の学び

182,202件

#英語がすき

20,647件