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鬼滅の刃で有名な「紅蓮華」の意味。ー実は意外と身近な仏教用語8選、集めました。②

普段何気なく使っている言葉が、実は仏教に由来する言葉であることも。そこで今号は、編集委員たちが選んだ、意外と身近な仏教用語とその由来をご紹介します。

スジャータ

 コーヒーに入れるミルクや、新幹線の中で食べられる妙にカタ〜いアイスクリームで有名なスジャータ。この商品名は、お釈迦さまがさとりを開く前、6年に及ぶ苦行の末、「苦行はさとりに至る道ではない」と考えたお釈迦さまに、乳粥を供えたスジャーターさんという女性の名前に由来します。

 ちなみにそのスジャータ(商品名)を配達するめいらくのトラックを写真に収めるマニアがいるらしい。なぜかといえばこの通り、トラックの右側面に「ターャジス」と商品名が書いてあり、「ターャジスってなんて読むんだ!?」との疑問から面白がられているもよう。

 なお、2018年からこの表記は変わっており、「ターャジス」車は“絶滅危惧種”だとか。(星)

 檀那/旦那(ダンナ)

 サンスクリット語の「ダーナ」を音で表した言葉。与えるという意味で、英語のドネーション(寄付)やドナー(寄贈者)の語源であり、日本では施しを広く行き渡らせるという意味から「布施」となりました。つまり、檀那とは布施であり布施をする人ということ。

 しかし旦那と聞くと、商家で奉公人が主人を呼ぶときや、自分や誰かの夫を指すときの呼称を思い浮かべる方もいらっしゃるのでは? 語源を考えると、夫が妻を旦那と呼んでもいいし、お互いに旦那と呼び合いたいですよね。

 性別や夫婦関係を越えて「旦那」という呼称が使われるようになったら、社会がもっと寛容になるかもしれませんね。(枝木)

奈落(ならく)

 絶望的な気持ちに陥ったときに「奈落の底に落とされたよう」という表現が使われます。奈落とはサンスクリット語「ナラカ」に漢字をあてたもので、元の意味は「地獄」です。
 
 地獄は、邪な行為を行った者が送られる場所であり、闇の世界です。元々の意味そのままに現代でも使われてる希有なことばのひとつ。

 奈落は、劇場の舞台や花道の床下をも差します。真っ暗なことから奈落と呼ばれるようになったのですが、舞台演出には欠かせない場所。そこを奈落と呼び始めたのは歌舞伎の人たちです。元は世間の外れ者とされていた役者たちが、自分たちを、地獄からせり上がってきたんだぜと洒落のめしていた姿が想像できます。(松本)

ニルヴァーナ

 日本語で涅槃のこと。煩悩の火が吹き消されて、全ての束縛から解き放たれた状態。仏教の悟りの境地のことです。

 90年代に米国の音楽シーンを席巻した「ニルヴァーナ」はロックバンド。名前の由来については、「意地悪く汚いパンクな名前ではなく、詩的で美しくて響きのいい名前をつけたかった」からだったとのこと。

 しかし、彼らの音楽は、ヨレヨレのみすぼらしい出で立ちからグランジ・ロック、つまり薄汚いロックと呼ばれ、歌の内容も、自身が抱える闇を晒したような当時の若者が抱える閉塞感や絶望感でした。バンドの名前は美しくありたかったというのは、闇の中に留まり続けたくない思いがあったのからなのでしょうか。(枝木)

バカボン

 漫画家・赤塚不二夫さんの代表作『天才バカボン』の主人公の名前「バカボン」は、なんとなく馬、鹿と書いて「バカボン」と思っていた人はきっと多いはずです。

 私がバカボンという言葉から思いつくのは「薄伽梵」「婆伽梵」。これはサンスクリット語の「バガヴァーン」の訳語で、「覚れる者」「お釈迦さま」を意味します。

 赤塚不二夫さんは、富山県出身の真宗門徒。『天才バカボン』に登場する「レレレのおじさん」は、お釈迦さまの弟子の一人で、お釈迦さまの説法を聞いてもすぐに忘れてしまうので、弟子を辞めさせて欲しいとお釈迦さまに言いに行くと、それなら掃除をして欲しいと言われ、一心に毎日掃除をすることで悟りを得たという周利槃陀伽をモデルにして描いたと言われていますね。(宮本) 

不思議(ふしぎ)

 打消しの言葉を考察する時は、不可の可が「できる」とか、無量の量は「はかる」というように、後に続く言葉を先ず和訳するとよい。

 すると不思議の思議は、思が「おもう」、議は「はかる」となるから、不思議は「おもいはかれない」という事。ところで「おもう」が心の字を含み、「はかる」が言の字を含むのは、認識や言語に関係することを示していて、長らくこれらをたよりに存在を解明しようと挑む多くの思想家たちを、仏教は唸らせ続けている。

 そもそも、インドの音を写した阿弥陀とは、阿で「はかる」という意味の弥陀を打ち消すから、阿弥陀さまというのは「はかれない」という概念を実体化した、もうなんとも不思議な状態が現象しているわけなのだ。

 つまり「はかれない」ものをはかろうとする私が、阿弥陀さまに触れることにより、「はかれない」ままの存在としてようやく認識できるのである。(小柴) 

紅蓮華(ぐれんげ)

 オリコンチャート「平成最後の1位」と「令和最初の1位」になったのがこの曲。

 アニメ「鬼滅の刃」の主題歌でもありました。サビに向かって一気に曲調が変わって……いや、仏教語の解説でしたね、すみません。

 この言葉、まさしく『観無量寿経』にあるのです。「観音菩薩から放たれる光明は八万四千のいろどりがある。ちょうど紅蓮華のように」という具合です。蓮華は浄土を荘厳する植物で、青蓮華、紅蓮華、黄蓮華、白蓮華の四種類あるとされます。

 観音菩薩は慈悲の象徴。悲しみさえありがとうと受け取れる、そんな物語だからこそ、この色を選んだのかな、なんて思います。そういえば続編もそろそろですね。(藤本)

夜叉(やしゃ)

 夜叉という言葉は「凶悪な人」の例えとして使われ、「外面似菩薩内心如夜叉(げめんじぼさつないしんにょやしゃ)」という言葉もありますが、仏教の夜叉には凶暴なだけではない面があります。

 夜叉はインドのサンスクリット語の「ヤクシャ」の発音を漢字にあてたものです。インドでは、夜叉は古くから信仰されてきた神でした。くわしいところは不明ですが、一説には豊穣の神だったと言われています。これが仏教では、人を食らう悪鬼として描かれるようになりました。

 その一方で、夜叉は仏教に帰依して、仏教を守護する神としても取り入れられました。そのため、経典には仏の教えを聞いて夜叉も歓喜したと記され、仏教寺院に夜叉が祀られることがあります。 (多田) 

【上記記事は、築地本願寺新報に掲載された記事を転載しています。本誌の記事はウェブにてご覧いただけます】

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