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過去5回以上のM&Aの経験を元に、爆速でDD対応を乗り越える秘訣をまとめてみた。

皆様、こんにちは、こんばんは。
コーポレートナレッジシェアを頑張る早瀬です。

スタートアップにて、コーポレートの立ち上げを担ってきたこの数年間で、
株式譲渡、事業譲渡、新設分割…等、
売り手側として複数回のM&Aを経験することができました。

特にDD対応においては、検討先の企業様に驚かれるくらいのクオリティと、スピードが出せていると自負しています。

今回は、そんな私が、
爆速でDDを乗り越えるために、普段からやっておいて良かったこと
お伝えしていければと思っています。

本日は、まさにスマート&エレガント!ってことはなく、
ものすごく、当たり前の内容しか言いません。
つまり事前準備さえ怠らなければ、誰でも爆速でDDを超えられます。

(本内容は、freeeユーザーコミュニティ つばめの巣が誕生する前に、
 トライアルイベントで登壇させていただいた際に話した内容をリライト
 したものとなっております。)

■ 結論

DDは、はじまった時点で、最終的な結果がほぼ決まっています。

相手先から質問を受け取ってから、回答するまでのわずかな期間で、
過去からの資料を完璧に作り直すことは不可能だからです。

常日頃からどれだけ整理整頓がなされているかが一番重要です。

■ M&Aってどう進むのか

ざっくり、こんな感じで進むかと思います。
(本当にざっくりですが)

1つ1つの項目についてTipsを書くと時間がかかるため、
今回は割愛しますが、我々コーポレートの人間の力が試されるのは、
やはりDD(Due Diligence)対応の部分だと思います!

もちろん、他の項目も非常に大事なのですが、
なぜDDで力が試されるのかというと、
まず第一に、M&Aの成否に直結するからです。

そして第二に、DDの内容によっては、
スケジュールが遅れたり、買収金額のディスカウントに繋がるからです。

■ DDってどう進むのか

こちらも図にしてみました。
基礎情報提出とDDが曖昧になっているM&Aもあるかと思いますが、
一般的には、この図の通りかと存じます。

基礎情報提出は、システムから出力したものを提出すれば良いのですが、
 DD対応では、データを組み替えたり、過去の推移を証憑付きで揃えたりする必要があります。

経理、労務といった各セクション毎にQAシートが送られてきてから、
回答後にインタビュー、そして追加QAで論点を潰していくことになります。

このインタビューで相手に「すごいですね」って言ってもらえるのが、
私の考える理想のDDです。

■ 普段から整理整頓しておくべきこと

では、すごいと言われるために、普段から何をしておくといいのでしょう。
最後に個人的にこれをすべし!をまとめました。

経理、法務、労務・その他に分けてます。

□ 経理業務編

DDの質問は、
①組織や、ビジネスの全体像について
②事業ごとの商流や、コアとなる技術、組織全体の流れについて
③その中での取引先(規模・契約内容)について
④個別の取引内容について
と全体から詳細まで多岐に渡ります。

その中で、経理がDD対応を見越してしておくべきことは次の3点です。

第一に、仕訳には証憑の添付を必須にすることです。

スタートアップでは、ちょっと面倒で、仕訳だけ入力していたり、
根拠資料はどっか別の場所に雑に保管していたり、、、ありますよね。
でもそうすると、ミスしている確率が高まります。

DD対応では、おおよそ直近3年分の取引を見られることになります。
その過程で、そのミスが発覚し、BS残高を修正をすることになると、
せっかくのDDのスピードを損なうことになります。

第二に、自分の理解できてない仕訳をなくすことです。

請求書が回ってきて、仕訳を入れる。
その前に、ちょっと一時停止してください!

その請求書は、誰が、どんな目的で、どういう契約を結び発注したか、
結果はどうなったか、ちゃんと全部言えますか?
これを把握しないで仕訳入力することは、脳死状態でオペレーションを回す機械になっているのと同じです。

これをしておくことで、統制が高まる以外に、自分が会社の動きを把握することにも繋がります。それはDDでの様々な質問に対して、全体感を持って回答する手助けにもなります!

第三に、イレギュラーな会計処理をよしとしないことです。

イレギュラーな会計処理は、ミスの温床となるだけでなく、
後で振り返った時に「なぜこうしたのか」わからないことが多いです。
(例え、根拠資料を残したとしてもです)

問題が起こった時に、問題点を分析して、ちゃんとオペレーションに組み込む。そうすればイレギュラーケースではなくなり、結果的にミスの数を減らすことができます。

イレギュラーをなくすための工夫として、私は、
洗い替え以外の振替伝票を、基本的には禁止しています。

□ 法務業務編

次に法務です。だいたい次の4点を実施しました。

第一に、契約書台帳を作ることです。
第二に、契約書の中でも、参照回数の多いもの(可能ならNDA以外)は
PDF化して管理できるとなお良いです。

案外作っていらっしゃらない会社様も多いのではないでしょうか。
過去関わった中でも、台帳がない会社がありました。
すぐに派遣の方に入っていただいて、1ヶ月かけて契約書台帳を作成しました。そしてNDA以外を全てPDF化し、いつでも閲覧可能な状態を作り、その後はそれをオペレーションに落としています。

結果は大成功で、この後その会社は3回のM&Aをしていますが、そのどれもで効果を発揮しております。

第三に、重要な取引の契約状況をちゃんとキャッチし続けましょう。

オフィスや、大口取引、営業上の重要な契約、株主との契約、株主間契約。
リスク管理の側面からも、自社が管理しなければならない契約は、
常に把握しましょう。

私も、契約書台帳&PDFと二重管理になってでも、重要な契約については、別途管理しています。

第四に、議事録は必ずちゃんと作りましょう。

株主総会だけでなく、取締役会の議事録も大事です。
DDでは設立から全ての議事録が必要となります。
また、ちゃんと議題も整理しましょう。借入や、組織変更、規程の承認等もちゃんと決議して進められているのか、DDのためというより、
会社として正しい意思決定をするために整備しましょう。

ここら辺不得意、、というときは、
コーポレート・ガバナンステックとして、
取締役会のDXを推進しているmichibikuなどがあります。

□ 労務・その他全般業務編

最後に労務と、その他全般に関することです。
もうすごい当たり前のことばかり言ってます。

まずは労務から。

買い手の会社からすると、M&A前に組織の健康状態を正確に把握することは困難です。
そのため、まずはオペレーションが適切に回っているか、記録が残っているかを中心に確認いただくことが多いです。労務は、スタートアップだと(運用は回っていたとしても)整備や改善が遅れやすい部分だと思いますが、DDにおいては非常に重要なポイントとなります。

第一に、勤怠と有給について、承認フローを整備し、記録を残すことです。

従業員の方々の勤怠は、実態通りになってますでしょうか。
一部の仕事熱心な方々の中には、会社に気を遣って、労働時間通りの入力をしない方もいると思います。
これを会社が許すことは絶対にNGです。残業代はちゃんと払いましょう。

有給に関しても同じです。
年5日間の取得義務化していますので、取得状況をチェックし、
危なそうな人には3ヶ月前からアラートを上げてあげるなどしましょう。

副次的な効果として、勤怠承認記録や問題点はDDで必ず見られますので、
結果的に、上記を整備することで、DDにもプラスに働きます。

第二に、残業時間を月次で把握して、超過労働をなくしましょう。

月次で①みなし残業を超過した残業時間、②深夜勤務をモニタリングし、
どちらか一方でも費用が発生した場合は、管掌役員から翌月は超過しないよう指導してもらう(部単位で見直してもらう)ようにしていました。

少なくとも36協定の範囲内に収まるようにちゃんと管理しましょう。
時代は、一昔前の「サービス残業どんと来い!」ではありません。
そういう人を見逃さないためにも、勤怠承認と合わせて、
このモニタリングは必ずフローに入れましょう。

第三に、未払残業代は予めなくしておきましょう。

現在の従業員だけでなく、
過去に退職された方も含めて、未払残業代は精算しておきましょう。

また、退職時には、退職届やNDAに加えて、未払残業代がないことの確認書をとっておきましょう(退職届に、その旨追記いただくことも可能ですが、画一的に確認書を取得するオペレーションが良いと思います)

最後に、これはあらゆる業務についても共通することですが、
オペレーションの型化を進めましょう。

また、その上で、
現在の統制上不足している点と、いつのタイミングからどうその穴を埋める想定だったのかを、しっかりとまとめておきましょう。

スタートアップで完璧な統制は工数的にも難しいと思います。
しかし、それをただ放置するだけでは、業務の構築ができていないのと一緒だと私は考えます。

最終的なオペレーション(上場後の水準)から逆算して、
このフェーズでは、ここまでの統制が必要となるから、
現在はこういう設計をしています。 
という説明がつくまで、オペレーションを考え抜くことが重要です。

■ まとめ

今回は、私が普段から気をつけていることの中で、
DD対応を円滑に進めるのに役立ったことについてまとめました。

実際の業務構築は、これ以外にも多くの論点が発生しますが、
大事なのは1つ1つのお仕事を丁寧にこなしていく、この1点だと思います。
(その辺りについては、最近もう1つ書いたnoteに詳細書いております)

その結果、ある日、投資した時間以上のリターンが何度もありました。
ぜひ皆様もチャレンジしてみてください!

本日もお読みいただきありがとうございました。

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