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『私の考えを6分割して生まれたキャラクターたち』-彩演Project 主催朗読劇「君の音」演出インタビュー①楪亜紀

2021年10月22日(金)から24日(日)公演、彩演Project の主催朗読劇「君の音きみのねについて、演出を担当するお二方にインタビューを行いました。

第1回目は、「君の音」の脚本・演出を担当する楪亜紀ゆずりは あきさん。
本noteでもたびたび「役者ポートレート」や「モデル紹介」といった形で紹介をしてまいりましたが、今回インタビューを記事として制作することとなりました。

楪さんの描く、ダークながらも救済がある、そんな唯一無二の世界観がどのように形作られていくのか。
そして「君の音」にどのような思いを込めたのか。
その思いや背景について聞いていきます。
(聞き手:たかはし)

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1.プロフィール

2.「君の音」あらすじ

某月某日 ある女子高生が自殺した
至って平凡ではあるものの
両親に愛され、友達も多く
成績も中の上、いじめの事実もない

世間一般で言う幸せを満たしていた
彼女は本当に自殺だったのか

「さて、問題です
 好きと嫌いを足して2で割って
 それから信頼を抜いたら
 いったい何になるでしょうか?」

親しい人に届けられた遺書
彼女の残した想い

彼女は言った
「ここが永遠ならいいのに」と

彼女は言った
「人を助ける優しい嘘もある
 あったかい嘘もある」と

彼女は言った
「人は嘘をつく生き物だから
 それすら愛したい」と

彼女は言った
「自分の幸せは万人にとっての
 それであるとは限らない」と

彼女は言った
「死ぬときは一番好きな場所で
 好きなものを見ながらがいい」と

「私ね、嘘が見えるの」

彼女の最後は、笑顔だった

3.役者・脚本家・演出家を志したきっかけ

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-本日はよろしくお願いします。早速ですが、楪さんが役者・脚本家・演出家を志したきっかけは何だったのでしょうか?

楪:学生時代にお芝居に触れる機会があったり、テレビの影響があって、最初はナレータをめざしていました。声のお仕事をやろうと専門学校に入学して、役者としてスタートしました。

そのうえで、仕事としてというか、ビジネスとしてお芝居をしようと思った時に、小劇場に足を踏み入れるのが一番手を出しやすかったんです。その道しかなかったというか(笑)。その小劇場で、生もののお芝居をしたのが役者としての始まりです。

そこでお世話になった団体さんに「演出やってみなよ」「脚本やってみなよ」と勧めていただきまして。高校生の時から文字を書くことが好きで、ちょっとした詩とか小説を書いていました。ちゃんと台本として、人に芝居をしてもらう物として書いてみようかなと思ったのは、その団体さんに声をかけていただいたのがきっかけです。

いざやってみたら、演者さんの方々が「好き」「いいよ」って言ってくれたので続けている、という感じです。演出も同じで、提供していただいた脚本の演出を勧めていただいたことがきっかけです。

-最初の頃と、今の演出に対しての姿勢は変わりましたか?

楪:最初は演出助手として関わっていました。大元の演出家さんが付けた演出を、演者さんがやる中で意図とズレているところを「そこ違うんじゃない?」と指摘する立場でした。

そこまで緊張して臨んだというわけではなかったです。ですが、役者として経験があるわけではなかったので、どこまで口を出していいのか、先輩に対してどこまで伝えていいのか、という点は今でもずっと迷ってますね。

4.脚本・演出でのこだわり、ポリシー

-演出、脚本として目指したい像はありますか?

楪:物書きとしては書きたい物を書けていて不満は無くて。(文章を)整えたりとか、頭の中にある状況を文字に起こしたりという過程で時間がかかってしまうので、そこを短くできればもっと作品をかけるかな、と思いつつ、やりたいことをやれてはいます。

演出家としては、ちゃんと演者さんを導いてあげられるというか、私の作品を経験することで力にできるものを持ち帰れる現場にしたい、ということは毎度考えています。

-「こういう舞台を作りたい」だけじゃなくて、何かフィードバックができたらいいなという気持ちですか?

楪:演出家の仕事の範囲かというと人によると思いますけど、こういう考え方の人もいるんだよ、ということを知ってもらって。それを役者として体現するためにはどうしたら、ということを覚えて帰ってくれたらと思ってます。

-演出に対してのこだわりとも言えますか?

楪:それもこだわりの1つですし、かといって押し付けすぎないところとか。やっぱ自分が役者として仕事をするときに考えていることは、自分の役についてしっかり考えること、自分の役を作ってくることだと思っているので。

それをやってきてくれた役者さんの考えを叩きつぶすじゃないですけど「そうじゃないから」みたいなのはやりたくないので。それ(自分の考え)も大事だし、でもオーダーに答えることも大事なので、そのバランス、押し付け過ぎず任せっきりにせず、というところは考えながらやっています。

-逆に「これはしないように」というポイントはありますか?

楪:最近なんですけど、逆班で演出をしている紬めいちゃんに言われていることがあって。「お前の演出は優しすぎて遠回りしすぎている。逆に分かりづらい」と(笑)。なので最近は遠回りしないようにしようと思っているんですけど、やっぱりしちゃうみたいです。

-演出家さんって自分の「こうして欲しい」をズバズバ言うイメージがあります。

楪:そうなんですよね。別にこだわりが無い訳じゃないし、「こうして欲しい」というのが無い訳じゃないんですけど。

根本的に自分に自信がないから「私はこういうつもりで書いてるし、こういうつもりで演じるし。でも他の人から見たらそう見えるんだな」と受け入れることが苦じゃなくて。

そこに対して、自分の持ってるものを貫けないというのが欠点と自覚しまして(笑)。なるべく自分の持っているものを捨てない、というのは最近気を付けてます。

5.「君の音」に込めた思い

-「君の音」脚本は今年1月に書き上げたものになりますが、その思いや思い入れをお聞かせください。

楪:まずそもそも「君の音」という作品の始まりが、別でご一緒させて頂いたかたから「5~6人出演で、メッセージ性の強い作品を書いてほしい」という依頼で作り始めたもので。

書き始めたのがちょうど去年の秋口、去年の今頃だったので、作品の背景も書き始めの時期に合わせた季節感に合わせちゃったんですけど、公演が1月という(笑)。

ちょっと去年(2020年)1年間くらい、自分の身の回りで大きな変動があった年でもあったので、その中で考えていたことが沢山盛り込まれた作品ということもあって。「嘘と本音」と、「人が人を思うってどういうことだろう」みたいな。

すごく大事で大好きなはずなのに、なんで傷つけてしまうことがあるんだろうとか。逆もしかり、傷つけたくないと思ってした行動が相手をめちゃくちゃ傷つけてしまったりとか。っていうところをすごく考えていた年なので。

込めた思いで言えば人間関係にフォーカスを当てた「心の変化」。「私はこう思うけどAさんはこう思ってたよ」みたいなのが、読んで、芝居して、見てわかるものにしたくて。というのは考えて書きましたね。

-自分の内面に湧きあがったものを綴ったというか、先ほどの演出での「自分はこう思うんだけど」という部分にもつながりますね。

楪:まだ5本くらいしか書いてないんですけど、その中でも一番思い入れがあるというか。自分の思考が如実に反映されているというか。

6人登場人物がいるんですけど、6人ともどこかしら私に似ているというか、私の考え方を反映したところを6分割して書いた、みたいな感じなので。言葉にできない思いがたくさん詰まった作品だと思います。

6.キャストに期待すること

-その特別な舞台にあたって、キャストの皆さんに期待したいことというのはありますか?

楪:心の変化を大事に芝居をしてくれたらなって。「思ってない状態でセリフを言わないでね」とはよく言うんですけど、特にこの作品は相手の事を大事に思ってないと言えないセリフが沢山あるので、そこを大事にしてほしいなと。

というのと、似ているキャラクターもいるんですよ。ヒロインのお母さんとヒロインのお友達とかが雰囲気が似てたりするんですけど、確実に本質が違うという所を演じ分けてもらえたらなと。

もちろん違う方が演じるんですけど、「似てたよね」で終わらないように。このキャラはこうで、と明確に違うように仕上がったらなと思ってます。

-朗読という縛りのある表現方法のなかで、見る側としても心情の変化の表現に注目してほしい?

楪:今回朗読劇なんですけど、台本持った状態で多少の動きを付けた演出を付けてまして。座ったり立ったりとか歩いたりというのが入ってくるので、そういった面で情景を出せたらいいなと。

手元に台本があるのでセリフを思い出す行程がないです。その分、より心情の変化に力を入れてもらえたらと思いますし、お客さんとしてもそこに注目してもらえたらなと。

7.演出 紬めいに期待すること

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-今回、つむぎめいさんが演出として「From」班を担当されますが、期待することというのはありますか?

楪:めいちゃんはいろんな面で私とは見てるところが違くて。真逆の所を見ていたり違うところに目を向けられる人で、私じゃできないような作品作り、世界観の出し方をしてくれるなと。

台本としては同じものを使うんですけど、全然違う世界になるんだろうなと思って。まぁ、めいちゃんのチームは出演側に回るんですけど(笑)。

演出を聞いてて「なるほどな」と思うことが沢山あるし、作りたいキャラクター像や「この面を見せたい」が違うところもあって、自分が書いたものなんですけど新鮮に楽しめるというか。そういう、めいちゃんならではの発想というか、見せ方というのは楽しみにしています。

-多くの舞台では同じ演出家さんでキャストが違う、という構成だけども、今回は演出から違うという面白さも魅力ですね。

楪:そうですね、キャストも演出も違うので。見ごたえが出ますし、違う楽しみ方が出来るかなと思いますね。

あとは見比べた時にキャラクターの輪郭がはっきりするというか、「こうと思ってたら、こういうところもあった」というのが見えやすくなるかと思います

-朗読という抽象的な表現だからこそ、キャストの演技だったり演出家の思いというのは違いを出しやすい?

楪:朗読劇って、役者によって変わるのかなと思っていたんですけど、今回やってみて「演出によって変わるんだな」というのはありました。

でも「君の音」に関してはお客さんから見た印象・着地点というのは1つしかないのかなと。前回の「紡-Tsumugu-」に関しては、お客さんによってハッピーエンドとバッドエンドと受け取り方が別れたんですけど、「君の音」に関しては捉え方って同じ方向性のものになるのかなっって。だからより一層演出によってどう変わるかっていうところはありますし、観て感じて欲しいですね。

・公演詳細

彩演Project 主催公演
Project.3 朗読劇「君の音」

2021年10月22日(金)~10月24日(日)
東急東横線「学芸大学駅」西口徒歩3分 『キュービック』にて公演

チケット:3,500円(1ドリンク付き)
配信公演:2,500円

【Dear出演】
浅井 亨介 小野 裕大 西條 葉瑠香 藤井 英詠子 飯尾 涼哉 紬 めい
演出:楪 亜紀

【From出演】
石田 夢翔 折原 深緒莉 小林 瑞穂 知里 香澄 峯 孝仁 楪 亜紀
演出:紬 めい

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