運命共同体|掌編小説(文披31題 2日目)
「ゲッ! 1時間40分後かよ!」
時刻表を見て、思わず叫んだ。さすが田舎のローカル線。レベルが違う。
――はぁ。
自然とため息が出る。駅の周りにはコンビニすらなく、時間を潰せるようなものは何もない。タクシーなんか使ったら、きっと上司に怒鳴られるだろう。
――どうせ出張に行くなら、もっと楽しそうな場所に行きたかったなぁ……。
心の中で嘆いた瞬間、駅の向かい側の小さな喫茶船が目に留まった。考えるより先に足が動く。
店内に入り、マスターにアイスコーヒーを注文した瞬間、他の客のバカでかい電話の話し声が耳に飛び込んできた。
「仕方ないだろう? 次の電車が来るの、1時間40分後なんだから」
――ブルータス、お前もか。
少しだけ親近感を抱く。すると、また別の客が入ってきた。マスターがその客に水を出す。
「いやー参りましたね。次の電車が1時間40分後なんて」
――フッ。
吹き出しそうになるのを必死でこらえた。
なるほど。
俺達は1時間40分の運命共同体ってわけか。
(了)
エックスで、綺想編纂館(朧)さんが開催している「文披31題」という企画に参加しています。
7月1日から31日まで、毎日違うお題が出される企画で、2日目は「喫茶店」です。
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