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隙間|掌編小説

 電車は嫌いだ。窓に自分の顔が映るから。疲れて表情のない、まがい物のお面を付けたような顔の向こうに、煌びやかな街の光が流れていく。

 キラキラした光は、汚いものを覆い隠す蓋なんだ。
 私や、この電車に乗っている人達はみんな、綺麗に光る、見えない蓋に覆い隠されている。そして、いつの間にか覆い隠されていることも忘れて、そのまま埋もれていく。
 多分、みんな「自分だけは違う」って思ってるんだろうな。

 ――私もだけど。

 ああ、何だか息苦しくなってきた。

 隙間を見つけて息をして、卑怯な私は、走り出す。

(了)


たまに「その他大勢」の中に埋もれてしまうことへの恐怖を感じます。そこから抜け出すチャンスを狙いながらも、やっぱり周りが気になる…。
そんな自己矛盾を書いてみました。

音声ライブ配信サービス「Spoon」内の企画であり、声優、演劇講師であるバートラムさん主宰の「1 minute CAST CHOICE」、通称「ワンミニ」の課題用台本に採用されたものです。

前回の「夜」に続き、2回目の採用でした。

2年半続いたワンミニは、今回で最後となりました。
最後に台本を採用して頂き、感謝感謝です。

今回もたくさんの方に朗読して頂きましたので、一部ご紹介します。
皆さん、編集も凝っていらっしゃる。

erika109さん
https://www.spooncast.net/jp/cast/5664408

しゆきなぱぱさん
https://www.spooncast.net/jp/cast/5646290

土屋ルカさん
https://www.spooncast.net/jp/cast/5666106

KYO IIさん
https://www.spooncast.net/jp/cast/5664213

Novaさん
https://www.spooncast.net/jp/cast/5664215


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