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今までの人生56(悪夢からの現実最終章)

記憶にない自分の赤ちゃんの頃の夢を見たことで
私は何故か安心した。

戸籍謄本のことはもうこの時
私の頭からは抜けていた。

コーヒーを飲み終えて
年始のテレビ番組を観ては
父の遺品整理

父がリハビリ左手のみで作った工作
チラシで折ったごみ箱
きれいな和紙の化粧箱など・・・
父が元気だった時
利き手じゃない左手で
どれだけ頑張って20年間生きてきたのかが
思い浮かぶものだった。

母と私はウルウルしながら思い出話をし
父の遺品整理をしては
笑ったり泣いたりを繰り返していた。

そろそろお昼にしよう!
と、昼食を食べ
少し昼寝してから
午後は衣類整理しよう。
と居間に2人で横になった。

いい一日になりそうだった私は
横になっても眠りはしなかった。
夢を見たくなかったからだ。
母はすぐに寝息をたて
気持ちよさそうに眠っていた。

(私のうつ病と実子かどうかの話をなだめるので
相当疲れていたと思う)

ストーブで身体が暖かく
母も横で寝ている安心感からか
私もウトウトしてくる。
ウトウトしては、ハッと目を覚まし
夢は見たくない。夢は見たくない。
と言い聞かせ母が目を覚ますのを待つ。

一時間ほどして

「はぁ~寝たねぇ・・・」

母のお目覚めだ。
私に眠れたか聞いてきた母に

「私も少し寝たよ。」

をついた。

う~んと伸びをして起き上がった母。

「よし、衣類整理しよう!」

父の衣類の整理を始める。

父が病院で使っていた
タオルやバスタオル。
トランクスや靴下。
Tシャツやスウェット。
全てに名前ペンで父の名前が書かれてあった。

名前は書いてあるが
自宅で使うのには問題ない。
そのくらい父はきれいに使っていたのだろう。

衣類は着れそうなものは実家に来た時に
私が着ればいいと母が言ってくれたので
袖を通してみた。

うん・・・パッツンパッツンだ。

「あら・・・
 お姉ちゃんお父さんよりも太ったんだね。」

そうだ・・・うつ病になってから
25キロも太ったんだから・・・

「でも着るからとっておいて!」

衣類の内側に父の名前が書いてあるものを
着ることが出来るのが、私は少し嬉しかったのだ。

全部出してみると父がどんどん痩せて
いっていたことがよく分かった。
ウルっと来たがこの時は我慢した。

空になった箪笥の底に少し厚紙の封筒があった。
何か大事な書類なのか・・・
母も何も書いていない封筒を開き
書類を2人で覗いた。

!!!

私が高校入学の時に提出しなければならなかった
戸籍謄本のコピーだった。
昭和後期の古い書式。

本人 〇〇(私)
父 父の名前
母 母の名前

確実に私は父と母の実子(長女)だった。
いつの間にか私はポロポロ泣いていた。
いつものように母は私の背中をさすり
(これで安心できたでしょう?)
と言われている気がした。

大切な古い書類だけど持って帰る? 
と聞かれ
私はもう納得できたというこの気持ちだけで
安心でいっぱいになり

「一緒にお焚き上げしてもらって。」

と母に頼んだ。

やっと悪夢から解放された気がした。


今日はここまで


この出来事があってから
私は一度も戸籍謄本を取得する機会もなく
あえて確認自体もしていない。
ただネットで調べると
離婚したら元の戸籍に戻ると書いてあったので
結局のところ私が離婚して十数年経っているのに
なぜ戸籍に名前が載っていないのかは
今も謎のままである。
でも今はこのままでいい。

もっと元気になってから
実際に確認すればいい。

そう思っている。

30代後半でうつ病になり、 病気になった原因や、 51歳を機に第二の人生を歩もうと未来を望むことを決めた、 これからのことを綴っていきたいと思います。