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【学び㉑冊目】幸せになる勇気 岸見一郎 古賀史健

この本を手にした理由


自己啓発の源流「アドラー」の教えシリーズの「嫌われる勇気」を読んですぐに、続編であるこちらを手にししました。前作から既に、「幸せになるためのこと」については触れられていました。著者も、元々は続編を作るつもりはなかったと述べているように、1冊目だけで自己啓発の源流の名にふさわしい十分な完成度でした。しかし、登場人物の青年と全く同じように、アドラー心理学について完全に理解しきれていないという気持ちがしたので、1冊目の教えのさらなる理解と実践のためにと、2冊目のこの「幸せになる勇気」にも手を伸ばしました。


宗教的な生き方と哲学的な生き方

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宗教と哲学の決定的な違いは、物語の有無であると言います。宗教は物語を認めますが、哲学はそれを認めず、常に自問自答を繰り返しながら終わりの見えない竿の上を歩いていくことであるとし、「全知を称する者」や「考えることや知ることをやめてしまった者」は、本書では宗教的な生き方であるとしています。一方で、常に知らない状態で有り続けながら、考え続ける生き方を指すのです。

個人的にも、かなり納得の行く部分でした。 宗教は一つの知を物語により集成した完成版であるとすれば、哲学はどこまでも行っても完成することは無く、時代とともに常に変わり続けるものなのです。人々のコモンセンスやライフスタイルも時代とともに変化し続けるものであれば、自分であればその変化に対応して変わり続けるために、思想ではなく生き方である哲学を選びたいと思いました。


教育の目標は自立!? 10歳の子どもでも自立することもできれば、50歳でもまだ自立できていない人もいる!?

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アドラー心理学では、教育の目標であり幸せになるための条件の1つとして「自立」を挙げています。ここでいう自立とは、経済的な自立ではなく、精神の自立です。自立するためには、1作目の「嫌われる勇気」でも取り上げられていた共同体感覚を持ち、他者を敵ではなく仲間としてみることが必要です。また、その共同体への貢献心を忘れてはいけません。実際に、相手が貢献されていると感じるかどうかは自分には変えられない部分なので考える必要はなく、ただ貢献の心を持ち続けることが大切なのです。それによって、自己の承認欲求から開放されることができます。承認欲求を持っている限り幸せになることはできません。なぜなら、自分の幸せは、承認があるかどうかにかかっているため、自分ではなく他人に自分の人生を左右されていることになるからです。


それを踏まえると、自我から開放され本当の意味で自立した生徒を育てることこそが、教育の真の目標というアドラー心理学の考え方は理にかなっているものがあると感じました。自分が与えらることばかり考える段階は乗り越えたものの、与えることにより心のどこかでみかえりを求めてしまう人も少なくないのではないでしょうか。しかし、これではアドラーの言う真の自立の定義には値しません。相手がどう感じるかは、相手の課題であり自分の課題ではないのです。変えられない部分に目を向けることはせず、ひたすら与え続ける心を持つことこそが、アドラーのいう自立の意味するところなのではないでしょうか。


われわれは「自分のことを信じてくれる人」の言葉しか信じようとしません。「意見の正しさ」で相手を判断するのではないのです。

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厳しくも、現実的なセリフです。正しさというものは、時代、場所、文化、国によっていくらでも変化します。正しさそのものには、私達が思うほどの力は無いのです。そして人は、自分が信じることができない相手の言葉はどんなに、いわゆる正しさがあろうと、聞き入れることができません。信じることにも、信用と信頼の2種類があり、何か条件付きで信じる「信用」に対して、相手のことを無条件で信じることを「信頼」といいます。自分が信じてもらうには、まずこちらから先に相手のことを信頼しなければなりません。とはいえ、どんな意見も聞き入れるということは不可能でしょう。相手の意見を聞き入れることができなかったとしても、相手が相手であることを尊重し、相手のことを尊敬する。それが、信頼という言葉の真の意味です。学び②にもあるように、相手に信頼してもらうことを待つのではなく、こちらから信頼することしなければなりません。与えることをしない限り、与えられることは無いのです。


まとめ

「もしもアドラーの思想に触れ、即座に感激し、「生きることが楽になった」といっている人がいれば、その人はアドラーを大きく誤解してます。

という哲人のセリフの通り、アドラー心理学、は1冊目の「嫌われる勇気」を読み終えた人が想像するような簡単なものではなければ、信じれば人生が変わるような劇薬、あるいは宗教的なものではない、ということは本書を通してかなり強調されています。「愛」と、それに乗り出す勇気、また自立することなくして幸せにはたどり着くことが出来ないという、厳しくも現実的なアドラー心理学の教えを読み解くことが出来ます。1冊目の「嫌われる勇気」を読み終わったあとで、まだ自立や愛への1歩が踏み出せない人に、その1歩を踏み出すための手助けをしてくれる1冊だと思います。個人的に、是非2冊セットで読んでほしいです!

最後まで読んでくださり、ありがとうございました!

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