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門前仲町「たにたや」さんと、季節のお弁当を考える。(その17 霜降)

10月23日(土)は二十四節気の「霜降(そうこう)」です。

もちろん「霜降り」ではございませんw

「霜降」は、「秋も終わりに近づき、霜が降りる頃」という意味があり、実際この時期は、朝晩の冷え込みが徐々に強まり、北国や山里など早いところでは霜が降りる日も出てきます。

霜(しも)はどんな現象?

霜は「0℃以下まで冷やされた空気中の水蒸気が地面や植物などの表面に付着し、氷の結晶となったもの」です。風が弱い晴れた日に、放射冷却によって気温が3~4℃まで下がると霜が降りやすくなります。

霜が降りるには、その周辺の温度が0℃以下になる必要がありますが、気象庁で発表される気温は地表から1.5メートルの高さで観測しますので、気温が3℃と発表されていても、地面の温度は0℃以下になっていることがあります。

「霜」と「霜柱」の違いは?

まず「霜」と「霜柱」は別々の現象です。「霜」は空気中の水分が凍ることによって起こりますが、「霜柱」は土の中の水分が凍ってできるものです。霜柱ができるときには、まず地表面の水分が凍り、そこに土の中の水分が毛細管現象によって次々と吸い上げられて凍ります。この繰り返しで、上の氷を押し上げていき、霜柱となっていきます。

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霜が降りると、農作物のほか、花などの家庭の植物にも低温による被害が生じることがあります。農家の方にとっては甚大な被害が発生するおそれもあり、このため気象庁は霜による被害が発生すると予想されるときには「霜注意報」を発表しています。

もちろん「霜降り」とも違います。

食の業界では、「牛肉の霜降り」とは皆様もご存知の通り、赤身肉の中に脂肪が散らばっているもののことをいいます。霜降りは「高級・美しい・美味しい」というイメージを持たれていると思いますが、注意しなければいけないこともあります。

ちなみに霜降りが大きいものと小さいものが散らばっているのを比べた時、どちらが美味しく感じるのでしょうか?

これは小さい方が焼いた時、より柔らかくなるということが想像でき、実際、良いものとされ、高級品となっています。この細かい霜降りのことを小ザシといいます。↓こんな状態ですね。

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ちなみに、霜降りがいくら小ザシでも、脂肪の状態が良くなければ、本当に良いとは言えません。特に「脂肪交雑」という言葉があるのでぜひチェックして欲しいのですが、肉質等級のところの脂肪交雑とは牛肉の霜降りの度合いのことをいいます。脂肪交雑を判定するのにBMS(ビーフ・マーブリング・スタンダード)という基準があり、この基準から5段階で評価されます。みなさんもよく聞き覚えがあると思いますが「A5ランク」の「A5」のことです。「A」が歩留等級、「5」が肉質等級のことを指しています。もうすこし話をすると、「A5」等級は、味自体が美味い、、のではなく、チェックの物差しとしては、

・牛肉が1頭あたり多く取れる(骨、脂身が少ない)
・サシがよく入っている
・肉の色、しまりが良い

という部分がポイントになります。

つまり、牛のスペックの話です。

実は世の中には、等級が低くても美味しい牛肉というのも世の中には、たくさんあります。ここが牛肉の難しいところでもあり、面白いところでもあります。各お店の目利きの良さに差がでるところでもあります。

さて「霜降」の話。秋はどこに行ったのか。。

さて「霜降り」で脱線してしまいました。しかし、霜が降りるということは、すっかり「冬支度」なのです。今年の9月、1ヶ月ほどお弁当のスケジュールも飛んでしまいましたが、秋もまた、あっという間に飛んでしまい「この秋、返して!」という声が聞こえそうです。

実際に9月は、オリンピック終了後、緊急事態宣言真っ盛り。ウィルスがなくなるわけでもなく解除され、10月、そしていよいよ25日から東京を始め全面解除と相成りました。

ウィルスは、渡鳥のように、またほかの地域に飛んでいってしまったのか、はたまた、水のように凍って、冬支度を始めてしまって、弱まったのか。

実は、インフルエンザウィルスの予約も殺到の時期です。

またコロナ禍の中、飲食事業も「霜降」し、厨房機器や部品が、思わぬ欠品、生産不足を招き、これから、1年、2年先の新規プロジェクトに支障をきたす状況も、すでに聞こえています。

つまり冬支度から春の準備は難しい。

冬を越えると春になる。

これは私たちが生活をしてきた地球、そして季節の流れです。

24節気も、暦のスピードから、地球の気候のスピードのズレが発生し、さらに、対応が難しい、コロナのような「ニュース性が高い」事故、事件も勃発、5年、10年も検討しつつも、目の前に対応する「瞬発力」も非常に大事な時期だと考えています。

ただ、冬支度をするということは冬眠、物事のスピードの低下を招きます。

自らはスピード感をもって対応しなければならないと思いつつも、世の中のスピード感は、業界間でスピード感が異なり、例えば、厨房機器の遅れ、人材不足でシフト困難を招き、結果、自らが検討していた計画とおおよそズレてくる、そんなことが起こり始めています。

「霜降」を「霜降り」と説く、その心は?

「秋」とは、食にとっても「収穫の秋」「食欲の秋」と言われるほど、食に特化した季節です。その色に特化した時期は、観光も盛んで、世の中的に人も多く「移動」します。

移動することによって、交通、宿泊、飲食が連動してビジネスが発生し、そこに恩恵を受ける事業が大半です。けれど昨年、今年とコロナ禍によって、その「移動」を止められてしまいました。

その流れは非常におおきく、人々の感情、モチベーションをダウンさせ、結果そこから生み出される「活動」「行動」「移動」という「動」の部分を止めてしまったことにより、人間は、無意識的に「冬支度」を始めてしまったことが大きな流れだと思っています。

一方で、デリバリーや、新しい生活様式を取り入れていこう、そうした取り組みを始めようという動きも非常に多く、この10月、11月は、そうしたもののイベント、活動が目白押しです。

しかし、人はまだまだ動かない、もっというと「お金も動かない」そんな様相が見え隠れしています。だからこそ、どんなに素晴らしい料理、観光、宿泊を見せようにも、人が動かないことは意味がないのです。

先ほど、牛肉のランクには「味は影響していない」と書きました。

いまの日本の秋も、まさにA5ランク。素晴らしいスペックは持っていますが、果たして、人々が求める「ランク」はいずこにあるのでしょうか?

「まさに霜が降りてきたような、そんな焼き魚」という。

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今回のメニューにある「鰆(サワラ)の粕漬け竜田揚げ」を見た時、紅葉を始めた山脈に、突如、朝方雪が積もっているような様相を思い浮かべた。

火を焚べ、油を使い、サラッと香ばしく、粕漬けを身に纏ったサワラが、秋の行く末を寂しがるように、冬支度をサッサと始める世の中を透かして見せていて、ただ、味わい深く、箸が進む、趣深いお弁当が、今回のもの。

ちょっと白米が少なくなかったのはもったいないほど、美味しい新米が出始める季節。新潟は長岡産のコシヒカリが、艶々とした勢いを見せるも、これまた収穫の秋の終焉か。

一方でその味わいに「華やかさ」を感じたのも事実。かぼちゃのサラダの味付け、舞茸となめこのガーリック醤油和えの香り、質素な食材を使いつつも、飽きさせない味わい豊かな献立に、あっという間のお昼ご飯は終了した。



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