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9.事業計画の注意/共同経営&資金の優先順位

一人では不安だから友達と一緒に起業する人も多いのですが、トラブルになることも多いように感じています。また起業するために融資を受けて口座残高が増えると気持ちが大きくなって無駄遣いする人もいます。勢いだけで起業すると後から困ることがでてくる、とう例を紹介します。

※このNOTEは2010年発行「好きを仕事にする自分ブランドのつくりかた」の一部を再編集して紹介しています。

テーマ15:事業計画の注意点

◆共同経営のメリット、デメリット

親しい友人やパートナーと共同経営を考えるデザイナーもいるでしょう。共同経営をする場合、職務やジャンルを分担すれば、お互い刺激しあい、活かしあえます。例えば、デザイナーと営業、アパレル担当とアクセサリー担当など。うまくいけば1+1が3にも4にもなり、ひとりの能力以上のものが生まれる可能性があります。

では、職務またはジャンルで分担した場合の共同経営について考えてみましょう。

●デザイナーがひとりと、もうひとりが別の仕事をする場合

ブランドの立ち上げ時期は、デザイナーが営業も行うべきですが、慣れてくればデザイナーと営業的な役割は分けたほうがいいでしょう。デザイナーは自分のパーソナルな部分と商品価値とを切り離して判断することができず、「性格的に売り込めない」「自分の商品に自信が持てない」「どこがいいのか判断できない」などと萎縮してしまう場合があります。ひとりで仕事をしていると複眼的な視点で自分の仕事を判断することができないのです。

デザイナーはデザインにこだわり、営業はコストとマーケット性にこだわりながら、お互いの主張を戦わせていくことができれば、新たなアイデアや商品が生まれることがあります。デザイナーとプレスなら、ブランド価値を伝える商品とは何か、どうすれば話題性のある商品になるかという議論になるかもしれません。

商品やサービスを改善していく過程には、このせめぎ合いが不可欠です。ひとりでは議論もできませんから、結局自分の理解できる枠内でしか仕事ができません。ふたりいれば、この枠を超えたところで仕事ができる。つまり、相乗効果が生まれるのです。そのためデザイナーと営業マネージャー、デザイナーとプレスデザイナーとパタンナーなどのふたり組は、ひとりで何もかもしているブランドよりも立ち上げが早くなったりします。

●ふたりともデザイナーの場合

デザイナーふたりが同じ立場で同じ仕事に関わる共同経営のカタチは、する場合、合意形成に時間がかかって決定が遅れたり、責任の所在が判明せず反省がなかったり……。成果が1+1=2どころか、0.5くらいになることさえあります。うまくいっても、ふたりに同じような能力しかない場合は、1+1=1.2程度。ひとりの能力を大きくは超えません。

ふたりでひとつの商品をデザインしようとすると、どちらが商品化の決定権を持つかで揉めます。たとえば、共同経営の相手に決定権がある場合、売れたら相手のおかげになりますし、売れなかったら自分のせいにされることも。自分の意見が通らず、不満がたまることになるでしょう。

経営方針について意見が分かれても、お互いが納得するまで議論して理解し合えればいいのですが、相手への遠慮があったり、自分の正当性を説明できなかったりするとうまくまとまらないもの。また、ほとんどのデザイナーが、相手より自分のほうが価値ある仕事をしていると思うので、給与が同じであることや仕事時間が不満になったりもします。そして、最後には「自分で作るものは、自分で責任を負って作りたい」と別れ別れに……。

デザイナーふたりでの共同経営は、ハードルが高いのです。それでもふたりでやりたいなら、目標をはっきりさせて判断基準を明確にすること、感情ではなく仕事本位で話し合える関係を築くこと、相手の仕事への理解をベースに話し合うこと、何事も否定するのではなくて難しさを理解したうえでそれを乗り越える提案を重ねていくこと。
さらに、人数が少なくても社内の組織図を作り、仕事と責任者をはっきり分担しましょう。仕事をはっきりさせて、お互いが相手の仕事を確認できる仕組みを作るのです。あえて明文化しておくとお互いが納得できます。

◆シーズン展開のスケジュールを決める

ファッションにはシーズンがあります。店頭展開が始まる時期には、売場に商品が揃ってなくてはなりません。そのために、小売店は展示会や受注会で商品を発注し、仕入れ予算を消化していきます。
デザイナーが「気に入ったデザインができない」「販売ツールが納得できない」と言ってグズグズしていると、販売できる時期を逸してしまうことに。そうならないためにはスケジュール管理は必須です。
売場に並ぶことを想定し、逆算してスケジュールを立て、それに従って仕事を進行させること。たとえ遅れても、スケジュールを立てていれば、遅れた原因と期間が把握できるので、次シーズンに生かせます。これができない創業者は致命的かもしれません。納期管理ができないブランドは信用を失うからです。

◆資金の優先順位を決める

小さく始めて徐々に事業を大きくするのはビジネスの基本です。しかし、ある程度は一気に費用や時間を投入してスピーディーに展開しなければ、事業は成立しません。
事業が立ち上がらないままグズグズと時間を費やし、少しずつ資金を投入していると結局時間もお金も無駄になってしまいます。資金を目的達成のために効率的に使う方法は、事業計画をある程度はっきりさせていくことでわかってくるでしょう。

事業に関わるコストは、いろいろ小さく試して最善の方法を探し、それが決まれば大きく仕掛けて大きく儲ける。これが成功に至る合理的な方法です。いろいろ試す段階では、どのような手段をとればコストはどれくらいかかり、成果はどのくらいかを把握しましょう。例えば、ネット広告ならキャッチコピーを変えて3種類作り、小予算で出稿します。その中でもっとも反応がよかったものをベースにブラッシュアップ。十分反応が得られる広告ができてから予算を増やします。いきなり何十万もかけてイチかバチかで広告を出すような、もったいないことはしません。

資金の優先順位

1:ブランドの魅力となる商品を磨くための研究費・開発費・サンプル制作費
2:新規客獲得のための販促費・展示会出展費用
3:お客様の満足度向上のための店舗開発費・接客費
4:豪華な家具や最新のパソコンなど、見栄や贅沢に使う費用

研究や開発、サンプル制作、販促費など、費用をかけず自分でやってできないことはありません。しかし、それだけ時間がかかるし、クオリティが上がらない場合も。その間にビジネス環境が変化し、また新たな対応を求められるとさらに時間とお金が必要になってしまいます。売り上げが出せない期間が長ければ、徐々に資金や労力は奪われ、長期的には自信や意欲をも失うでしょう。

◆資金の無駄チェック

・事務所費:見栄を張らず、身の丈にあった場所と家賃がベスト。家賃に払うお金があるのなら、お客様のための費用に回します。お客様にメリットのない高い家賃なら、払う必要はありません
・備品費:仕事をしているうちに、どのようなものが自分にとって便利なのかわかってくるもの。急いで買っても失敗するだけです。これらに高い投資をすると、新規客獲得やお客様を満足させるためのコストなど、本来優先されるべきところに資金が回らなくなります
・展示会費:出展料が高い展示会に出ても、装飾費や営業ツールに予算を回せなくなるのなら逆効果。見映えがパッとせず、ツールも貧弱ではビジネスに結びつけられません。出展料が安い展示会を探すか、助成金を活用すべきです
・個展費:創業期に必要なのは、多くの見込み客と新規客。個展は固定客が増えてからでいいのです。いくらの費用で何人にアプローチして何件成約できたか、コストパーオーダーを把握しましょう
・商品サンプル費:必要以上に作るのは、ブランドイメージが散漫になるあげく、制作費がかさんでほかの予算がショートすることになります。

◆有効な投資

ブランドイメージや会社の信用を作る投資=顧客獲得のための投資:名刺・会社案内・ホームページ・カタログ・パッケージなど。本来プロにお願いすべき仕事。かけるべき数万円を出し惜しみ、身内でなんとかしようとして、印象が悪く不安を感じさせると、その後に得られるはずだった数百万、数千万をロスすることもある。 ここにきちんと投資しなければお客様を集められず、付加価値の高い商品を売れない。信頼を得て、ブランド構築に重要な投資
ビジネスを学ぶための投資:稼ぐための能力を高めるために、ビジネス書を読んだり、セミナーに参加したり、専門家にアドバイスを受けるなど。自分でもできると思いがちだが、学ばないために余計にかかる時間やコストを考えれば、けっきょくは元が取れることも多い。
ネットワークを作るための投資:創業期に必要なのは応援してくれる人。人との出会いがビジネスを成長させたり、取引のきっかけを作ることも多いので、積極的にネットワークを作ることも必要。ただしネットワークづくりと称して遊んでばかりいてはダメ。

経営者は、自分の能力を過信しがちです。
自分が一番センスがいいと思い込む場合が多く、ホームページやカタログ、DM などツール類のデザインなどは外部に頼まなくても自分でできると勘違いし、コストをセーブ。何でもいいならカタチにはなりますが、それはビジネスとして正しい判断ではない場合も多いです。

また「自分で何とかできるから」と無駄に思っているビジネスについての勉強も経営者としての実力を高めるのに役立ちます。


※ちなみに、自分を活かす方法と学びと仲間が得られる10時間×5日間のクリエイター起業塾を毎年開催しています。2020年度はまだ開催未定ですが、過去の募集案内で参加者の感想などを読んでみて下さい。



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