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姿勢が変わると心も変わる!?姿勢と心理の関係性

身相関という言葉があります。

この心身相関とはその言葉通り、心と身体の作用が相関関係にあることを意味します。

心に喜びや怒りを感じれば、身体にもそれに対応する状態が現れるといった概念です。

おそらく、あなたもこの心身相関を実際に感じたことがきっとあるはず。

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分かりやすいのが「姿勢」と「心理状態」。

日常生活において以下のような姿勢と心理の繋がりを感じる場面に遭遇したことはあるのではないでしょうか?

・上司など上の位の人に対して背を屈める姿勢を取ってしまう
・威張る時には胸を張り背筋が伸び、顎が出て上から見下ろす姿勢をとる
・自信がない時や落ち込んだ時は無意識に前かがみになる
・自信のある時は自然と背筋が伸びる

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このように、その時の心理状態が姿勢を作ることはよくあります。
きっと思い当たる節があるのでは?

これらは「心理状態」→「姿勢」というような関係性。

では逆に考えて、姿勢が心を作ることがあるのでしょうか?
(「姿勢」→「心理状態」)

姿勢が心理に与える影響に関して、これまでに多くの研究が行われていますが、今回はその中から単純で分かりやすい研究結果を事例として取り上げていきましょう。

姿勢が心理に与える影響

姿勢が心理状態に影響を与えるとはどういうことか。

例えば、

自信がない時や落ち込んだ時は無意識に前かがみになる
(心理状態→姿勢)
↓↓↓
うつむいて前かがみの姿勢をとり続けると気分が落ち込んでくる?
(姿勢→心理状態)

ということ。

鈴木・春木らが行った研究を例に取り上げると、

被験者に下図に示すような顔の方向が①上向き②正面③下向き、背骨が①直立②曲げるの計6種類の姿勢をとってもらった。

姿勢種類

それぞれの姿勢をとっている時に、どのような気分を感じるのかを「生き生きしたー生気がない」「自信があるー自信がない」「明るいー暗い」などの17つの形容詞対について評価してもらった。

結果は、

●首を下向きにすると他の向きよりもネガティブな気分になる傾向
●背筋を曲げると背筋を伸ばした時よりもネガティブな気分になる傾向
●首をうなだれ、かつ背筋を曲げる姿勢(姿勢6)が最もネガティブな気分になる傾向

引用:春木豊『動きが身体を作る』(講談社,2011年)

このように、うつむいて背中を丸めている姿勢をとり続けることでネガティブな気分になる傾向がみられたという結果が示されたそうです。

もちろん、この研究はあくまで被験者の主観的な評価によるものなので、科学的な根拠を示されているわけではありませんが、それでも姿勢の違いが心理に異なる影響を及ぼす可能性があるということを示唆するものであると言えます。

心の状態が姿勢を作ることもあれば、このように姿勢が心を作る可能性も考えられるのです。

落ち込んでいるとうつむき姿勢になることは多くの人が経験していることだと思いますが、逆にうつむく姿勢を意識的にとることでうつ気分が引き起こされるとも言えます。

逆に、癖になってしまった悪い姿勢を改善することや意識的に良い姿勢をとることで前向きな気持ちになれたり、やる気が出てきたりと心理面に良い影響を与える効果も期待できるのではないでしょうか。

姿勢は脳活動に与える影響

よく「心ってどこにあるの?」という問いがあります。

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心の場所探しの歴史はとても古く、古代ギリシャの哲学者・アリストテレスはは胸(心臓)にあると考え、医学の父と呼ばれる古代ギリシャの医師・ヒポクラテスは脳にあると考えていました。

現代では脳活動と精神機能に関する研究も数多く行われていることもあり、心は脳にあると考えている人が多いのではないでしょうか。

特定の精神活動と対応して活性化する脳の特定部位があったり,脳細胞の変質と精神機能の低下が相関したり,近年の脳研究の成果は,心とは脳であるという言明を強く支持しているようにみえます。
            引用:日本心理学会|心はどこにあるのですか?

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そこで、姿勢と脳活動の関連についても触れていこうと思います。

机に向かって勉強したり、パソコン作業したりする方は多いと思いますが、なかなか作業に集中できない時ってありませんか?

あまり意識したことはないかもしれませんが、その時の姿勢も少なからず脳活動に影響している可能性があることが過去の研究などから明らかになっているんです。

姿勢と前頭葉活動の関係性 

菅村、高瀬らが行った研究では、

姿勢と大脳の前頭葉の関係性をNIRS(大脳皮質の活動状態を計測する機械)を使用して調べた。

つまり、姿勢の変化が前頭葉の活動にどう影響を与えるのか調べたということ。

※前頭葉
意欲、思考、創造、実行 などを司る人間の脳の司令塔的役割を持つ存在で、自分の考えや行動、意思決定をコントロールする重要な役目を持っている。また、自制心や言葉を話したり体を動かしたりする機能も司っている。

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実験では、被験者に直立の姿勢やうつむきの姿勢をとってもらい、「さ」や「み」の発音で始まる名詞をできるだけたくさん言ってもらうという知的作業をしてもらった。

その時の前頭葉のオキシヘモグロビンの変化量(大脳の活性度の指標)を調べ、直立姿勢とうつむき姿勢のそれぞれの姿勢をとってもらう前と、とった時との変化量を比較した。

結果は、

直立姿勢の時は前頭葉のオキシヘモグロビンは増加して活性化したが、うつむき姿勢の時は活性化しなかった。

引用:春木豊『動きが身体を作る』(講談社,2011年)

上記の研究内容から、うつむき姿勢よりも直立姿勢の時の方が前頭葉が活性化する傾向にあることが理解できます。

うつ状態の人は知的作業をする時に、前頭葉の活動が不活発であるという研究もあることから、

うつむく姿勢はうつ気分と関係があり、さらに知的作業の効率が低下するも分かります。

何か勉強したり、パソコン作業をする際は、時間が経過するにつれ無意識のうちに背中が丸まって猫背姿勢になりがちの方が多いと思います。

その猫背姿勢で作業を継続することは、肩こりや腰痛を引き起こす原因となるだけでなく、作業自体の効率を下げてしまう可能性も考えられます。

また、猫背姿勢になると胸部が圧迫されて呼吸が浅くなります。
呼吸が浅くなることは血液循環の悪化にも繋がり、脳に行き渡る酸素量も少なくなるのです。
この酸素量の低下は集中力の低下を招いてしまいます。

肩や腰がだるくなってきたり、作業に集中できなくなったりした時は、一度自分の座っている姿勢をチェックしてみてはいかがでしょうか?

一度立ち上がってグッと背筋を伸ばすだけでもかなり違います。

また、自分に合った高さの机や椅子を用意することも身体に負担をかけないことであったり、勉強や作業の効率アップにおいて重要な要素にもなります!


まとめ

今回は姿勢が心理状態や脳活動に与える影響について、研究事例を取り上げてまとめてみました。

良い姿勢が身体に与える影響は主に以下の通り。

・肩こりや腰痛になりにくい
・疲れにくい
・呼吸しやすくなる
・代謝が良くなる
・内臓の活動が良くなる
・筋肉が効率よく働く(パフォーマンス向上)
・太りにくい
・見た目が美しく好印象

こちらの記事の中でもふれています。
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ただ、良い姿勢は身体だけでなく、

・心理的影響
・前頭葉の活性化(作業効率アップ)

といった心理状態や脳活動にも影響を与える可能性が示唆されているのです。

普段から良い姿勢を保持することや、良い姿勢を保持できる環境を作ることは心身ともに健康的であるために重要な要素の一つとなり得るのです。

ぜひ日頃から姿勢を意識してみてください!





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