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積むのを気にせず、古書を愛せよ

 今回のタイトルを「素晴らしき出会い」にしようかと思うくらい、自分に合った古書店を見つけてしまった。さすがに名前は出さないし、僕の趣味・趣向・関心とズレれば、数ある古本屋のひとつに過ぎないように感じるだろうから、具体的な描写は避ける。

 その書店は、まずそこそこ広く、ゆったり見れるのがいい。そして、その広さをしっかりと多くの書籍で埋めている。ブックオフを毎月数回、通っているので、個人的にレアな本というのが肌感覚で分かるのだが、その意味で“いい本”もそろってる。そして、肝心なのは、お手頃価格だということ。もはや、何も言うことはない。これは常連確定どころか、いっそのこと一度に一気に買ってしまいたいくらいだ。

 僕がよく見るYouTubeチャンネルに、フィギュアメーカーとしてお馴染み、海洋堂の宮脇センムの「センムと遊ぼう」がある。
 岡田斗司夫、山田五郎、そして宮脇センムのチャンネルを観ていると言えば、なかなか僕の人となりも伝わるのでは。

 センムの切り口も面白いのだが、好きなシリーズはプラモ店へ実際にいく回。センムをはじめ、多くの方が作りきれないほどのプラモをコレクションしている。僕も資料として買っておくこともあるのだが、あのレベルには到底かなわない。

 だが、観ていると気づかされたのは、「積みプラ」の感覚はまるっきり「積読」と一緒だということ。
 その趣味に無い人にとっては、読まないなら買わなくていいのではと捉えられる。たしかにそうだ。この情報社会にあっては、本は信仰対象ではなく、情報媒体か娯楽でしかない事がベースなのだから、読まないならお金の無駄。

 だが、読みたい時に手に入るのは、流行の小説か、決定版の専門書という一部の書籍だけということは、案外、浸透していない。
 先ほども書いたように、数店舗のブックオフを、一ヶ月内でいくつかまわっていても、古典として知られている本や専門書の多くは、見つけられず、あっても非常に高価なのだ。
 
 小説であっても、名の知れた人物にもかかわらず、一部の作品は見当たらないということは少なくない。
 たとえば、スティーブン・キングは、映画化作品も非常に多い現代の作家だが、『アトランティスのこころ』や『クージョ』といった作品は絶版である。

 そのため、欲しいと思えるジャンルの書籍に、新旧問わず触れられる場を持てるということは、非常に幸福なことだと、少なくとも僕は認識している。

 僕はその書店で初めて買ったのは、T・E・ロレンスの『知恵の七柱』全三巻セット。言わずもがな、絶版。
 映画「アラビアのロレンス」は非常に有名なのに、その元ネタでもあるロレンスの自叙伝的作品は、アラビアや大英帝国の専門家くらいしか手に取らないのだろうか。
 今日の情勢においては、アラブとユダヤの動向は世界が注目している。そのきっかけの重大事が、イギリスの「三枚舌外交」であり、筆頭に重要な人物の一人が、ロレンスなのである。

 いずれにしても、その対象が書籍であれ、プラモデルであれ、なんであれ、その価値を見出し、のこす者がいればこそ、後にそのコレクションが博物館的資料・史料となり得るのである。
 また、コレクションという形態をとるならば、即物的な消費とも異なり、何に自分は情熱を傾けてきたのかを公言できると思われる。

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