媒体グーグルトレンド推移

ぐるなび・食べログの現状分析 2020年度第2四半期決算(2019年12月作成)

※こちらは、あくまでも客観的データを見た、個人的な見解ですので参考までに

**1.ぐるなび **

①決算数値
 ・売上、営業利益
 説明会資料:2020年3月期 第2四半期決算説明資料(中期事業方針)
      :2019年3月期 第2四半期決算説明会資料
 第2四半期累計での昨年との比較をします。詳細は上記リンクを見ていただければと思います。

 ぐるなび業績   2019年3月期    2020年3月期 
         (2018年10月発表)(2019年10月発表)
 累計売上高    16,004百万円    15,163百万円(前年対比-5.3%)
 営業利益       1,030百万円                    681百万円(前年対比-33.9%)
 
 売上は、昨年対比で10億円ダウン、営業利益も3.5億円のダウン。売上は昨年も前年比で-8.9%、営業利益も前年比で-63.5%と売上もさることながら営業利益は大幅に落ち込んできています。
 売上落ち込みの要因は、ストック売上の減少。すなわち飲食店から毎月払われている掲載料金の減少=掲載プランの減額&掲載店舗数が減少が起きています。これは、明らかにぐるなび自体の集客力が弱まっていることも示しています。

・有料加盟店舗数と月間ユニークユーザー数
 上記を裏付けるように有料加盟店舗数は減少しています。また、月間ユニークユーザー数大分前からリアルタイムのものを発表しなくなってきています。昨年発表のものもその前年の12月のもの、第1四半期の発表数値も前年の12月のものとかなり古い数値を使っており、おそらく6,000万人を切ってきているのではないかと思われます。

            2019年3月期    2020年3月期 
           (2018年10月発表)(2019年10月発表)
 有料加盟店舗数      58,747      56,210

                                                     2017年12月   2018年12月
 月間ユニークユーザー数  6,500万人     6,100万人

②これまで打ってきた施策とその効果
・楽天ポイントとの提携
 今のところ、楽天側からのPRが少なく世間への認知は広まっていないが、少しづつ楽天会員からの流入は増えているようだが、まだボリュームとしては小さそう。Googleトレンドの「ぐるなび」の直打ちは昨年提携をした10月以降も大幅に増えてはいない。下のグラフの●がついているところは昨年(2018年)10月です。青の線がぐるなびです。
(楽天ポイントを使おうとしたら、ぐるなびで予約を入れる必要が出てきますので、直打ちでのぐるなびが増えるはずです。)
 また、今四半期に使うはずであった広告予算も使わずに先延ばしにしましたが、11月末の段階で目立った販促はしていない状態です。
 同時期に楽天のIRがありましたが、業績が芳しくなく、しばらくは、楽天が主導してのぐるなびの宣伝は行わないかと思います。
 別の軸では、楽天ポイントによる会員の囲い込み→予約クロージングページ(ランディングページ)としての「ぐるなび」を狙っていると思います。
 ネット予約が「ぐるなび」から入る=送客費用が「ぐるなび」に入る の構図なので、継続的な売上が見込めます。

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・Googleマイビジネスとの連携
 ぐるなび内で席のみネット予約の開放を行っていると自動でぐるなびと連携が図られるように2018年10月になりました。(楽天ポイントとの提携と同時期)こちらは、Googleマイビジネスの浸透と共に一定のアクセス数の流入を稼いでいます。現状、Googleマイビジネスと予約システムで公式連携しているのが「ぐるなび」と「TORETA」だけなので、こちらだけページ上に大きな予約ボタンが出る為、他の予約サイトのリンクを張っていてもこちらが押される可能性が高いです。
 一方でGoogleマイビジネスでアクセスを取っているにも関わらず、予約は「ぐるなび」になりますので、送客費用の一人当たり200円が発生するようになっています。何も知らずにぐるなびに費用を払っている加盟店さんも恐らくいると思いますので、自社の予約サイトをお持ちの方は一度確認し、自社サイトへリンクを張ることをおススメします。
 こちらが「ぐるなび」のネット予約の伸びに寄与していると思います。

・Instagramとの連携
 ぐるなびと同時期にInstagramとも連携を図っています。こちらはInstagramのTOPページに予約ボタンが出るというものです。通常の外食店舗のInstagramホームページは、アクセスはあまりされないということとinstagramの利用者層がぐるなびのページを見てクロージングされないであろうことを考えるとあまり効果は出ていないと思われます。

・スマートフォン用画面のUI変更
 8月のお盆明けくらいから、スマホからアクセスした際のUI(ユーザーインターフェース:簡単にいうと見た目)が変わりました。例えば、「新橋 居酒屋」と検索して入った時の画面が下記です。以前との違いはこの表示されている2枚の写真です。以前はPCの店舗ページのTOPの一番上の写真が反映されていましたが、現状は内装と商品の写真が反映されるように変更になりました。また、各店舗ごとに写真がスライドするようになっており、商品、内装、こだわり、クーポンといったものがこのページ上で他店舗との比較ができるようになりました。その結果、ユーザーへの使いやすさの向上は図られましたが、一方で店舗ページへのアクセス数の減少を招いています。
 実は、今年の1月にも同様の変更をしていたのですが、直ぐに戻していました。これは前経営陣がぐるなび全体と各個店のPV(ページビュー)が減ることを恐れて、戻してしまったと想像ができます。その後、経営陣入れ替えを行った為、今回のユーザビリティーの向上へ舵を切れたのだと思います。
 とはいえ、「ぐるなび」へのアクセスが減ってしまったこのタイミングでは遅すぎたのではないか?と個人的には思います。

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③今後の見込み
 新規流入施策として今後期待できそうなのは、楽天ポイント会員からの流入ではあるが、今のところ大規模な宣伝企画は出てきていない。今後ここが強化されたならば、少し期待はできそうな部分ではあります。
 一方では、ぐるなび単体での集客強化のロジックがないのが現状です。ぐるなび自体が「飲食店経営サポート事業」を標榜しており、販促においても「柔軟・多様な販売手法へ」を掲げており、既存の「ぐるなび」以外でのものを広げていかなくてはならないことを自ら言っています。

2.食べログ

①決算数値
 ・売上、営業利益
 説明会資料:2020年3月期 第2四半期決算説明資料
      :2019年3月期 第2四半期決算説明会資料
 第2四半期の昨年との比較をします。詳細は上記リンクを見ていただければと思います。

 食べログ業績   2019年3月期    2020年3月期 
         (2018年11月発表)(2019年11月発表)
 2Q売上高    5,951百万円    6,494百万円(前年対比+9.1%)
 下記が内訳になります。
 飲食店販促      4,635百万円                  5,322百万円(前年対比+14.8%)
 ユーザー会員              735百万円                     593百万円(前年対比-19.3%)
 広告         581百万円                     579百万円(前年対比-0.4%)

 全体の業績はぐるなびとは打って変わって、これまで通り右肩上がりですが、その中身がここ一年大きく変わってきています。業績好調のに見える背景は飲食店販促売上が順調に伸びていることによって支えられています。飲食店販促売上の内訳は
 ・加盟店からの月額の掲載料
 ・ネット予約の送客費用(一人当たり200円)
です。
 月額の掲載料は、
 ・掲載店舗の数が増えていること
 ・高額プラン店舗が増え、プランアップをしないと上位に表示されない
といった背景から掲載料が増えています。
 ネット予約に関しては、
 ・一般の方へのネット予約をする週間が浸透、
  (電話予約からネット予約へ移行が進んでいます。)
 ・各グルメ媒体がネット予約を増やし、送客費用を獲得しようということから、ネット予約の送客費用を払う契約をしている且つ、空席のある店舗を上位に表示させるといった事を行っている
 ということでネット予約の浸透と意図的にネット予約がしやすい店舗を上位に上げているといったことを行っているので、ネット予約が増えているといった背景があります。
 広告サイトなので当たり前ですが、食べログが儲かるお店が上位に表示されるようになっています。このあたりが、この前の3.8問題とも絡みますが、評価サイトと見せかけて実は広告サイトといったことで大きな矛盾をはらむ媒体となってきてしまっています。

 参考:【食べログ3.8→3.6問題まとめ】年会費を払えば本当に点数は上がる!?

 ・有料会員数、月間利用者数
 食べログ業績   2019年3月期    2020年3月期 
         (2018年11月発表)(2019年11月発表)
 有料会員数    126.1万人     発表なし
         (2018年6月)   (※2019年3月は100.3万人)
 月間利用者数   11,531万人     10,810万人
 
 有料会員数は2017年3月の174.6万人をピークにずっと下がり続けています。月間利用者数も2017年の12月から2018年6月の数値が怪しいですが、このところ頭打ち、直近では減少に転じているように見えます。
(下記2016年6月からのグラフ参照)

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 ・利用者数の端末別、男女別、年齢別
  直近の発表では、下記のような分布になっています。
  アクセスはスマートフォンからが約85%となっており、ページ作りもスマホで見たときに最適になるようにしていくことが必要です。
 男女別では男性比率の増加、年齢層も40代以上の割合が増えてきています。利用者数が減っていることを考えると自際に起きているのは、30代以下、女性利用者数の減少だと思います。このあたりはSNSを積極的に利用する層なので、そちらへ移行が進んでいると思われます。また、最近ではgoogleマイビジネスの利用が増えてきていますので、得点を確認する層がそちらに流れていることも想像できます。

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②最近の施策とその効果 
・テレビCM   
 昨年末、3月、8月以降とテレビCMを打ってきています。内容を見ていると昨年末と最近では打ち出しの内容が変わってきています。決算発表でもCMの効果については触れなくなってもきています。
  個人的な推測では、昨年末、3月は食べログのアプリダウンロードを施し利用者数の増加を見込んだCMの内容でしたが、最近のものは明らかにネット予約するなら「食べログ」を強調していきます。すなわち新規利用者数(アクセス数)獲得からネット予約の増加に舵を切ってきています。
  ①のところでも触れましたが、有料会員数の減少が進んでいます。本来であれば、TVCMによってアプリダウンロードが増え、さらに会員数が増えるといった図式になるはずでしたが、実際には減少してしまっています。有料会員としてできることが、スマホで得点順での並べ替えができたり、ランチの500円クーポンが使えたりといったことがあるのですが、実際には使わなくなってきていることから解約になっています。
 その為、途中から会員獲得から方針を変えて、送客費用の増加につなげる為のネット予約を強調したCM転換を図ってきていると見ています。
 結果、店舗から見た場合には、新規顧客の獲得はあまり進まず、ネット予約だけが増加するといった形になってきています。

・『大衆点評』との提携
 9月から『大衆点評』との連携も開始しています。『大衆点評』は中国内最大手の口コミ投稿サイトです。中国人集客において期待はできそうですが、今のところうまく使いこなせていないのが実状でしょう。最近、間に入り通訳をしてくれるサービスも始まりましたので、今後どれくらい広がっていくか?は未知数です。
  中国では、独自のSNSが発達しています。そちらからの情報収集やtiktokのような動画共有サイトもいくつもあり、グラフィカルに情報を集めています。大衆天評の中国版だと投稿の最初に動画必ず入っており、お店の雰囲気が詳細に分かります。日本だと個人情報保護の問題も有り、撮影できないといった面もあるかと思いますが、現状の日本のグルメ媒体のような写真のみといったものが向こうでは一昔前のものになっていますので、中国人集客をするのならば、有名店以外はもっといろいろな工夫をしないと難しいと思います。なので、個人的には単に連携したり、掲載するだけでは爆発的な集客増にはつながらないと思います。

・Tポイントでの囲い込み
 10月からの広告ページでの表示順位の優先事項にTポイントが「使える」というのが加わりました。これまでは「貯まる」だけだったのですが、「使える・貯まる」の両方ができるお店の方が同額プラン内では上位に表示されるようになっています。
 これにより「Tポイント会員」を食べログに囲い込む戦略だと思います。新規の顧客層の開拓が難しくなった今、どの媒体も予約のクロージング場所としての位置づけを狙っています。
 今のところ、こちらによっての個店ごとの予約クロージングが高まったかは分からないです。ただし、早期に使えるに対応したお店していないお店ではアクセス数に差が出ています。特にプレミアム5S以上のプランをやっているお店においては、「使える」をやっていないと致命的に表示順位が下がりますので、注意しましょう。

③今後の見込み
 ぐるなび同様自サイトだけでのアクセス数増加は難しく、外部との提携等が必要になるでしょう。また、得点、コメントの口コミサイトといった位置づけをgoogleマイビジネスに奪われつつあり、サイトとしての優位性は、このままであれば今後落ちていく可能性が高いです。 
 しかしながら、都心部においての浸透度は高く、予約する際に食べログを使っているといった人のボリュームは一定数あります。今後他の予約サイトが出てくるかも知れませんが、使い慣れたUIと顧客情報は優位に働きます。仮にアクセス数が減ったとしてもクロージングサイトとしての役割は残ると思います。※地方においては、ホットペッパーの方が優位です。
 現状打ち出している方針は、
 ・ネット予約送客数&加盟店掲載費用のアップ
 ・食べログのテイクアウト専門サイト
 ・飲食店の食材仕入れサービス
 既存のページのアクセス数を増やす施策がないので、店舗からすると全体的な売上が上がる理由がなく、掲載費用と送客費用の負担だけが増えるといった構造になりかねないです。というか現状そうなっているお店が増えています。何かしらの構造を変えないと店舗と利益相反を起こしている形になっているので、今後の成長はありえないと思います。
 ぐるなび同様これまでのグルメ媒体主軸からの転換を図っていくのではないかと思われます。

3.まとめ**

【ぐるなび】【食べログ】共通
 ・月間の利用者数が減少している →店舗から見ると集客力の低下
 ・ネット予約数が伸びている   →送客費用の増加
 ・会員の囲い込みに力を入れている →予約サイトとしての強化
 ・自媒体外からの予約連携  **→予約数増(ただし、ぐるなび・食べログで予約を刈り取る構造なので、送客費用は増大)

 ぐるなび・食べログに限らず、グルメ媒体自体へのアクセスが減少している為、予約の総量自体は増えていないにも関わらず、ネット予約の割合だけが増えていくといったことが起き始めています。このままいくと店舗の販促費用だけが上がっていく構造になり、収益を圧迫なる可能性が高いです。**

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 飲食店のWEB販促マーケット推移 ※初期基礎知識編①(2019年12月記載)
 ・飲食店のWEB販促マーケット推移 ※初期基礎知識編②(2019年12月記載)
 ・マーケティング基礎知識(消費者の購買決定プロセスモデル) 





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