やることはたくさんありそうね。
明るくなって目が覚めて、天井に
「あぁ、そうだった」と気がつく。
次女の三者懇談を終えて(担任の先生の心もとない前髪をあまり見ないよう配慮して)、夕飯の支度(カセットコンロに鍋をセット)をすませたあとで、高速を三時間とばして、長女の部屋に来たのだ。
途中、濃霧で10メートル先も見えないほどで、「五里霧中」ってビジュアル化したらこういう感じだろうな、怖い…と思いながら、気を確かに、ハンドルを必死と掴んでいた。
スウェットにマスクのもっさんもっさんな長女は、ようやく熱が下がり、起き上がれるようになったけれど、とケホケホと咳込む。
部屋はその惨事を示して、流しには洗い物、洗濯機にも洗い物が溢れはみ出していた。
眠くなるといけないからと、夕飯もとらずにとばしてきたから、私もなにはともあれ、持参した夕飯をとる。缶ビールがうますぎる。
長女は座卓、私はキッチンカウンター。
少し離れて、金曜ロードショーを見ながら、バイトの話や彼氏の話や次女の話や姪っ子の話をしていた。
座卓に丸ごと置いてあったリンゴは、
「○○さん(長女は彼氏をさん付けで呼んでいる)さ、リンゴ買ってきてくれたはいいんだけど、剥いてくれなくてさ〜。」
と、〝優しさもう一声〟な彼氏がなんか可笑しくて、「これは飾っておこう」とテレビ台に飾って置いた。
流しの洗い物だけを片付けて、こんな時間だから洗濯は明日にすることにして、シャワーを浴びる。シャンプーは長女がまだ家にいる頃に、家で使っていたシャンプーで、妙に懐かしくなる。
ずっと寝ていて、咳も出て、背中と腰が痛いからと、マッサージを頼まれて、うつ伏せの長女に跨り、マッサージをする。
長女が中学のころ、部活でハードなトレーニングをするのにメンテナンスを怠るから、怪我をしないように、よくマッサージをしていた。あんなに張りのある発達していた僧帽筋、広背筋、脊柱起立筋は細くなり、痩せて骨ばって、凝り固まった背中(ここはきっと肺が悪い)を解していく。
金曜ロードショーはクライマックスだった。
クローゼットの前の、畳まずに積み重なった乾いた洗濯物たちを畳み、クローゼットに収めていって(男物のタンクトップとNIKEのパーカーも)、今夜の私の寝るスペースを確保して。
二つの寝袋を、敷布団と掛け布団にして。
雨の音と、長女の咳を聴きながら、いつの間にか眠っていた。
朝方、長女は咳もせず、静かにしっかり眠れたようだ。
さぁ、ご飯を炊いて、お味噌汁を作りながら一杯目の洗濯機を回し始めるとしよう。
ハウルの城を掃除するソフィーみたいに。
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