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変わってしまったのはあなた?

それともわたし?


意味深なタイトルにしてみたのですが、大したことではなくて、先日食したラーメンの話。

20代前半の頃に、大好きで足繁く通ったとあるラーメン屋がある。
当時は、週に何度かバイト終わりに寄って食べて帰るのが習慣になっていた。

あ、あのラーメン食べたい。

ふと、先日あの懐かしい味を思い出してしまい、今の家からは少し離れてしまっていたのだが、すぐに思い立ちそのラーメンを食べに行くことに。

店に着くと、当時の大衆居酒屋のような面影は全くと言っていい程無くなり、ファミレスのような、大型ショッピングモールのフードコートのような、わりかしキャッチーな佇まいへと変貌を遂げていたのだが、それは全然良しとして、「おおー綺麗になってるやん!」ってな感じで、どうやら私が行くことのできていなかった10年程の間に全国に店舗数も広げちゃったり、メニュー数も増えちゃったりしちゃったりしたみたいで。
魅力的なラインナップの豊富さになったものの、私は迷いもなくあの頃よく頼んでいた味噌とんこつラーメン(仮名)を注文した。

あの頃はいつも「らっしゃーい」とさほど愛想の良くない白髪頭のオヤジさん二人組が手際よく連携プレイをはかり、カウンターから吹き抜けの厨房で麺を湯切りし、どんぶりにスープを入れ、最後にはシンプルなチャーシューもやしメンマねぎのトッピング――
までの一連の工程をカウンタ―席から眺めることができた。そしてそのまま「はいよー」言うてオヤジさんのどちらかが目の前に味噌とんこつラーメンを置いてくれる。と言うスタイル。

だったのだが、今はもうカウンター席は無くなり、厨房とフロアは完全に仕切られ、中の様子は全く見えなくなっていた。どうやらそのオヤジさん二人組もいないようだ。

私はその吹き抜けの厨房が見えることにより、ラーメンが出来上がるまでのワクワク感を堪能できるのが非常に好きだった。だからちょっと残念だなあなんて思ったりもしたが、まあ仕方がない。なんせ10年以上来ていなかったのだから。そりゃ変わるわ。人も店も。と気を取り直して味噌とんこつラーメンを待った。

数分後、小綺麗なお姉さんが「お待たせいたしました。味噌とんこつラーメンです」と丁寧に紹介し私の目の前に置いてくれた。
おおお。きたきた味噌とんこつ、待ってましたこれこれ~これ!……これ?…これえ?

当時より少し色味が濃い気がした。

あれ?と思いつつも、まあ10年来てないしな。と言い聞かせすぐにスープを一口。
あら。

……違う。

10年前に食べていた味噌とんこつの味とは全然違ったのだ。あまりこういうことは言いたくないし思いたくないのだが、正直、え、味落ちた?なんてことを思ってしまった。
えー嘘やんほんまに?店と人まではええけど味まで変わってもうたんか?ほんまか?と、麺をすする。
あかん。やっぱちゃう。
うわあ。まじかあ。10年来てへん間にこんなに変わってもうたんか~まじかあ~くそう……なんてことを思いながら、二口目に入ろうとした時に、私は思いとどまった。

待てよ。

確かに、10年間、来てなかった。その間にこのラーメン屋は店も人もガラリと変わった。それは間違いない。んでも、その10年間、私自身はどうやった?
10年前……10年前は、まだ髪の毛を金髪にしたりツートン(金髪と黒とか)にしたり、古着が好きで全身派手な柄のコーデで身を包み、バイトなんて金さえ稼げりゃええねんとろくに人とコミュニケーションをとろうとせず。

それがどうや今は。
髪の毛はもっぱら暗めのアッシュカラー。ベージュやホワイト系の無印な上下服で古着なんてもってのほか。仕事はとにかく人と溶け込めるようにと愛想や謙虚さ忘れずに精神(精神はね?)。
極めつけには、あの頃あまり美味しいと感じていなかった茄子のおひたしやら、茄子の天ぷらやら、味噌汁には絶対茄子入れたり(茄子お化け)するくらい美味しく感じたり、飲みの場と言えば「チューハイレモン!」が定番やったはずがいつの間にか「生中で!」がお決まりになっていた。

なんてこった。このラーメン屋より、私の方がめちゃめちゃ変わってしまったんやないか?
あれ?じゃあ、もしかして、このラーメンが変わったんやなくて、私の味覚が変わったの?
ん、いや、でも10年も経ってるからやっぱラーメンの味も変わってる?
あれ?え?あれれ?

変わってしまったのはあなた?それともわたし? どっち?


そう。
ラーメンの味が変わったのか、私の味覚が変わったのか、どちらが変わったのか私はわからなくなってしまったのだ。

さて、既に長文なのだけど、ここまで読んでくださった方にはもう少しだけお付き合いいただきたい。
私のこの「変わってしまったのはあなた?それともわたし?」と近い感覚に思えたのが以下の奈星さんの記事だ。

「色が全て真逆に見えているかも」と考えたことがある人は他にどれくらいいるのだろうか。

私は完全にその一人だったのだけど、そう思うようになったきっかけが、昔友人から色盲疑惑を疑われたことからだ。(ずっと「ピンク」だと思って着ていた服が、友人5人程に確認した時に「赤」だと言われたことが発端。)

そこから、あれ?私の見えているものはもしかして違う?なんてことを考え出したら止まらなくなり無限ループへ陥っていることがしばしばあったりなかったり(基本的にすぐ他の事に夢中になり忘れたりもする)

とまあ、一度、奈星さんの記事、本当に面白いので読んでみて頂きたい。(そして、私がこの記事にコメントしたことにより奈星さんnoteの名誉あるコゆ喜賞に選んでいただけました。ありがとうございます🙏)


長々と書きましたが、私が言いたかったのは、自分の「感覚」が「絶対」とは限らないよねって話。

ここまでお読みいただいた方、本日も本当にありがとうございました。

変わらないと思っているものは変わり続けるものなのですね。
それが面白いと思えたら勝ち。かも。

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