HSPと発達障害を併発している人がどうなるかの仮定【HSP記事後編】
HSP
Highly Sensitive Personの略で、直訳すると「大変に繊細な人たち」。
具体的な特徴は「非常に感受性が高く敏感な気質を持った人」とのこと。
これは、
・先天性である(生まれた時からある気質)
・病名や診断名ではない(医者や臨床心理士に診断されないと認められない、というものではない)
・人口の15~20%がこの特徴を持っている(5人に1人)
というものだそうだ。
先日、あざらしがこのHSPなのではないかと思い至った流れについてまとめて記事にした。
あざらしはどうやらHSPのようなのだが、それに加えて発達障害の診断も受けている。
それぞれの特性が同時に発動したり、特性同士が打ち消し合うこともあるかもしれない。
なので、それぞれの特性を足し算したらどんなムーブになって、それがあざらしにどれだけ当てはまるのか、仮定してみることにした。
もちろんこれは仮定と感想でしかない。医学的な根拠は1ミリもない。
だけど、考え方を受け入れるだけで楽になることもあるだろう。
自分のため、この文章に共感してくれる同じ悩みを持つ方のために、備忘録として残しておこうと思った。
特性があることは喜ぶことではない
まず最初に言いたいこととして。
あざらしにとっては発達障害もHSPも、困ることが多いと思っている。
これらの特性がある人は、いずれも少数派である。
さらに、いずれも外見では全く分からない特性だ。
だから理解されない。むしろ特性のない人に理解するのは無理だ。なぜなら正しく説明したところで相手は同じ感覚を知ることがないからだ。
「大げさに言っているんじゃないか」という疑念を晴らすことができない。
だから、これらの特性が「あってほしい」なんて思うものではない。
この記事に書かれた特徴が自分と合致していたとして、それを根拠に自分は発達だ、HSPだ、とどれだけ掲げても、その看板は他人を変えてくれない。水戸黄門の紋所にはなり得ない。
この特性を自覚したことによって喜ぶのは、自分を知り、工夫することで、自分の生活が良くなった、苦労していたことが解決した、何を頑張ればいいのかわかった、という時だろう。
この記事を書こうと思ったのも、特性によってどんなことがマイナスになるか書き出して原因を考え、それが5回起こっていたのを4回、3回と減らしたいと思ったからだ。
HSPの大きな特徴「DOES」
HSPは、大きな特徴が4つある。頭文字をとってDOES(ダズ)と呼ぶそうなのだが、これら全てに該当する人をHSPとするんだそうだ。
・深く情報を処理する(Depth of Processing)
場や人の空気を読み取る能力が高い。
1を聞いて10を考えられるがノイズも多く、自分で処理しきれない情報を抱える。狭く深く物事を考えられる。
・刺激に敏感で疲れやすい(Overstimulation)
外部からの刺激に敏感。
痛みに弱かったり、人混み、物音、光、食べ物の味、におい、身につけるもの、気候の変化、電波、目に見えないエネルギーなどに大きく反応する。
「感覚が鋭い」との相乗効果により、回避が大変難しいのも特徴。
・高度な共感性(Empath and Emotional Responsiveness)
周りの人の感情を読み取り、自分を合わせることが多い。
人から影響を受けがちで自分を見失うこともしばしば。
人が怒られていると自分のことのように感じる、仕草、目線、声色などに敏感で、それらを別の経験と結び付けて大きな不安や勘違いを持ちがち。
・感覚が鋭い(Sensivity to Subtleties)
人よりも感度の高いアンテナを無意識に張っている。なので刺激に敏感なのに、その刺激を欲しくもないところから自動的に拾ってしまう。「気にしない」ことができない。
チェックリスト
これらの特徴に心当たりがある人は、特徴チェックリストを使って簡易的に判定できる。
HSPを提唱した心理学者エレイン・アーロンが27項目で作っている。
このチェックリストには著作権があるそうなので転載は控えるが、調べてみたい人は「HSPチェックリスト エレインアーロン」などで検索したらすぐに掲載サイトを見つけられる。
発達障害の特徴
発達障害も先天的な脳のはたらきの違いとのことで、生まれた時から発達かそうでないかが決まっている。
こちらは医師や臨床心理士の診断によって判定される。
基準はしょっちゅう変わり、決められた検査項目というものはない。
医師の所見、心理検査の結果、さらにはその検査に取り組む姿勢、細かい挙動や発言など全てが判定の材料になる。
その情報を何人もの臨床心理士がつけ合わせ「この人は発達障害かどうか」を判定するんだそうだ。
あざらしは「発達障害」という診断名なので、今診断される人が「ADHD」や「ASD」という診断名を書かれるのか、といった事情は知らない。
ADHD「不注意」
期限や待ち合わせ時間を守れなかったり、なくし物や忘れ物が多いのはこの特性。注意を持続できないのが特徴で、さっきまでこれをやろう!と覚えていたものをスルーしてしまうことが多い。
ADHD「多動・衝動性」
じっとしていられない。体を動かしていないと落ち着かない。貧乏ゆすりなどをする、話し始めたら止まらない、物欲などの衝動に急にかられたりする。イライラすることが多い。
ASD「対人関係を築くことが苦手」
他人に興味を持たない。
他人との距離感がわからず、近すぎたり遠すぎたりする。これに気付かず遠すぎて「悪く思われている」と勘違いされたり、異性に近すぎて「セクハラだ!」と言われる危険性をはらんでいる。
ASD「他者の視点、場の雰囲気や文脈の読み取り、想像の困難」
過去に「アスペルガー症候群」と言われていた特徴の代表的なもの。
「赤ちゃんを見てて」と言われた時本当に見てるだけで泣き出しても対処しないなど、言葉の通りに物事を受け取って、言葉のニュアンスや裏にある事情、個人ごとの例外を理解するのが苦手。
ASD「こだわりが強い、興味関心の偏り、反復的な行動」
横断歩道を白い部分しか踏みたくないみたいな感覚。気に入った行動ができたらずっとそれを続けたいし、変えたくない。
興味があるものは必要以上に学ぶが、興味ないものには全く集中できない。
ASD「感覚が過敏or鈍感」
ある物事には過敏に気づいたり反応したりするが、またある物事には鈍感で全く気付かなかったり感じもしない。
どっちかしかない、ということはまずなく、全てにおいて過敏だとかひたすら鈍感ということはないと思われる。
HSPと発達障害を両方持っている人に起こりそうなムーブ
HSPも発達障害も、無意識に特徴が出るという共通点がある。つまり、出そうと思っていないものが出る。
ということは、HSPと発達障害の特徴が同じタイミングで出たとき、解説サイトでは書かれていないような挙動になるかもしれない。
自分の経験から、組み合わさった結果こんなムーブになっていたのかもしれない、というものを書き出してみる。
他者の視点の想像が困難+対人関係を築くことが苦手+共感しやすい
どちらか程度の強い方が表に出るんだろう。
ASDに気が付いていない人は、そもそも他者の視点という考え方に気付いていないので共感もすることはない。でも、ASDに気付いて自分を変えようとしている人や、極端に共感性が高い人は、
・「心が動いたのに、それが共感であることがわからない。共感なのかも?と思っても具体的な感情が理解できない」
・「相手の動作の細かいところがいちいち気になるのに、その動作の理由が全く想像できない。すべてに疑心暗鬼になる」
これはまさにあざらしの悩みだ。
これは良いところもある。他者の視点の想像が困難であり、人に共感しないとなると、「相手が不快な気持ちになった」という事実すら気づくことができない。変なところで人を不快な気持ちにして人間関係で損をするが、その前兆を見つけられないし深掘りもしようとしない。
「自分は普通にしているのになぜか相手が怒って関係を切られた。理由がわからない」と言いながら、理由を考える間もなく気にしなくなってしまうので、直す余地があるのに「自分はそういう人間だ」と諦めてしまう。
HSPの共感性があることによって、「何が悪かったのか」を非常に気にすることで自分を知るきっかけを得やすいというのが利点だと思う。
過剰な刺激を受けやすい+感覚が過敏or鈍感
感覚が鈍感な部分は、逆にHSPがあることによって刺激の度合いがプラマイゼロになっているので、特に苦労することはない。
困るのは過敏が出ている方で、過敏でかつ過剰な刺激を受けるのであれば、「こうかはばつぐんだ!」とばかりに、必要以上にダメージを受ける。
あざらしは特に痛みがこうかばつぐんらしく、子供の頃を思い返しても、ひざをすりむいた程度であまりに痛くて動けなくなっていた。今でも痛みが発生しそうなことはしたくないし、注射は怖い。
共感しやすい+感覚が過敏+衝動性
他人が出す音のうち、乱暴な言動だったり、泣きわめいているような音声を周囲から拾い集めてしまい、それがまるで自分の怒りであるかのように炎上してしまう。しかもこの怒りは瞬間沸騰だ。
これを「怒りのもらい火」と表現するが、これに対して怒りを寄越してきた対象に衝動的に憎悪を覚えるようになってしまっている。
あざらしはまさしくこれで悩んでいるんだ。
衝動性+深く情報を処理する
脳のはたらきは潜在的に高いのだが、感情が優先する。
なので意識的に使おうとしないと脳を使うタイミングを逃し続け、言うなれば宝の持ち腐れ状態になってしまう。最大レベルは100まで上がるのに、現在のレベルは3とか5とか、といった状態だ。
HSPの人は脳のキャパシティが高いのだから、論理的思考を身につけるのは難しくないと思う。頭を使うのが苦手だと思っている人も、それは使い慣れていないだけだ。
論理的思考は感情を抑える技術であると思っている。特にリフレーミングやアンガーマネジメントを覚えれば、衝動が出た瞬間にそれを抑え、論理を走らせることができるようになる。
HSPの人の中でも、論理を考え始めた瞬間に「感覚が過敏」が出てしまってまともに考えられない人もいるのかもしれない。あざらしはこのような苦労をしなかったので、発達障害の鈍感と相殺しているのかもしれない。
こだわりが強い+感覚が鋭い+不注意
ASDの人は集中力が高く、好きな物事にはいくらでも熱中できると言われる。でもADHDを同時に持っていると、熱中していても急に別の考えに切り替わることがある。ここにさらにHSPが加わることで、感度の高い感覚アンテナが不注意のスイッチを拾い集めるようになる。
別の情報を勝手に拾い、その情報のために急に頭を切り替えてしまうから、最後まで集中することができない。発達障害の不注意を感覚の鋭さによって増幅させてしまう部分もあるだろう。
誰かと1対1で面談のような形式で話をしているとしよう。その状況で別のことに意識がいくなんて考えられない人は多いかもしれない。でも実際に隣を人が歩いたり、大きな音がしたりして、それに意識をとられてしまうと目の前でしゃべっている人が何を言っているのかわからなくなってしまう。
不注意+過剰な刺激を受けやすい
時間が守れなかったり忘れ物をしたりするなどの不注意は、自分の体調が良いときには起きにくいと感じる。
気を付けようと思い始めた時はちゃんとできるが、体調が悪化するにつれて不注意の数は増える。あまりに刺激を受けすぎ、疲れやすくなっているのであれば、不注意の数も増えてしまうだろう。
他にも多くの組み合わせがありそう
あざらしが自覚してる特徴と、HSP・発達障害の特徴を照らし合わせただけでもこれだけ浮かぶ。
他にも複数の特徴が連動して、どのサイトにも説明がないような特徴が出てる人もいるかもしれない。
正直、それで困っていないのであればそれも自分だと前向きに受け止めてしまえばよいと思う。
生活に支障が出るレベルで困ったときに初めて考え始めればいい。
自分はそうなんだ、と知るだけでそれなりに楽にはなる。楽になったあとで対処法を考えていけばいい。
HSPや発達障害の特徴を前向きに言い換える
これらの特徴のマイナス面で悩んでいる人は、プラスな面として受け止めるのは難しい。なので、あざらしがこうだと思った言い換え方を紹介する。
このような、悪い言い方を、同じ意味で前向きな言い方に変えることをリフレーミングというそうだ。リ・フレーミング、フレームを作り直す、という意味だ。
・深く情報を処理する
そもそも情報処理能力が高いというのは良いことだ。
頭がいい、頭のキャパが広い、論理的思考力や新しい考え方を身につけるまでの速度が速い。
知識を積むのが得意なら法律も扱える。
・過剰な刺激を受けやすい、感覚が鋭い
五感が強いので見つけにくい小さなリスクを見つけられる。
対策も「深く情報を処理」できるのだから自ら発案できる。何かが起こる前に予防することが得意。
・共感しやすい
人が困っている、気にしていることをいち早く気付けるので、人の相談に乗るのが得意だ。
相手が気づいてない所まで気づけるので解決策にたどり着くのが早そう。
・多動、衝動性
工数や難易度にビビってて手がつけづらい作業に勢いで着手できる。
言いたいことがはっきり言えてしまうので、その部分でストレスを溜めなくてよい。
・不注意
瞬時に別のことに考えを切り替えることができる。非常時や災害時など突発的に頭を切り替える必要があるときに一気にそのことにモードチェンジできるというのは強い。
・対人関係を築くことが苦手
一人でいても苦ではないどころか、一人のほうが快適まである。
誰かと連絡を取らないと落ち着かないみたいなことがなくて済む。
一人でいるか誰かといるかの頓着がなく好きな方を選んでいける。
・他者の視点、場の雰囲気や文脈の読み取り、想像の困難
言わなきゃいけないけど人付き合いを気にして言いづらいことを平然と言うことができる。場の空気より大事な「禁止事項」は世の中にいっぱいある。それを言える人は少なく、言えば将来的にみんなが助かる。
・こだわりが強い、興味関心の偏り、反復的な行動
スペシャリストや研究者である。
得意なこと、興味があることは他人よりもずっと内容を掘り下げて詳しくなり、誰も思いつかない新発見を思いつける。
・感覚が過敏or鈍感
過敏な部分は、自分に対する危機察知能力が高い。
鈍感な部分は、多くの人が悩むようなことが気にならない。
とりあえず不便を回避するための対策
・イヤホンは生活必需品
最も実生活に影響している困った特徴は上記の「怒りのもらい火」だ。
もらい火を食らってしまえば、そのあと1日以上はその瞬間のことを何度も思い返してしまい、ずっとイライラすることになる。
なので、まずはもらわないことを考える。一番簡単なのはイヤホンを使って外出することだ。
都合よくあざらしはイヤホンにこだわっている。これをつけて移動すれば、どんなにでかい声で騒ぎがあったとしてもスルーできるくらいの遮音性がある。
・忘れ物対策は、恥ずかしいとか思わずに指さし確認
上記イヤホンも忘れたらピンチだ。何しろ不注意が発動しがちなので、持ってきたつもりで忘れてるなんてこともあるだろう。
ADHDの人向けの忘れ物対策として、部屋のドアに忘れものチェックシートを貼っている。そこにはしっかり「イヤホンセット」と書いてあるので、毎回指さし確認をしている。
その指さし確認すら忘れることもあるが、それでも5回忘れるのを2回に減らす程度の効果はあるだろう。
・頭が真っ白になったら失礼でも話を止めさせる
一対一で会話している時に、別のことが気になって頭が回らなくなったら、無理せず会話を打ち切って「ちょっと待って」をする。
ちょっと頭が痛いでも、いったん内容を振り返らせてくれでも、いくらでも言い訳をしていいので、話の途中でもとにかく話を止める。
そのまま話が続いてしまうと相手は「話を聞いたものだ」と思ってしまう。その後で実は内容が頭に入ってなかった、の方が後で問題になる。
深呼吸を何回かして、わざとあちこちを見て意識をしてしまい、次の深呼吸で最初の話題を思い出す、とやれば、思ったほど不自然ではない。
・論理的思考を訓練する
相手が理解しきれないことを感情で伝えても伝わることはない。
個人の感想なのに、まるで多くの人が同じように考えている、と決めつけて話をすることは「難癖」になる。
自分の状態をわかってもらうには、いかにわかりやすく順序立てて説明するかが必要になる。
どれが論理でどれが感想なのか区別できるようになりたい。
アンガーマネジメントやアサーションなどのコミュニケーションの技術は、それそのものが論理的思考を言い換えただけの内容だと思っていい。
ほぼすべてのコミュニケーションスキルは、論理という一点を中心にすべて繋がっている。
感情的にならないようにするだけで、「次どうすればいいか」を冷静に考えられやすくなる。
特徴が強くても、人生捨てたもんじゃない
今まで、発達障害の人が仕事をする時には
「会社や周りの人に説明して理解をしてもらいましょう」
といったような内容のアドバイスをネット上で多く見てきた。
だがこれを実行した結果、誰にもまともに理解されずに苦労し続けている人は世の中にいっぱいいると感じている。
さらにHSPは発達障害よりもずっと知名度が低い。それらを併発しているとなってしまえば、まともに自分のことを説明できる人はどれほどいるんだろうか?
そんな人たちの中で、なんとか自分の特徴に折り合いをつけて社会で仕事をしたいと思っている人にとって、この記事がその一助になればいいと思う。
今まで何を頑張ればよいかわからない、話しても全くわかってもらえない。
でも「この特徴とこの特徴を持っているから、組み合わせるとこんなふうになるんだ」という理屈さえわかっていれば、情報同士を組み合わせて自分の言葉で自分を説明することができるようになる。
それは自信になる。一つでも自信を持てたなら、人生は捨てたもんじゃなくなると思う。
自分に向き合うのに時間がかかるかもしれないし、余計なことを思い出してダメージを受けるから手を付けられない人もいるかもしれない。
だけど「彼を知り己を知れば、百戦危うからず」。
自分がわかる、というのは思った以上に自分を助けてくれるものだと思う。
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