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「族」物語 #2

 そして僕はある「族」に属することを決めて通い始めました。その「族」は僕の出てみたかったライブハウスを根城にしていました。その世界は音楽だけではありません。ファッション、車や二輪車等の移動手段、細部に到るまで様式美が存在していました。

 ある意味では自分を縛ることだったのかもしれませんが、魅了された世界に染まることにしました。僕が昔から聴いていた音楽が中心にある「族」でしたから抵抗は全くありませんでした。

 そこで生き残っていくというと大げさですが、とにかく「族」の一員として認められるように洋服を選び、そこで聴かれている音楽を聴き、踊り方をおぼえ、乗り物を手に入れ、毎週のようにクラブやライブハウスに出入りするようになりました。そして人に顔が知られていき、出たかったライブハウスの有名イベントにもバンドで出られるようになったのです。

 僕らはシーンと呼びますが、そこに通うことで身についた1番のことは何かと言うと、常に格好良い客でいることでした。

 バンドもDJも客も優劣がありませんでした。むしろ格好良い客が一番だった気がします。フロアに入ってくるだけで空気を変えてしまうようなシーンの顔と呼ばれる格好良い人がたくさんいました。

 格好良いシーンの一部でありたいと願いました。そして格好良い人間でありたい。そしてそれは今も僕の中で続いています。

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