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神社の顧客体験を氏神と崇敬ジャーニーマップ化してみた。

こんにちは。
学生時代に放送作家さんが集まる事務所でネタ集めのアルバイトをしていました、デジタルマーケティンググループのコンサルタント菱井(ひしい)です。
毎日大量に届く新聞や雑誌に片っ端から目を通し、各放送作家さんが担当するジャンルに分けてテレビ番組のネタになりそうなものをひたすらスクラップする経験は、私のネタ集めの礎になっています。
ありがたいことに今でも多様な業種業態の方からおもしろ話を聞けることが多い中で、以前に知り合いの神職さんから伺った定量ネタ紹介と、定性的アプローチから神社の顧客体験を私で勝手に考えてジャーニーマップをつくってみるという記事です。
コーヒータイムのお供にどうぞ。
※文中のペルソナやカスタマージャーニーマップはとても簡易な形式で作成しております、あしからず。


神社の数、神職の数

全国に神社はいくつあるか知ってますか?
私は神職さんに聞いて初めて知りましたが、実は全国に約8万社(※1)も神社はあるんです。コンビニの全国店舗数が約5万5,000店舗(※2)なので、神社はコンビニよりも多いんです。
ちょっと近くのコンビ…じゃなくって、いきつけの神社へなんてことが日常に起こりえる状態で、案外私たちの身近に神社は存在しています。
ここで気になったのは、神社はどこの都道府県に多いのか、少ないのか。トップ3とワースト3を抜粋しました。(※1)
1位:新潟(4,679)
2位:兵庫(3,860)
3位:福岡(3,410)

45位:宮崎(674)
46位:和歌山(449)
47位:沖縄(15)
1位は新潟、これは意外でした。少し調べてみると、明治時代に増えすぎた神社を減らすため合祀政策(神社の統廃合)を行ったのですが、新潟県はこれに消極的だったこともあり多くの神社が残ったことが要因の一つではと考えられています。
逆に最も神社が少ないのは沖縄。これは独自文化が育んだ信仰があるため圧倒的に他県より少ないのは想像できるのですが、ついで少ない和歌山は全国に約4,700あると言われる熊野神社の総本宮があるのに、神社が少ないのはなんでやろ?と。あくまで仮説ですが、総本宮があるからこそ周辺ではなく各地に散らばってできたんじゃないかなーと思います。
では、神職さんは何人ぐらいいるでしょう?
「神社の数だけ神職さんもいるんちゃう?」違うんです。神職の数は約1万5,000人(※3)。あれ、少ないやんって思いました。でもよく考えるとちょっと近くの神社って神職さんいるっけ?って思い出してたら、見当たらない。これも神職さんに聞いた話ですが「ほとんどの神職が複数の神社を兼務でやってるんですよー年末年始はもちろん、あんまり休みがないかもなぁ。」とのこと。さらに「一人で60社程を掛け持ちしてる、強者の神職もいるよ。」と。その方はあちこちで祈祷行脚してるそうな。すごっ。
数を知るだけで、神職さんの大変さを少し垣間見た気がします。次、神社へ行って神職さん見かけたら「お疲れさまです。」と一声かけようと思いました。
神社を定量的に紐解いた小ネタでした。
※1:文化庁 宗教年鑑令和4年版より
※2:日本フランチャイズチェーン協会 コンビニエンスストア統計調査より
※3:文化庁 宗教関連統計に関する資料集より

まずは、ペルソナ作成からスタート

定量的に神社を知ることができたので、次は定性的なアプローチで神社を深堀してみようと思います。
神社にとっての顧客は誰か。顧客という言葉を便宜上使いましたが、参拝者や氏子、崇敬者のことです。
まずそれらの人たちはどのような人がいるか、書き出してみます。

① 近くの神社へ散歩がてら立ち寄る人
② 地元神社のお祭りにきたついでに参拝する人
③ 初詣に家の近くの神社へ参拝する人
④ 旅行先で観光スポットの一つにあり遠方の神社へ参拝する人
⑤ 受験が近いので学問の神様にご祈祷する人
⑥ 良縁祈願をしたいので縁結びで有名な神社へ参拝する人  etc.

神社へ参拝する人と言っても、書き出してみるとさまざまなシーンがありますねー。
では、なにによって大別されるか。「生活圏の内か、外か」が軸になるんじゃないかと思いつきました。
それを基に上記を分けてみました。
①~③は生活圏内の神社へ参拝する人つまり、「氏神神社」の氏子及び氏子になりえる人です。氏神神社とは、居住地域や血縁を限定した氏神様をお祀りする神社のことです。
④~⑥は生活圏外の神社へ参拝する人つまり、「崇敬神社」の崇敬者及び崇敬者になりえる人です。崇敬神社とは、地縁、血縁に縛られず自由に推すことができる神社のことです。もちろん複数の推し神社があっても、氏神神社と崇敬神社どちらもあっても、なんら問題はないようです。
血縁は今回少し横に置いておいて、生活圏を軸にすると氏神神社か崇敬神社によって顧客行動も変わりそうですよね。
では、この2つのペルソナをつくってみます。

氏神神社ペルソナ:散歩が日課の自営業社長「しげお」

※写真はイメージです。

●基本属性
名前:辻木 茂夫(つじき しげお)
性別:男性
年齢:58歳
職業:自営業(地元密着型の会社で代表取締役社長)
居住エリア:郊外
●行動属性
趣味:ゴルフ、ボランティア活動。地域のお祭りにも率先して参加。
休日の過ごし方:朝早く起きて近所を散歩。地元の野球チームの監督として子どもたちを指導。試合に勝った日は全員でごはんを食べに行き、お会計は全てしげおが支払いする。
消費傾向:飲みに行くと奢ることが多い。地元愛が強く、地域貢献への消費は惜しまない。

崇敬神社ペルソナ:旅行と推し活が生きがい「くみこ」

※写真はイメージです。

●基本属性
名前:松本 久美子(まつもと くみこ)
性別:女性
年齢:43歳
職業:会社員(経理、ベテラン)
居住エリア:都市部
●行動属性
趣味:旅行。国内旅行だけじゃなく海外旅行も年1回は行く。推し活。アイドルグループの中でも推しメンがいて、全国ツアーは各地へ赴いて参加する。
休日の過ごし方:旅行の計画をサイトで検索しながら練ったり、平日に録画した推しメンの出ている番組や公式インスタをみながら応援。
消費傾向:主には推しのグッズ購入やコンサート、旅行での出費が多い。

こうやってペルソナにしてみると、同じ神社でも氏神と崇敬で顧客像が異なることが分かるのと、顧客像をより具体的に膨らませることでイメージがしやすくなったかなと思います。

氏神ジャーニーマップ、しげおの場合

カスタマージャーニーマップづくりに欠かせないペルソナができたので、いよいよ氏神、崇敬ジャーニーマップをつくってみます。
まずは氏神ジャーニーマップから、横軸になるステージ順にしげおの変化を見ていきましょう。
※ここからは、しげおやくみこを擬猫化して、顧客心理のイメージ写真を差し込んでいます。

1. 認知
〇顧客行動
家族や近隣住民から近くの神社の話を聞く。
近所を散歩していて、神社を見つける。
〇顧客心理
お、近くにこんな神社があったんや。

2. 興味関心・参拝
〇顧客行動
気になり立ち寄ってみる。
境内に入り、参拝する。
〇顧客心理
近いし神社へちょっと行ってみようかなーせっかくやし、参拝していこう。

3. 継続参拝
〇顧客行動
再度参拝する。
神社のお祭りに参加する。
〇顧客心理
神社ってめっちゃ身近にあるやん。また行こう。神社のお祭り楽しそうやし行ってみよ。

4. 愛着
〇顧客行動
神社へのお詣りが日課になる。
神社のお祭りの御神輿を担ぐ。
奉賛金を納める。
〇顧客心理
いつのまにか神社へ行くのが日課になっちゃった。神社の修繕費用に少しでも貢献できるかな。

しげおは地元が大好きで、神社の存在も幼い頃には知っていたんじゃないかなと想像できます。
最終ステージはやはり「愛着」。地元愛も神社愛も深い、しげおでした。
しげおのジャーニーマップはこちら。

崇敬ジャーニーマップ、くみこの場合

氏神ジャーニーマップしげお版ができたので、お次は崇敬ジャーニーマップくみこ版を同じくステージ順に見ていきます。

1. 興味関心・情報収集
〇顧客行動
旅行先の観光スポットを調べる。
合格祈願で有名な神社を調べる。
神社の情報収集をする。
神社を見つける。
SNSの投稿で神社の存在を知る。
旅程に神社参拝を組み込む。
〇顧客心理
旅行先の近くに神社がある!せっかくだし行こうかな。こんな神社があるの知らなかった。

2. 参拝
〇顧客行動
神社へ参拝する。
おみくじを引く。
お守りを買う。
写真を撮る。
絵馬を書く。
ご祈祷する。
〇顧客心理
素敵な神社!非日常感も味わえてえぇなー。おみくじやかわいいお守りや絵馬もあるし、たのしー。気が付いたらめっちゃ写真撮ってた。

3. 共有
〇顧客行動
お守りを家族や友人へ渡す。
職場で旅行のみやげ話をする。
神社の写真をSNSへ投稿する。
〇顧客心理
お守り渡そうーっと。神社の雰囲気もよかったし、友だちにも話しよ。

4. 崇敬
〇顧客行動
お気に入りの神社へ再度参拝。
崇敬会に入会し神社を応援する。
〇顧客心理
推し神社確定!何回でも行きたい。崇敬会ってのがあるんかー遠くにいても神社を応援できるっていいやん。入会しよ!

くみこのステージで特徴的なのは「共有」と「崇敬」があること。非日常感を味わえる旅行先で行った神社がよかったら、直接会話でもSNSでも誰かに発信したくなりますもんね。そして崇敬は、推し神社活動の最終ステージだと思います。
くみこのジャーニーマップはこちら。

おわりに、全国の神職さんへ

神社の定量ネタを皮切りに、仮想のペルソナづくりから、氏神と崇敬ジャーニーマップまで一連の流れを書いてみました。
ペルソナやカスタマージャーニーマップは、顧客を知る・考えるためマーケティング活動でよく使われる手法の一つです。神社がマーケティング?と思われるかもしれませんが、神社に来られる方がどのような方なのか、どんな人がターゲットになるのか、をある種戦略的に考えることはこれからもっと必要になってくると思います。
そして、それは神社によっても異なります。
これを読んでいただいて少し気になったり、ちょっと話を聞いてみたくなった神職さんがいらっしゃれば、下記ボタンからお気軽にメッセージください。もちろん、神職さんじゃなくても、一言感想いただけるとめっちゃ嬉しいです。
おもしろネタの引き出しもっと聞きたい、というお声が聞こえてきますが、それはまた別のお話。

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