映画『TENET』で「運命」を考える

まだTENETをご覧になっていない方。
ネタバレ嫌いな方はこのまま記事を閉じていただいて結構です・・・。
この映画をネタバレなしで語ることは難しすぎるので、ネタバレ全開で進めさせていただきます。




とは言え、既に多くのサイトや動画でTENETの解説・考察がされているので、私は別にこれがTENETの答えです!みたいなことは言いません。
やっぱり映画は、観る人それぞれが違った感想を持つからこそ面白いんだと思いますしね。

今回はTENETを受けて「運命」についてどう考えるか?という話をしようかなと思います。


(以下ネタバレ)


はじめに映画の順序で語られる主人公の一連の流れを示しておきます。

キエフでのオペラ劇場任務

研究施設にて逆行弾の体験

ムンバイでニールと初対面

オスロ空港任務

タリンでのカーチェイス
↓↑
タリンでのカーチェイス(逆行)
↓↑
オスロ空港任務(逆行)
↓↑
マグネヴァイキング号で大部隊とともに戦闘準備(逆行)

スタルスク12



TENETを観終わり、色々と考えた結果、私はどうしても無限ループの話に思えてなりません。
順行世界では、原因→結果の順番で物事は成り立ちますが(当たり前)、
逆行世界では、結果→原因の順番が正しい流れです。

つまり・・・
結局のところTENETは、壮大なニワトリとタマゴの話であるのではないかということです。

タマゴがあるからニワトリが生まれる。
ニワトリがいるからタマゴが生まれる。

これに答えを出せる人がいるならば今すぐZOOMチャットしましょう!というところなんですが、これをTENETに置き換えると、名もなき男とニールの関係性になると思うのです。


結論から述べてしまえば、黒幕(組織TENETの創造主)である名もなき男。
彼の命を受け、ニールは時間を逆行し、まだ未来を知らぬ名もなき男の救出と、それに伴うアルゴリズムの奪還に尽力します。

そう、ニールがいるから名もなき男が存在する。
名もなき男がいるからニールが存在する。

どちらが先なのか分かりません。
そりゃ難解作品と言われても仕方ありませんって。

おそらく2回目以降の鑑賞となる場合、ニールの逆行視点ばかりを追ってしまうのではないかと思います。

言ってしまえば、劇中のニールは、未来人です。(んなこと分かってるよ)
我々の知らぬ何年も先の未来で、名もなき男に出会ったニールは、同じ時間をかけ何十年も時間を逆行し、オペラ劇場のあのタイミングまで遡ってきたことになります。そして逆行弾で名もなき男を助け・・・と映画の本編に繋がるわけですが。

となると、ニールの時間逆行を通じた最初の任務は、スタルスク12でのあの死によって幕開けすることとなります。

TENETは悲劇か!?と思ってしまいますね。
ニールは名もなき男を助けられるのは自分だけだ、という運命に従い、再び順行した先の未来で死ぬことを分かっていながら、名もなき男を守り続けるのです。

それもそのはず、ラストで名もなき男が黒幕だと発言するその直前、プリヤを殺害することで、母キャットと当本人マックスことニールを守ることになるのですから。

え?キャットの息子マックス=ニールではないって?
んなわけないだろ!あれは絶対のちのニールだろ!(暴論)

ここでは、マックス=ニール説の説明は省きますが、どう考えてもその方が辻褄が合うし、なんと言ってもドラマチックです。
名もなき男が、美人だという以外にキャットを助ける明確な理由にもなりますしね。


さて、話を戻して名もなき男とニールの運命についてです。

ニワトリとタマゴの話で分かる通り、この問題に対して、こっちが原因でこっちが結果なんだ!って結論付けるのは野暮というものです。
ただそこに存在する「運命」だった、という他ありません。

劇中では、プリヤがクレジットカードや電子メールの例を使って話していましたが、決してフィクションの話ではなく、現実世界においても、どっちがどっちと簡単には言い表せない「運命」的な出来事は数多く起こっているのです。

かつてカルヴァンは予定説を唱えましたが、我々の人生が原因から導かれた結果なのか、結果によって導かれた原因なのかは、本当に回転ドアが開発されない限り、それを客観的に示すことは不可能であるように思えます。

その上で、私は問いたい。
このような「運命」が本当に存在するとして、あなたはそれを喜劇的と捉えるか、悲劇的と捉えるか。

なんだか、ニューシネマパラダイスやフォレストガンプ 、ジョーカーやきみに読む物語のような映画に対しても同じことが言えそうですね(笑)


本作でも、クリストファー・ノーランお得意の観客に委ねる映像術が炸裂しており、その代表とも言えるものが、先ほど暴論で押し通したマックス=ニール説ですが・・・
ノーラン史上最難解作品!ということを読み取るならば、それは単に作品の中における設定をどう捉えるか?だけではなく、我々の現実世界にまでその疑問を投げかけてきているところにあるのではないかと思ってしまいます。

そして、その「運命」をある種喜劇的と捉え、全うすると決意した2人の無限ループの人生こそがTENETなのではないかと結論づけたい私です。
涙なしでは観れない作品になりそうですね??(無理やり)
スタルスク12での10分間の挟撃作戦は、2人の「運命」が定まる「始まり」であり、「終わり」です。
TEN(10分) + N(and/ニール) + TEN(10分) = TENET
こんな風にも読み取れる、全く不思議な作品です。

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