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『ことばの危機 大学入試改革・教育政策を問う』③

 『ことばの危機 大学入試改革・教育政策を問う』②の続きです。①と②は以下からご覧下さい。

① https://note.com/syamamoto/n/n2afd39b09401
② https://note.com/syamamoto/n/n902217b1d8f8

 では,続きです。②では「コミュニケーション」は成立するかと提起した終わりました。本書には,「コミュニケーションが成り立たない場」(p.77)という章があり,興味深い内容が語られていました。もちろんここでいうコミュニケーションが成り立たない場とは,「文学的教養がないとか,漢字を知らないとか,あるいは英語ができないといったことではありません」(p.77)と述べています。簡単にまとめると次のようなことが書かれています。

 社会では「コミュニケーションを断ち切る場が横行している」。責任を負う立場の人たちが「○○の件は控えさせていただく」とか「○○には適切に対処しています」などというように。そんな大人たちがコミュニケーションの大事さを教えるのは難しいのではないか。また,失言などもコミュニケーション能力の欠如である。なぜなら,相手のことを考えてものをいうことがコミュニケーションの前提だからである。

 「相手のことを考えてものをいうことがコミュニケーションの前提」というのは非常に大切だと思います。他者性を意識していないとSNS上で問題が起きます。他者性とは文脈や状況をとらえることです。「ことばをツールとしてのみとらえる」と「実用vs文学」のような対立項となり,「ことば」は使えるけど「コミュニケーション」は破綻するというようなパラドックスが起きる可能性があるかもしれません。

 詳しくは本書をお読みください。考える素材がいろいろ見えてくる本です。

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