なんだかんだ、この人生でよかったと言うのだと思う。
思えば私の人生はいつだって「突然」の連続だった。
小学生のとき勉強なんて好きではなかったのに中学受験をすると決めた。
受験して入った私立中学で本来受験しなくて済むのに高校受験をすると決めた。
受験勉強4ヶ月で公立高に受かった。その高校で生徒会に入ると決めた。高校3年の6月に文系三科目に絞って今のまま勉強すればずっと憧れていた早稲田に受かるよと言われたにも関わらず私立文系への道をあっさり捨てて国公立を目指した。センターに失敗して前期で滑り止めの私大に受かるも後期で今の大学を受験することに決めて合格した。
人間関係や言葉選びについて学びたくて心理学部を選んだのに脳や感覚について学ぶ認知心理学系のコースやゼミに入った。
就活を終えた大学4回生の夏、パリ留学に行くことを決めた。
自分の中では燻り続けているモヤモヤや想いがあって、そこから脱するためにあるいはそれを実現するためにはどうすればいいかをそれなりに考えた結果、これらの道を選んできたつもりだけれど、決断する前の自分や家族、友人、恋人から見れば「想像していなかった未来」だっただろう。
小学生の私は、女優になりたかった。会社員のような”誰でもできる、同じことの繰り返し”なんて、人生は一度きりなのに自分としての人生しか生きられない”普通の人生”なんておもしろくないと思っていた。
中高で芸能界なんて無理だと気付いてからは、本が好きだから編集者になろう、芸能人になる側は無理でも支える側ならとテレビ局や広告代理店の仕事に就こうと思ったりもした。
大学時代には、飲み会文化や自分の意見が反映されないことが嫌で外資を視野に入れていた時期もあった。
少しずつ普通の幸せに納得していった私は現在、日系大手のIT企業に就職し、営業コンサルとして生成AIやBPSといった領域の仕事をしている。小学生と言わず高校生の自分が聞いても「え、嘘ダァ」と笑い転げてもおかしくないくらい、想像だにしていなかった道だ。
もしもITに興味を持っていなければ、私は出版や広告といった「表現」を扱う仕事に就いていただろう。あるいはデベロッパで空間の企画をしていたかもしれないとも思う。
大学のとき、ソードアートオンライン(SAO)というアニメを見て、VRが「普通に生きていたら出会えたなった人や世界との出会いを創造できる」ことを目の当たりにして、この道に進むことを決めた。これまでの人生と180°違う世界を志す方へと舵を切ったのは自分のビジョンにピタッとハマって納得感があったから。最終的には、「表現」は仕事にしなくても自分で勝手にやる一方で、「IT」は仕事にして強制的にその世界に浸れるようにしないと自力では理解できずに挫折するだろうと思い、堂々とITの道を選んだ。だけどそのすべての起点であるSAOを見たきっかけは、正反対でド理系の彼が見ている世界を理解したいという純粋な気持ちからだった。
とはいえ、数学や理科に興味がなく、何度挑戦してもプログラミングではエラーを連発する私が IT を選んだこと。ITを選んだくせに「開発は嫌です」と訴え続け、配属ガチャが回る弊社で念願叶って営業コンサル職として新卒から働けたこと。
「変だよ」「変わってるよ」と言われて、人が好きなのに、なぜか人とうまくやれなくて、協調性に自信のなかった自分が、それらが必要とされるカラーの強い日系大手に行ったこと。そこで、同期と仲良くなり、仕事自体も楽しめていること。
すべてが奇跡だと思う。
だけどたしかに繋がっている。
納得のいく環境を追い求めて小中高大と環境を変えてきた先で、やっとこの人たちと一緒にやっていきたいと思える、本当に”合う”環境に来られた。
そうしたら、”好きじゃないだろうな””疲れてしまうだろうな”と思っていた飲み会や同期との集まりが”好き””楽しい”と思えるようになった。入社前は「残業なんて非効率なだけだ」「残業するくらいなら定時で上がって趣味や副業に充てる」と思っていたけれど、実は自分が「残業してでも納得いくまで仕事をしたいタイプ」で、だけどそれは営業コンサルという、自分がやりたいと思える、自分に合う仕事だからなのだということも知った。
チームの先輩全員がそれぞれに素晴らしい面を持っているような優秀なチームにいると、「この人みたいになりたい、っていうようなロールモデルを見つけましょう」と言われても、絶対的にこの人みたいになりたい、ではなくて、「この面ではこの人のような立ち回りができるように」と、いいとこ取りのような将来像が出来上がることも知った。例えば「立場としては現場も上位層も巻き込みながらこれまでのツテもフル活用して自分のやりたいビジネスを推進できる課長のようになりたい」「チームビルディングとしては、誰よりも早くリアクションをくれて、細やかなところまで調整ができる心理的安全性の塊のような課長代理のようになりたい」「常に相手の目線に立って話せて、関係各所の反応や相手の知りたいことを適宜取り込み織り交ぜながら製品の魅力を伝えて、お客様や社内の他部署の人から信頼されるようなトレーナーのようになりたい」といった感じで。
きっとこれからも、私の人生は転がり続けるだろう。時には希望通りの方向に、時には想像しなかった方向に。
それでも最後には私はこの人生にYESと言うのだろうと思うし、言えるようにこれからも日々全力で生きていきたい。