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コトバツムギ

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気になる言葉、魅力的な言葉を集める共同マガジン「コトバツムギ」。ライティングスクールで一緒に学んだスミヨ。と、もりやみほが運営中です。 月・木:もりやみほ 火・金:スミヨ。
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2020年9月の記事一覧

言葉の由来から歴史を感じる「上梓する」

こうやってモノを書いているというのに、そもそも"モノを書く"といった言葉の表現に疎いことを知った。 僭越ながら、私の経験を記した本を上梓しました。 そんな連絡メールを読んで、また一つ、脳に衝撃をいただいた。 "本を出す"という熟語には、「刊行」や「発刊」などの言葉を良く耳にするが、そもそもの由来は"木版を掘る"というとことから「刊」という字が使われるらしい。 中国では、木版に梓を使うことがあったということで、「上梓」という言葉もまた"本を出す"という意味で使われるらしい

自虐の念を含む「忸怩たる思い」

先日、とある人からこっぴどく叱られた。 この年齢になってこっぴどく叱られることなんて珍しいこと。 ましてや「叱る」という行動には大きなエネルギーが必要になる。 よく父が「言われているうちが花だ」と生前に言っていたのも今となっては首を深く縦に振って、聞いていただろう。 叱られた原因は私自身にあり、そんな私を表現するのに適切な言葉を見つけました。 当時の私のことを思い出すと、忸怩たる思いでいっぱいだ 「自分の言動を恥じる」ことで、悔しく情けないという気持ちが含まれる。 ま

「自分には価値がない」と見放すことの弊害

「自分は価値がない」と思ってしまう、その“価値”とはいったい何なのだろうか。 仕事で結果が残せない。周りの会話についていけない。誰からも必要とされていない。だから、自分には価値がない――。価値がない自分に向き合うのが怖くて、必死に上を目指し、誰かの役に立つことで、やっと自分の居場所が見つけられる。そんな、自分には価値がないことを必死で隠そうとしていた私を、そっと撫でてくれる言葉があった。  「自分の価値を忘れてる人はおっても、価値がない人はおらへんのやで」 水野敬也さん

精神論を含む「居住まいを正して」

ようやく、心から言葉集めに注力しようと思い始めた。 それは、仕事をしていて、圧倒的な語彙力の少なさにげんなりした自分がいたからだ。 それは、英単語の勉強をしていて、日本語の意味が曖昧な単語があることに気付いたからだ。 そうして、こんな知的な言葉と出会いました。 居住まいを正して 「姿勢を正す」という意味に加えて、「気持ちを引き締めて、清々しい心でいる」という精神的な意味も含むという。 おかげでこの文章を書いている数分間、「居住まいを正して」いる自分がおりましたとさ。

声に出して読んでみた、静けさ漂うこの文章

どうしてもわからないので書いてみた。同じ語尾が続いて単調になってしまうはずなのに、世界観さえ仕上がっているこの文章。一体何が違うのだろうか。 ここに書いてあるエッセイは、同じような理由で以前も取り上げた。「た」で終わる文章が連続で続くのに、とても心地よく読めてしまうのだ。 今回は書いてみて、そして声に出して読み上げてみた。静けさが漂う文章。読んでいると、「~た」にも、異なる種類がおかれていることが分かった。 “~ていた” “~ていた” “~あった” “~思えた” “~感

付すの由来が気になる「不問に付す」

どこで聞いたかは忘れてしまったが、この言葉を聞いてすぐにスマホを取り出してメモした。 不問に付す 仕事場や、何か過ちを犯した相手に「今回は不問に付すよ」とサラリと言えたら、なんてカッコいいのだろう。 そもそも、「付す」という言葉に、「そのような扱いにする」なんて意味があったことすら知らなかった。 語源や由来を調べてみたけれど、良さそうなものはヒットせず… ちょっとモヤモヤしつつも、是非使っていきたい良い言葉だ。 気になる言葉、魅力的な言葉を集める共同マガジン「コトバ

脳内にもたらす言葉のメロディ

ここちよく読んでしまう文章を目指して、最近はリズムのことばかり話しているような気がする。 テンポよく読める文章に、いくつかパターンがあることもわかった。とくに4・4・5は、文章でも使いやすいのか、特にここちよく私の耳に入るのかわからないけれど、前回書いた時からまた増えたのでここにまとめておく。 気になる あの子の おしゃれ事情 コトバツムギでもよく取り上げる「Toss!」の見出し。今回も4・4・5だった。女性誌の雑誌の見出しにもいいリズムなのかも? それとはまた別の話

なかなか聞かない「秋波を送る」

先日、上司が自分の奥さんについてこう語った。 「俺の嫁は、飲み会では思わせぶりな態度をとるのが上手かった。それも故意的ではなく。」 もっと、リアリティのある表現をすると「お触りが上手」というところだが、思わせぶりな態度には色々な表現がある。 中でも「秋波を送る」なんて表現は、私は今まで聞いた試しがなかった。 いや、聞いたことはあっても、私のフィルターには引っかからなかったのかもしれない。 色目を使う、媚を売る、秋波を送る… それぞれ表現や印象は違えど、同じような意味を

一生幸せでいるための「悩みのデザイン」

日ごろ悩みは尽きないもので。 仕事をしても、友達と会っても、たとえ一人でいるときでも、その時そのタイミングにあった悩みを引っ張り出しては考えている。 日々悩みにがっちり肩を組まれ、決してほどけない二人三脚でこれまで過ごしてきた。noteを書くことで少しだけ意味付けができるようになってきたものの、やっぱり悩みはないほうがいい。そんなふうに思っていた矢先に出合った言葉が、「悩みのデザイン」だ。 “わたしたち夫婦は、二人でも仕事をしているので幸せに思われることも多いが、実際は

最初は戸惑う「君、たっぱがあるよね」

先日、お客さん先に上司と共に挨拶に行った時のこと。 一緒に行った上司は背が高く、体つきもしっかりしている。 そんな上司を見て、お客さんが言った。 「君、たっぱがあるよね。電話会議だとわからないんだけどさ」 「たっぱがある」とは、主に男性に対して使うことが多い印象だ。「背が高い」の言い換えだ。 社会人になってから、聞くようになった表現だが、この表現を女性が使ったり、女性に向けて言う人を聞いたことがない。 由来に関係するのかしら。 これは私の想像ではあるが、上司とお客さんは

4・4・5がたまらない「お皿と ごはんの いい関係」

「押さない、駆けない、しゃべらない」 「やっててよかった公文式」 「のび太の理由はもしかして」 どれも耳に心地よいのは、聞きなれているだけの理由ではなさそうだ。 4・4・5のリズムが作る文章は、テンポの良さをどこか感じる。4拍子でもリズムに乗って言えるからなのか、それとも生まれ持って心地よいと感じてしまうリズムなのか。リズムに気を付けて文章を見ていると、見出しやタイトルによく使われていることがわかる。 今日送られてきたLINE MOOKの「Toss!」でも、馴染みの

陸では人魚は活躍できない「人魚の眠る家」

少し前に、ぞっとする作品を観た。 もし、私が同じ立場だったら、どんな選択をするのだろうかと考えさせられた。 テーマである我が子の『脳死』を、親という立場だったらどう捉えるのか。 途中から母親役を演じた篠原涼子の考えや行動に、不快感なのか戸惑いを感じている自分に気付いた。 それでも、自分が同じ立場だったら登場する母親と同じ感情を抱くかもしれない。 女は子を授かると、自分の命や人生よりも子供の命や人生を優先するかもしれない。 だから、成人した子供に対して子離れできない親がいた

受け止める強さと、信じること

今週、こんなnoteを書いた。 事実に対する感情はすべて、感じる私たちにかかっている。 まさにこの観点で、新しいものの見方を提供してくれたのが、芦田愛菜さんの登壇だったなと思う。 「裏切られたとか期待していたとか言うけど、その人が裏切ったわけではなく、その人の見えなかった部分が見えただけ。見えなかった部分が見えたときに、それもその人なんだと受け止められることができる、揺るがない自分がいることが信じることと思いました」 (「芦田愛菜、“信じること”を熱弁 達観ぶりに永瀬正

たいていのものは自分で創りだした魔物「自分で創った化け物と戦うんじゃない」

自粛生活中、初めて『3月のライオン』の実写映画を観た。 神木隆之介や有村架純はもとより、ダントツで清原果耶の演技に見入った。 そんなストーリーの後半で、主人公はこんなアドバイスをもらう。 自分で創った化け物と戦うんじゃない 切り取って書くと、ストーリーの本筋がわからなくなってしまうが、敢えて切り取って解釈したいと思う。 「自分で創った化け物」という表現がとても素敵で、そして秀逸だと思う。 思考というスキルを持った世の人類は、自分で創りだした化け物と日々戦っているように