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画期的な紙おむつの発明を開発。でも、良い商品が売れるとは限らない


ネピアが子供用紙おむつから撤退

王子製紙傘下の王子ネピアが子供用紙おむつの国内販売から撤退する。

子ども用紙おむつ撤退 少子高齢化、海外注力へ―王子ネピア

これからは、ますます増えていくであろう高齢者向けに、そしてまだまだ人口増が望める東南アジア向けに注力していくようだ。

ベビーブームは今や昔。日本は少子高齢化。これも時代の流れで致し方ないのかもしれない。

でも、どこか寂しさを感じる。実は元勤務先の特許事務所で、ネピアの紙おむつの特許権利化に携わっていたからだ。

ローテク製品の紙おむつにも技術者の創意工夫がある

紙おむつは典型的なローテク製品だ。

使っている材料は、尿を吸収する綿や高分子吸収材、それを包む不織布や樹脂フィルム、身体にフィットさせるためのゴム、そしてこれらを貼り合わせる接着剤。そのくらい。

が、しかし…。

  • 漏れてはいけない。でも、締め付けすぎて窮屈でもいけない

  • 漏れてはいけない。でも、中が蒸れてはいけない

あちらを立てればこちらが立たず…。完全に二律背反の無理ゲーだ。
それを技術者の知恵と創意工夫で、絶妙のバランスの上で作り上げたのが、紙おむつという製品だ。

画期的な発明!尿便分離型紙おむつ「ハイキャッチ」

紙おむつの業界は群雄割拠だ。メリーズ、パンパース、ムーニー、グーン…。ネピアはいつも2ndランナー、3rdランナーにすら置いていかれていた。

そんな時、画期的な発明が完成した。それが、尿便分離型紙おむつ「ハイキャッチ」だ。

「ハイキャッチ」の特徴はこんな感じだ。

  • おむつの両サイドにある立体ギャザーの間を架け渡すように不織布のシート(SCS:スキンコンタクトシート)を貼る

  • SCSの前後に2つの穴を開ける

  • 2つの穴の間を前後に仕切るように不織布シートで壁を作る

これで、おむつの中に、前後2つの部屋(空間)ができる。その各々の部屋に尿と便を別々に落とすことができる。
尿と便の中の腸内酵素が混ざるとアンモニアが発生し、かぶれの原因になる。尿と便を分ければそういうことは起きない。SCSがあることで、着用者の肌に便が付着しにくくもなる。

斬新で今までにない発想からできあがった、高機能の紙おむつ。技術者の努力、試行錯誤のたまものだった。
僕はこの「ハイキャッチ」の基本特許の権利化に携わることになった。そして、その基本発明についてなんとか特許権を取ることができた。

特許3919023「使い捨ておむつ」
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-3919023/15/ja

特許第3919023号 図7(引用元:j-platpat)

2007年のグッドデザイン賞にも選ばれた。

2007グッドデザイン賞|nepia GENKI! ハイキャッチ

ただ、ドラッグストアの棚に、この「ハイキャッチ」が溢れたかというと、そうはならなかった。紙おむつは消耗品。いかに高機能でも、値段が高ければ買ってもらえないということなんだろう。

ただ、同じネピアの製品、同じ消耗品、同じローテク製品でも、「鼻セレブ」は売れている。普通のティシュより割高にも関わらずだ。これからの季節は大活躍。花粉症の人には必需品。動物の赤ちゃんの鼻をモチーフにした可愛らしいパッケージとも相まって、今ではすっかり市民権を得ている。

何が当たるか、どんな商品なら市場に受け入れられるかはわからない。だから、技術者の努力が必ず報われるとは言えない。

それでも、技術者の努力が少しでも日の目を見るように…。微力ではあるけれども、役に立ちたい。そんな思いで弁理士・特許の仕事をしている。

お知らせ

クロスリンク特許事務所はローテク製品の特許取得を得意としています。

ローテクの「ロー」は、決して「技術レベルが低い」という意味ではありません。僕は「コンピュータソフト」や「インターネット」への依存度が低い技術、もっぱらハードウェアで表現される技術だと解釈しています。

そのような技術でも工夫と知恵で、今までにない技術を作り上げれば特許取得は可能です。
これからローテクの特許取得に取り組みたい方、クロスリンク特許事務所ではそのような方からのご相談をお待ちしています。