詩)夏の片鱗
窓を開けて寝ないと暑苦しくなって、夏がいつの間にか私のおでこまで忍び寄っていた事に驚いた
渦を巻くような変わりやすい梅雨の天気は雨の反芻ばかりで神経が休まらず、新しい傘を買って何とか自分を宥めすかしているというのに
夏至の日は夏至だ、と皆騒いでいて、自分の生活にまるで関係のなくなった夏至を、遥か昔の和歌を摘み取るようにそっとなぞった
ふと季節の証人になりたくなった
あなたの前で浴衣が着たい
マスクのせいで全く情緒がなくなってしまったけれども、
拳ひとつ分開ける衿元の美しさをあなたに見せたい
梅雨の合間の今日、忘れてしまった記憶を取り出すように着付の復習をしようか
夜会巻きに揺れるようピアスを買いにゆこうか
もうじき夏が咲く
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