きっと素敵な私の未来
静かな図書館の片隅で、ウサギは絵本の書架をじっと見つめていた。色とりどりの背表紙が、まるで彼女を誘うかのように優しく囁きかけてくる。棚いっぱいに詰まった絵本は、宝石箱の中で煌めく宝石のように、彼女の心を掴んで離さなかった。
「どうして、こんなに心を惹きつけるお話を思いつけるのかしら」
そんな彼女のそばをカメが通りがかった。
「それなら、絵本作家さんに聞くのが一番だね」と、カメは彼女の手を取った。
二人は横浜に辿り着くと、ヨシタケシンスケの世界に足を踏み入れた。
「見て！凄い数ね。これが全てアイディアのメモなのね」ウサギは驚きの声を上げた。
「お話を作るためには、日頃から気づいたことをメモすることが大切なんだね」と、カメが静かに言った。
「一枚一枚に、物語のヒントが隠されたイラストと、ユーモアたっぷりのセリフが書いてあるのね」ウサギは目を見張った。
「インスピレーションを感じる面白い物も、いろいろと集めているわ。こうした旺盛な好奇心がアイディアの源なのね」
「ここには、僕たちを楽しませる仕掛けも、ちゃんと隠されているんだよ」カメは優しい声で彼女に語りかけた。
「天国と地獄なんて絵本の世界みたい」
ウサギは元気よく駆け寄ると、地獄のトゲトゲした椅子におそるおそる腰かけてみた。
「うん、地獄って、こういう感じかもしれないわね」お尻にトゲがチクリと刺さるのを感じながら、彼女は楽しそうに笑った。
「ここではリンゴを大人の口に放り込むと、セリフが変わるのね。『大人はいいの！』って、私もよく言われたっけ」ウサギは懐かしそうに微笑んだ。
「見て！あなたの未来はこれかもしれないって書いてある。 私も一枚引いてみるわ」
「ちょっと待って！ 私の未来って、こういうことなの？」ウサギは驚いた表情で、カメの方に振り返った。