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キャラメルで天下無敵

すっかり秋めいてきたその日、ウサギは図書館の674.35の書架の前で立ち止まり、整然と並んだ本の背表紙をじっと見つめていた。

「広告とかキャッチコピーって、意外と面白いものかもしれないわね…」そう、心の中でつぶやきながら、その一冊を手に取った。

背後に気配を感じて振り向くと、通りかかったカメと視線が合った。「広告のことなら、面白いところがあるよ」カメは微笑みながら、そっとウサギの手を取った。

二人は図書館を出て、電車に揺られ、汐留に降り立った。歩き始めるウサギの胸には、何か新しいものと出会えるかもしれないという淡い期待が、ひっそりと広がっていた。

アドミュージアム東京

「この、『森永ミルクキャラメルで天下無敵』って、とても印象的だわ」ウサギは古い新聞広告を指さしながら、くすっと微笑んだ。

「土俵には手をついたことがない太刀山が、この広告では手をついたって、当時、かなり話題になったみたいだよ」カメはまるで物語を語るように、キャプションを読みあげた。

1918年  最強横綱「太刀山」の手形広告

「これは何?」ウサギはふとポスターを指さした。「巨大なマンモスと、それを追いかけて歓声を上げている原始人たち…カップヌードルの広告だね。これも当時、結構話題になったみたいだよ」

1992年  カップヌードルの広告「hungry?」

「今までにない発想で、見る人に強烈な印象を残す。それが広告の醍醐味なんだろうね」カメはそう言いながら、ふと周りをゆっくり見渡した。

「なるほど、アイディア勝負ってことね。食べ物に関してなら、私、いくらでもアイディアが湧いてきそうだわ」ウサギはいたずらっぽく笑って、軽くカメにウィンクした。

ウサギはまた何かを見つけると、ぱっと目を輝かせてその場所へ駆け寄った。「どこか見覚えがあると思ったら…太陽の塔ね!」

「もし太陽の塔にそのままハグされたら、ほとんどの人は骨が折れちゃうわね」ウサギはくすっと笑った。

「こういう発想、私、好きだわ。こうして眺めると広告って立派な芸術なのね」ウサギはふっと微笑み、そっと目を閉じた。すると、頭の中に太陽の塔とハグしている自分が浮かんできて、その滑稽さに思わず小さく肩を震わせた。

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