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モンテロッソのピンクの壁

暖かさがやってくると、人はふと旅をしたくなる。旅立つのにちゃんとした理由など要らない。でも何処へ行く? 猫のハスカップにはなんの迷いもなかった。「モンテロッソへいかなくちゃ」

「不思議な旅をする本が読みたいわ」と願ったのはウサギだった。そんな彼女にカメが薦めたのは、江國香織さんの「モンテロッソのピンクの壁」という絵本。その表紙には、まるで「白ワインで蒸した鮭みたいな」ピンクの壁が大きく描かれている。

「猫ちゃんの旅なら、もっと可愛いのかと思ったわ。でも、ハスカップの目指すモンテロッソは遥か彼方の場所。気球に乗ったり、ヒッチハイクしたり、しかも何処にあるのかわからなのに行こうとするなんて、最初はとても心配だったの。でもしっかり行き着くのだから、運がいいとしか言い様がないわね」

ウサギはもう一度絵本を開いてみた。カラフルな絵が直ぐに目に飛び込んでくる。荒井良二さん絵は、不思議な旅の魅力を、より一層引き立てている。「こんな旅なら、私もしてみたい」

「それにしても…。『もし途中でライオンに出会ってしまったら、彼らの魅力に抵抗できず、どうしたって仲間になってしまう。そうなったら、モンテロッソにはいかれない』って、そんな心配をするなんて、いったいどういう猫ちゃんなの」ウサギは呆れたフリをしてみる。

ウサギはそっと絵本を閉じ、目を閉じる。ハスカップの冒険を、まるで自分自身の夢のように見るために。

※モンテロッソのピンクの壁
江國香織・作/荒井良二・絵/ほるぷ出版

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