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【旅話】世界渡りの楽しみ方

(前書き)
24時間歩行旅シリーズ三作目にして、漸く歩き始める甘めのコーヒー一行。
時既に17:30。夜が侵食し始めている。

しまなみ海道は、今治と尾道の間にある島を結んで出来ている。島と島の間には必ず橋があるので、しまなみ海道を徒歩で踏破するなら避けて通れない道だ。

さて僕らが通った島は全部で7つある。渡った橋も8つだ。橋の長さは一定でなく、300mくらいで渡り切れる橋もあれば、3000m歩いてもまだ終わらない橋もある。僕らは大体15分/㌔で歩いていたので、約1時間かけて漸く渡り切れた橋もあった。

しかも厄介なことに、どの橋を渡るにも急傾斜の山道を登り下りする必要があり、毎回かなりの疲労が蓄積される。橋を渡り切るだけでもかなりのエネルギーを要するのである。


そういうわけで、橋は決して楽なハードルでは無かった。連絡橋を徒歩で渡るという経験は非常に貴重ではあったが、それを差し引いても橋歩きはしんどいものだった。


だが、意外にも僕らは、(苦戦しながらではあるが)橋越えを満喫することが出来た。読んでいる人の中には「それはお前らがドМだからでは?」と心無い指摘をしてくる人もいるかもしれない。たぶんそれもあると思うが、純粋に橋歩きを楽しめたとのが大きいと思う。


以下で僕らが実践した「橋歩き」の楽しみ方を二つほど共有してみる。


橋の楽しみ方①

橋(はし)を走(はし)る


……下らない駄洒落だと思ってバカにしていてはいけない。「橋の走破」には人類が見落としていた極上の楽しさがある。

例えば、下の橋の写真を見てほしい。

どうだろう。身体が走りたくてうずうずしてきたのではないだろうか。

延々と続く自分だけのエンドレス・ロード(直線歩道)。左右には街灯という名のスポットライト(街灯)が立ち並び、世界最高峰のトップリーグに立っているかのような錯覚に陥ることだろう。

僕もこの橋の入り口に立ったとき、勝手に身体がon your markの態勢に入って焦ったのを覚えている。「嫌だ嫌だ、24時間歩き切るためにもここでは体力を温存しとかないといけないのに!」と思いながらも、走りたい本能に逆らえないのだ。

一度疼きだした身体は止まらず、身体は火照っていき、逆に頭は冷静になる。そして冷静になった頭は静かに決断するのだ。「そうだ……走ろう(冷静じゃなかった)」。


かくして僕らは「どん」の合図で走り出した。

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一分後、僕は早くも疲れる。

二分後、相方が苦し紛れに歌を歌い始める。
「ファイト、戦う君の歌を~♪」

三分後、僕らは道端で倒れた。

「そんなにすぐに疲れてしまうなんて、
 最近の若い子も随分衰えましたなあ!

 ふぉ~ふぉふぉふぉふぉ!」
ー喪黒福造風「わらぅせぇるすまん」


……まあ僕らの場合はだいぶ飛ばしたので、バテるのも仕方がなかったと思う。しかし夜という非日常感の中で、閉塞とした高架橋下に吹く強い風を感じながら快走するのはかなり気持ちいい。

ストレス諸とも全部ぶっ飛ばせるし爽快な気分になれるので超おすすめだ。



橋の楽しみ方②

大きな声で歌う


高架橋下はとにかく車や風の音がうるさいので、周りに気兼ねなく大声で歌える。特に夜は人もほぼいないので、大声出し放題、シャウトし放題、「紅」演奏し放題だ。

歌に自信がない人も、ついついストレスを溜め込んでしまう人もぜひ大声で歌ってみてほしい。

※僕らの場合、相方がずっと橋の下で歌っていた。何が嬉しいのか永遠とグワッグワッ言っていた。ご機嫌麗しく非常に嬉しい限りだが、何を歌っているのかさっぱり分からず閉口。



このように、ただただしんどい橋も考えようによっては楽しいエンターテインメントと成り得る。また、橋の向こうには新しい街が広がっており、僕らの冒険心は大いに奮い立った。しんどいこともしんどいだけではないのだ。

もしあなたが辛い目に遭ったら、少し動きを変えてみては如何だろうか。もしかしたら涙も出てくるかもしれないが、きっとほんの少し前向きになれると思う。


橋があるときは胸を高鳴らそう。橋が無いときは夜空を見上げよう。
逆境を楽しむコツは、意外とそんなところにあると思う。


……。
現在、21時30分。
僕らの夜はまだ更けたばかりだ。


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