見出し画像

【小説】ババアthe読経(no脳know)

 ガスメーターの中にあるキーボックスを押す指を見ていたら5963だったので思わず笑いそうになってしまった。
 スーツの男は見られても何でも無いと言う風な感じで、こちらを気にする事もなく中の合鍵を使ってドアを開けた。
 ドアを開けると右手にシューズラック、左手に洗濯物置き場。すぐのところにユニットバスとキッチンのある短い廊下があり、その奥には8畳ほどの部屋があった。

 一人暮らしをするには十分な部屋だろう。
 駅から徒歩15分、近くにコンビニやスーパーは無し。住宅街のど真ん中。極端に日当たりが悪い訳でも無いし、近くが反社会勢力の事務所だとか宗教の活動拠点と言う訳でも無さそうだ。
 こんなものだろう、と思うがそれにしても気になる。

「良い部屋だと思うのでここに決めたいんですけど、本当にあの値段で良いんですか?」
「ありがとうございます。はい、お家賃に関しましては初月無料。翌月からは3万円を頂戴致します。もちろん敷金礼金無し。ただ違約金の方が……」
「それですよ、違約金って」
「はい、半年以内ですとご退去時に少々頂く事になりまして……」
「もう聞いちゃいますけど、出るんですよね?ここ」
「はい、出ますね」

ここから先は

1,751字
この記事のみ ¥ 300

サポートして頂けると食費やお風呂代などになって記事になります。特にいい事はありません。