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【短編小説】niboshi

 靴についていた棘がひとつ取れていた。
 高級ブランドにしては作りが甘く、これで棘が落ちるのは3度目になる。俺の他にもこうした靴を履いている人間を見た事があるし、彼らの靴も大抵は棘がいくつか落ちていた。
 逆に考えればこうして落ちた棘を集めて革靴に取り付けて俺たちの履いている様な靴を作っている人間もいるのかも知れない。


 ダウンコートから抜けた羽毛を集めて作ったダウンコートや羽毛布団だとか、妖怪が最期に残す毛を集めて作ったちゃんちゃんこ、落ちている煙草を拾い集めて作ったオリジナルのブレンド煙草などが存在している。
 そこら辺を走っている車やバイクもそうだ。
 実際に目の前の駐輪場ではノコギリを持った老人が違法駐車のバイクをバラしている。
 その老人が乗ってきたバイクは見た事も無い造形をしている。老人の工具も色んな工事現場から拾ったものだろうし、老人の軍手は左右で違っている。

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