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雇う者と働く者とのルール~労働関係の法制度について~

経営について学んでいます。今回は労働関係の法令や制度について。使用者と労働者は対等な関係であり、労働者の賃金や労働時間といった労働条件を定め守ることは組織的・効率的な企業運営をするために必須です。組織を運営していくには、法律に従い、法律を学ぶことが必要です。

労働基準法は一人でも労働者を使用する使用者が守らなくてはいけない最低限の労働条件を定めた法律。労働者の保護を目的として制定された労働基準法といった法令以外にも、労働条件を定めたものは存在します。
企業の労働条件や守るべき規定について定めた就業規則。就業規則は企業での労働条件や守るべき規定について定めたもの。パートやアルバイトを含む常時10人以上の労働者を使用する場合、作成がと労働基準監督署への届出が義務付けられています。絶対的記載事項に、労働時間、賃金、退職。相対的必要記載事項は定めをする場合、必ず記載しなければならない事項です。退職手当の定めが適用される労働者の範囲、最低賃金額、休職や財形制度等の福利厚生に関する事項等が含まれます。任意的記載事項は使用者が任意に記載することが係る事項です。服務規定や、根本精神の宣言といった規定です。法的規制がないため公序良俗に反しない範囲で自由に記載ができます。しかし労働協約や法令違反はできません。就業規則の作成または変更については、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働組合がない場合は労働者の過半数の合意が必要となります。
労働者と使用者の間で結ぶ契約である労働協約。労働協約は、使用者と労働組合がそれぞれ署名・押印をすれば有効となります。労働協約に有効期間を定める場合は、締結の日から上限3年間とされています。3年を超える期間の定めは、3年の期間を定めたものとみなされます。あまりに長きにわたって協約内容が変わらない労働協約というのは、労使がその時々の状況の変化に柔軟に対処しようとするのを妨げてしまうからです。ただし、公認会計士、医師、弁護士といった高度な専門知識を有する労働者の場合は5年に延ばすことができます。

法定労働時間。原則として、1日8時間、1週間に40時間を超えて労働させてはいけません。ただし例外として常時使用する労働者が10人未満かつ特定の事業については週44時間までの労働時間が認められています。特定の事業とは、小売りや卸売りなどの商業、映画館などの映画・演劇業、病院などの保健衛生業、旅館や飲食店などの接客・娯楽業です。

変形労働時間制。変形労働時間制とは、一定の条件を満たすことで、1日当たりの法定労働時間を超えることができる制度のことです。
一か月単位の変形労働時間制。一か月以内の労働時間を平均して、1週間の法定労働時間(40時間)を超えない限り、特定の1日の労働時間が8時間を超えてもよい、とします。
フレックスタイム制。一か月以内の一定期間の総労働時間を定めて起き、労働者が始業や終業の時刻を自主的に決定することができます。
1年単位の変形労働時間制。季節により繁忙期や閑散期がある場合に用いられます。1年以内の一定期間の労働時間を平均して、1週間あたりの労働時間が40時間を超えない限り、特定の1日の労働時間が8時間を超えてもよい、とします。
1週間単位の変形労働時間制。労働者が30人未満で特定の業種(小売業、旅館、料理店、飲食店)のみ可能で、1週間あたりの労働時間が40時間を超えない限り、特定の1日の労働時間が8時間を超えてもよい、とします。

休憩。労働時間が8時間超える場合には1時間、6時間を超えると最低45分以上の休憩が必要です。休憩は一斉に与えることが必要ですが、職場に誰もいなくなると困るということも。そういった場合には休憩をずらしてとることも可能です。また、一斉に休憩を与えない旨の労使協定を結ぶことで、自由に休憩をとることができるようになります。
休日は1週間に1日与えることが原則です。変形休日制をとる場合、4週間に4日与える方法も認められています。

36協定。労働基準法36条に基づく労使協定であり、企業が法定労働時間(1日8時間・1週間40時間)を超えて労働を命じる場合に必要となります。労働組合もしくは労働者の過半数の代表の合意の元で締結し、所轄の労働基準監督署へ届けなければ、企業は従業員に法定労働時間外で労働させることはできません。
みなし労働時間制。実際に働いた時間に関わらず、一定時間・所定時間分働いたとみなす制度のことです。外回りのように労働時間の把握が難しい事業場外労働の場合、就業規則等で定めた時間で働いたとみなします。
裁量労働制。弁護士、弁理士、デザイナーといった高度な専門性を要する19職種を対象とする専門業務型裁量労働制、企業経営や事業運営など会社の中核を担う部門での企画立案や調査等に携わる労働者を対象とする企画業務型裁量労働制の2種類があります。労働者と使用者の間で協定を結び、所轄労働基準監督署へ届け出ることが必要です。

年次有給休暇。労働基準法第39条で認められており、雇い入れの日から6か月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に10労働日の有給休暇を与えます。パートタイマー従業員など、週の労働日数や労働時間が短い従業員には、年次有給休暇を比例付与します。
有給休暇取得の時季は原則として労働者が請求する時季に与えることとされています。しかし、事業の正当な運営を妨げる場合においては、他の時季に与えることができる、としています。
2019年4月から施行の働き方改革関連法の年次有給休暇の5日取得義務。年次有給休暇が10日以上付与される労働者には、1年以内に5日以上の年次有給休暇の取得させる義務を使用者側に課しました。
要件を満たした管理監督者については、労働基準法の労働時間や休憩、休日といった規定が適用されません。管理監督者は経営者と一体的な立場にあって、自分自身が労働時間についての裁量権をもっているので、労働基準法による保護になじまないという理由からです。

解雇について。
介護の制限。「業務上負傷し、または疾病にかかり療養のために休業する期間およびその後30日間」ならびに「産前産後休業期間およびその後30日間」この期間中は、原則解雇することはできません。
会社側が労働者を解雇しようとする場合、少なくとも30日前に通知しなければなりません(解雇の予告)。解雇予告をしなかった場合には、使用者は30日分遺贈の平均賃金を支払う義務が生じます。
天災事項等により事業の継続が不可能になった場合、労働者の責に帰するべき事由に基づいて解雇する場合、予告日を設けず即自解雇を行うことができます。
※日々雇い入れられる労働者や試用期間中の場合は、解雇予告は必要ありません。

賃金について。賃金支払いには5原則があります。
・通貨払いの原則 通貨で払う必要があります。
・直接払いの原則 労働者に直接支払う必要があります。
・全額払いの原則 全額を支払う必要があります。
・毎月一回の原則 毎月一回以上支払う必要があります。
・一定期日払いの原則 支払期日を定める必要があります。
また、時間外労働をさせる場合、割増賃金を支払う必要があります。時間外労働に対する割増賃金は、通常の25%以上。休日労働に対する割増賃金は通常の35%以上。午後10時から翌日午前5時までの労働である深夜業に対する割増賃金は通常の25%以上。

新型コロナウイルス感染症での対応としても話題になった一時帰休。会社の都合で労働者を休業させた場合には、一時帰休の期間中使用者に平均賃金60%以上の休業手当の支払い義務を設けています。

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