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2020年2月の記事一覧

中年ど真ん中のスーさんの話を、老年が見えてきた僕が読む。:読書録「これでもいいのだ」

中年ど真ん中のスーさんの話を、老年が見えてきた僕が読む。:読書録「これでもいいのだ」

・これでもいいのだ
著者:ジェーン・スー
出版:中央公論新社

ここんところ対談集が多かった気がしますが、久しぶりのエッセイ集。
まあ昼帯のラジオ番組やってますからねぇ。
忙しいんでしょう。

僕にとってスーさんのエッセイは、
「少し年齢が下の世代の、ちょっと尖った女性目線での考え方」
を教えてもらう感じです。
いや、もちろん「面白い」ってのが第一ですが。

でもって、結構年代によって「意見がブレ

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これからの世界には「哲学」が必要だとは思ってます:読書録「世界史の針が巻き戻るとき」

これからの世界には「哲学」が必要だとは思ってます:読書録「世界史の針が巻き戻るとき」

・世界史の針が巻き戻るとき  「新しい実在論」は世界をどう見ているか
著者:マルクス・ガブリエル 訳:大野和基
出版:PHP新書

「未来の分岐点」を読んだ時も、ガブリエルさんの言ってることチョット理解が…
だったんですが、本書は現実世界との関わりの中での持論の展開&インタビューということなので、分かりやすかも、と思って手に取ったんですが…
いや、ダメでしたw。
前半はまだしも、後半、特に「表象の

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暴走っぷりには呆れるけど、新味もあって楽しめます:読書録「森の捕食者」

暴走っぷりには呆れるけど、新味もあって楽しめます:読書録「森の捕食者」

・生物学探偵セオ・クレイ 森の捕食者
著者:アンドリュー・メイン 訳:唐木田みゆき
出版:ハヤカワ文庫

「生物学者」というか、正確には「生物情報工学者」。
「生物学」のデータをベースに、IT技術を駆使して、「パターン」を導き出す…ってな感じでしょうか?
その「パターン」を連続殺人に…ってところが、このシリーズの「新味」です。

…とは言え、この主人公。
大人しくPCの前に座ってるタイプじゃな

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軽々しく「感想」を書くものでもないかなぁ:読書録「上野先生、フェミニズムについてゼロから教えてください!」

軽々しく「感想」を書くものでもないかなぁ:読書録「上野先生、フェミニズムについてゼロから教えてください!」

・上野先生、フェミニズムについてゼロから教えてください!
著者:上野千鶴子、田房永子
出版:大和書房

ここのところ、「女性」にスポットを当てた本を読む機会がなんとなく増えてるんですよね。
いちばんの理由は「中学1年生の娘がいる」ってのが背景でしょうが、「#MeToo」「#KuToo」の運動やら、「ハラスメント」に関する動きとか、「働き方改革」の流れの中で、「日本の女性」の<あり様>が変わってきて

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観念(正義)が暴走すると、とんでもないことに:読書録「独ソ戦」

観念(正義)が暴走すると、とんでもないことに:読書録「独ソ戦」

・独ソ戦 絶滅戦争の惨禍
著者:大木毅
出版:岩波新書

「戦争は女の顔をしていない」(コミック版)を読んで、背景となる「独ソ戦」のことが気になって、積読本の中から引き出して来て読みました。
いやぁ、ほんと気が重くなるような、スケールの大きな「歴史的事実」。
文化大革命とかもそうだけど、独裁者の観念が暴走すると、歯止めが効かないと言うか…。

本書のポイントは、
「なんでここに至るまで戦争を止める

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現代的にして、「本格」ミステリ:読書録「メインテーマは殺人」

現代的にして、「本格」ミステリ:読書録「メインテーマは殺人」

・メインテーマは殺人
著者:アンソニー・ホロヴィッツ 訳:山田蘭
出版:創元推理文庫

前作の「カササギ殺人事件」は昨年のミステリーランキングを席巻しましたが、本作もまた「このミス」はじめ4つの年末ミステリランキングで「1位」という快挙とか。
っつうか、「4つもある」(このミステリーがすごい、週刊文春ミステリーベスト10、2020本格ミステリ・ベスト10、ミステリが読みたい)ってのもどうかとは思い

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「独ソ戦」の別の側面:コミック「戦争は女の顔をしていない 1」

「独ソ戦」の別の側面:コミック「戦争は女の顔をしていない 1」

第二次世界大戦での戦死者数。(軍人、民間人、合わせて)

ドイツ:約800万人
日本:約300万人
ソ連:約2,700万人
(解説より)

戦勝国でありながら、正に「桁違い」。

本書はその「独ソ戦」に参戦したソ連の女性兵士へのインタビューをまとめた本を漫画化した作品です。
そもそもの書籍の方、以前から気にはなってたんですが、重そうなんでナカナカ手を出せずにいたところ、コミックで出てるのを見掛けて

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現場路線で行くのかしら?:読書録「消えた警官」

現場路線で行くのかしら?:読書録「消えた警官」

・消えた警官
著者:安東能明
出版:新潮文庫

「撃てない警官」シリーズ最新刊。
チャラいが凄腕の刑事(上河内)が前作から登場しての2作目。
「失踪した警官」を縦糸とした連作短編となっています。

上河内の登場で「刑事ドラマ」としての展開は充実した一方で、そもそもの「警察内部もの」としての側面は薄くなってきたような…。
本作にも主人公(柴崎)の仇敵(中田)は登場し、何やら妨害工作は仕掛けてるらしい

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