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鈴木心写真館、松陰神社前の小さな旅。#7 「着縁 KIEN」

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本日の小さな旅は、松陰神社前を飛び出した番外編。写真館から車で10分、下北沢の駅からほど近い場所にある、赤と黒のコントラストが印象的なアパートメントへ。

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その外観と同じ趣の店内には、ヴィンテージの着物や帯、草履などが所狭しと並ぶ。華やかながらも、落ち着いた色合い。通り過ぎてきた年月を感じさせ、それがまた美しい。出迎えてくれたのは、店主の小田嶋さん。移転はしたものの、下北沢に店を構えて13年にもなるという。 

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会社員からの一念発起

「始めた当初は好きで集めたコレクションを並べた、六畳一間の小さなお店でした」会社員時代は、アパレルで内勤の仕事をしていたという小田嶋さん。「納期が遅れたら、新品なのにすぐさまセール行き。一生懸命にもの作りをしているはずが、何をやっているんだろうと思うことも多かった」流行り廃りのあるファッションの世界で徐々に虚無感を募らせていた頃、着物と出会った。

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「アンティークの新鮮さ、80年前のものであっても今も可愛く着られること。凄いと思った」その魅力に取り憑かれ、28歳で退職。会社を辞めてからの2年間は、一日中着物を着る生活を徹底した。「骨董屋、着物屋、料亭といった着物を着ていられる環境に身を置き、家でももちろん着物を着ていました」その後、満を持して「着縁」をオープン。

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ルールの中で見つける自由こそ、お洒落

「いくつもお出しするのではなく、お客さまに合ったものの中から選んでいただきたい」客の雰囲気や予算などを考慮し、スタイリスト的な目線もふまえて提案するのが小田嶋さんのスタイル。

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さらに、「古典のものなので、ルールを守った上で自由さを演出するのがお洒落」と語る。着付の際には特に料金を取らないが、ヘアスタイルまでも一貫して請け負うのもこだわり。「TPOや会場を伺い、その場所の格や照明の具合まで考えてトータルに提案していきます」

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「似合わないんじゃない、と言っちゃうこともある」

「例えば、お客さまが突飛なスタイルを好まれていたとしても、狙っていないミスマッチは悲劇ですからね」と、小田嶋さん。映画の学校へ通っていた過去があり、ただ着物を着せるというだけではなく、着物が存在する世界を作り出すことこそが自らの役割だと考えている。「あまり似合わないんじゃない、と言っちゃうこともあるんですよ」と笑うが、客と着物、それぞれと真摯に向き合っているからこそ。

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着物はパターン、着付はデザイン

洋服とは違い、和服は着ることでデザインが完成するものだという。「だから、着付が重要。逆にいえば、お貸ししているもの以外に先祖代々受け継がれているお着物をお持ちいただく場合であっても、私らしい世界観を生み出せる」

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そんな小田嶋さんだからこそ、テレビなどでタレントの和装を見て、歯痒い気持ちになることもあるそう。「ひとつの舞台において、同じ役者さんが娘時代とおばあさんを演じる場合は着付の仕方は変えるもの。髪型や化粧だけでなく、着物の装いもお芝居を演出していくものなのです」

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七五三に寄せる思いは

「七五三にいらした3歳の娘さんが、『着物を来たくない』なんて泣いたこともあって。悲しいかな、それはきっと、西洋のお姫さまにばかり憧れていて、着物の魅力を知らないからなのだと思います。日本のお姫さまについて知ってもらうために、『あんみつ姫』をおすすめしたりします。着物の英才教育ですね」と笑う。

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「思い出に寄り添う存在でありたい」

今では特別なものになってしまったが、日本の文化のひとつである着物。小田嶋さんは、「日本人に生まれたのだから、節目節目で着て残していってほしい。ただ着るもの以上の存在意義、美しさを体験してほしい」と語る。その体験をアシストするため、着付とレンタル一式13,800円から用意されており、トライもしやすい。

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大量生産で安価に手に入り、ネットで容易に借りられる時代。そんな中で、訪れる客の名前や生まれた時期に縁のある紋様などを提案し、その背景や文化を語りながら、着物のあるべき世界を作っていく小田嶋さんのスタイル。着縁でなら、ただ着るというだけでなく、着物を学び、楽しむというさらなる体験が待っているに違いない。(記事:末松早貴 写真:鈴木心)

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着縁 KIEN(キエン)
東京都世田谷区北沢2-9-22 着縁アパートメント1F(Google Map
13:00〜22:00
火曜日・水曜日定休

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