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「わたしは人よりちゃんとしている」という思い込み「偽の独自性効果」

自分は人と違っているという思い込み

ある研究者が、発作を起こしたふりをする俳優を使って実験を行い、15人中11人がその人を助けなかったことがわかりました。もしあなたがその実験に参加していたら、あなたはどのような反応をしたと思いますか?

こう尋ねると人は、「そのような状況であれば、助けた」と答える傾向があり、実際にはそうでなくても助けると信じています(※5)。このように自分は平均とは違った行動をするという思い込み、とくに望ましい行為に関して、自分はより良く行動するという思い込みを「偽の独自性効果」といいます。


偽の独自性効果

偽の独自性効果(False uniqueness bias)とは、

実際よりも自分をユニークな存在だと思い込む傾向

です。帰属バイアスのひとつであり、認知バイアスのひとつ。このバイアスは、ある特徴や行動を共有している仲間が何人いるかについて人々が行う推定値と、その特徴や行動を報告している仲間の実際の数との差を見ることで測定されることが多い(※1)。

わたしたちは、望ましい特性に関しては、自分は、他の人よりも特殊だと考えることが多いようです。この傾向は、いくつかの研究で示されており、例えば、人々は、実際にはそうではないのに、「自分は、平均的なドライバーよりも運転が上手でリスクを取らない」と思っていました。その他にも「自分の町の平均的な住民よりも偏見が少ない」、「プロジェクトにおいて他の人よりも勤勉である」と信じていることがわかっています(※2)(※3)(※4)。

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「偽の独自性効果」は、「偽の合意効果」の逆

偽の合意効果は「自分の行動を典型的なものと考え、同じ状況にあれば他者も自分と同じような行動をするだろうと考える傾向」なので、偽の独自性効果は、ちょうどこの逆に相当する内容です。しかし動機は近く、どちらも他者に自分の行動をどう見せたいのかという自尊心に関わってきます。

望ましい特性に関して、人は、偽独自性効果を示し、否定的な特性に関しては、偽の独自性効果を示します。

女性は男性より身体については自惚れない

男性は、ポジティブな身体的特徴(良い体型、高い身長、適切な体重など)と社会的特徴(親切など)の両方において自分を平均より上だと過大評価しがちであり、女性は、身体的特徴(良い体型など)よりもポジティブな社会的特徴(親切など)について過大評価する傾向がありました。

偽の独自性効果を作る原因

(1)自己強化理論
自己強化理論(the self-enhancement theory)とは、人が、自分を比較的ユニークで他の人よりも優れていると信じることで、自尊心を高めたり、維持したりすることです。人はそのために、情報を修正したり、無視したり、異なる解釈をしたりします。こうして自分のイメージ(自尊心)を強化します。

(2)自己中心性
自己中心性(Egocentrism)とは、人が自分の特性のみを重視し、他人の感情や思考、属性、特徴などを軽視する傾向です。人は記憶を形成するさいに、自分との関わりに焦点をあてるため、他者についてより自分について強く考えます。その結果、能力が高い人は、すべて領域において自分を平均以上と評価する可能性が高くなります。その一方で、自分自身をすべての領域で低いと判断した人は、自分自身を平均以下であると考える可能性が高くなります。

(3)焦点錯覚
自分について考えるとき、他人については考えない。

(4)認知容易性
人は、思い出しやすい情報を重視します。自分についての情報は思い出しやすく、他人についての情報は思い出しにくい。その結果、自分についての情報を重視することになります。

(5)他人の一般化
他人は「他人」として一絡げにして一般化します。そうして「普通の人」と自分を比較します。しかし実際には「普通の人」という実態の情報は十分には持っていません。

対策・応用

自分を乗り物だと考える

自分を特別だと思うと戦略を間違う。しかしわたしたちは、自分を特別視する生き物です。このバイアスの弊害は、自分のスペックを見過うことです。「野球選手になる!」「YouTuberになる!」と願っても、自分にその才覚があるかどうかを性格には理解できません。しかし基準率(YouTuber全体のうちに食べていけるほどの収入を得ているYouTuberの数)だけを参照すると絶望しかわきません。なので、自分を乗り物だと考えて、トップスピード、コーナリング能力、燃費、見た目などなどを他者の目や成績を通して、把握します。そうすると特別ではなくとも、比較的高い能力と低い能力が見えてくるはずです。これらを使ってレースを楽しく完走する方法を考えるのが良いでしょう。


関連した認知バイアス

•自己中心性バイアス(Egocentric bias)
他の人がしたことよりも、自分のしたことを過大評価する傾向

•バイアスの盲点 (Bias blind spot)
自分にはバイアスが少ないと考えるバイアス

•偽の合意効果(False consensus effect)
自分の行動を典型的なものと考え、同じ状況にあれば他者も自分と同じような行動をするだろうと考える傾向


認知バイアス

認知バイアスとは進化の過程で得た武器のバグの部分。紹介した認知バイアスは、スズキアキラの「認知バイアス大全」にまとめていきます。



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参照

※1:False-uniqueness effect

※2:Svenson, O., 1981. Are we all less risky and more skilful than our fellow drivers?

※3:James M. Fields, Howard Schuman, 1976 “Public beliefs about the beliefs of the public.

※4:Ross, M., & Sicoly, F. (1979). Egocentric biases in availability and attribution.


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