95%の確率で成功する手術と5%の確率で失敗する手術とどちらを選ぶ? 「フレーミング効果」
次の手術の同意書のどちらならサインをしますか?
By Mushki Brichta - Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=79131903
左(緑)は、「90%の成功率の手術」と表現されています。右(赤)は、「10%のうまくいかない可能性」と表現されています。手術なので、これはネガティブな状況です。この場合、わたしたちは、意外なことに慎重になるより大胆になります。10%のリスクに慎重になるよりも90%の成功確率にかける選択をしがちです。上記の2つは、どちらも意味していることは同じです。成功率が90%で、失敗の可能性が10%です。しかし表現の仕方で、わたしたちの決断が変更します。このように情報の提示の仕方で、わたしたちの選択が変化することを「フレーミング効果」といいます。
フレーミング効果
フレーミング効果(Framing effect)とは
情報の提示の仕方で、同じ情報から異なる結論を引き出す効果
です。フレーミングとは額縁を意味しています。同じ情報を異なる表現で伝達すると、意志決定が変わってきます。選択肢が、ポジティブな意味合いで提示されているか、ネガティブな意味合いで提示されているかによって、人の決定するが変化する認知バイアスです。
人は、ポジティブな状況にいるときは、リスクを回避し、ネガティブな状況にいるときには、リスクを求める傾向傾向があります。そのため、ポジティブなことを伝えるときは、「前向きで確実的な表現」に人は納得しやすくなります。一方、ネガティブなことを伝えるときは、「リスクを強調する表現」をすると納得しやすくなります。
フレーミング効果はなぜ起こるのか?
ベースになっているのは、ダニエル・カーネマンとエイモス・トヴェルスキーによるプロスペクト理論。プロスペクト理論とは、不確実な状況における意思決定モデルであり、
(1)得することより損をしないことを選ぶ傾向
(2)損も得も量が増えるとインパクトが弱まっていく傾向
です。つまり、プロスペクト理論によれば人は、
•確実な利得は、確率的な利得よりも好み、
•確率的な損失は、確実な損失よりも好む
ということです。
フレーミング効果の危険
フレーミング効果の危険性の1つは、しばしば2つのフレームのうち1つだけの文脈で選択肢を提供されることにあります。そうして錯誤を発生させてしまうことです。
対策・応用
推進商品には、リスクを見せない表現を使い、
予防商品にはリスクを見せる表現を使用する
ポジティブな情報には保守的に、ネガティブな情報にはリスクを好む。不確実な利益より、確実な利益を、確実な損失よりも不確実な損失を、人は好みます。これを応用したマーケティングテクニックがあります。
使うことで、メリットがある商品である推進商品の場合は、「10%の不満の声」ではなく「90%の満足の声」を売り文句に使います。逆に危険を減らすための予防商品の場合は、リスクのアピール。防虫剤のパッケージには、予防したい虫の姿が克明に描かれています。
割引よりポイント還元
割引は、ポジティブな情報です。しかし割り引かれるという表現より、ポイントが増えるという表現のほうが魅力が増します。
オススメの本
例にあげた研究を行った、ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンの著書です。
関連した認知バイアス
•プロスペクト理論(Prospect theory)
不確実な状況における意思決定モデルであり、(1)得することより損をしないことを選ぶ傾向、(2)損も得も量が増えるとインパクトが弱まっていく傾向
•リスク補償(Risk compensation)
リスクが高い時は安全な行動をするが、安全になるとリスクの高い行動を取る傾向。
•擬似確信効果(Pseudocertainty effect)
結果が予想通りだとリスクを避けようとするが、結果が思わしくないとリスクを犯そうとする傾向。
認知バイアス
認知バイアスとは進化の過程で得た武器のバグの部分。紹介した認知バイアスは、スズキアキラの「認知バイアス大全」にまとめていきます。
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参照
※1:Framing effect (psychology)
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