「買ってよかった」という思い込み 「選択支持バイアス」
「買ってよかった」という思い込み
あなたは、迷ったあげくにある商品を購入しました。買ってから少しして「こっちにして良かった」という思いが湧くことはありませんか?(わたしはすごくある。)こうした選択したことについて、過去にさかのぼって肯定的な評価をしたり、選ばなかったものを低く評価したりする傾向を「選択指示バイアス」といいます。
選択支持バイアス
選択支持バイアス(Choice-supportive bias)とは、
「自分の選択は正しかった」と思い込む傾向
です。意思決定がされたあとに生じる認知バイアスです。このバイアスによって、わたしたちは、例えば、ある人が選択肢Bではなく、選択肢Aを選んだ場合、選択肢Aの欠点を無視・軽視し、その一方で選択肢Bの新たな否定的な欠点を見つける可能性が高くなります。
わたしたちは、このように実際の記憶と、偽の記憶を同じように形成し、ストックします。この2つを区別するのは難しいようです。 基本的に、人は選択を行った後、既に行った決定と一致するように態度を調整する傾向があります。
選択支持バイアスは歳を取ると強くなる
人は歳を取るにつれて、記憶を呼び覚ますプロセスが変化していきます。その結果、若者よりも年配の人のほうが選択支持バイアスを示す可能性が高くなっていきます。理由は、5つ。(1)脳の老化、(2)感情のコントロール、(3)親しみやすさ、(4)要約、(5)抑制。
歳を取ると知識の獲得より、心地よくいることを優先します。その結果、出来事を感情や思考と関連付けて覚えようとする傾向が強くなります。且つ、省エネを目指して、出来事を要約し、覚えにくいことをスルーしようとします。その結果、良い方向に記憶を歪めて、ストックする傾向が、若者より強くなります。
「マクベス夫人効果」で、選択支持バイアスが減少?
ガブリエル・フォン・マックスの描くマクベス夫人
ドレスの布で手を拭おうとする仕草が描かれています。
「マクベス夫人効果」とは、不道徳なことをしたあとに手を洗いたくなるというもので、洗うことで罪悪感が軽減されます。このマクベス夫人効果は、選択支持バイアスを減少させられるという結果がでた実験がありました(※2)。しかし再現性はなかったようで、効果の有無は判然としません。
対策・応用
記憶というものは正確ではないことをうすぼんやり覚えておく
選択したものを肯定することに大きな弊害はありません。しかし認知バイアス全体が示すものは、「我思う我を、そんなに信じられない」ということです(笑)。自分というものの判断や直感がいかに頼りないかということを徹底してしっていくのが認知バイアスという知識です。
ここでも「やっぱこっちにして良かったなぁー」と思うとき、「あ、これ選択支持バイアスだな」って思うと興ざめはするのですが、自分の中にある歪みに気づきやすくなります。そうすると認知バイアスが作る落とし穴に落ちないで済むようになっていきます。
関連書籍
のんびり読んでも2時間で読めるウィリアム・シェイクスピアの『マクベス』。3人の魔女の「綺麗は汚い。汚いは綺麗」というセリフほか、面白くかつよく引用されるセリフが多々あるので読んで損はない古典です。シェイクスピアはほんとうに面白い。
関連した認知バイアス
•バラ色の回顧(Rosy retrospection)
過去の出来事を、その時点での評価よりも良い評価の記憶として思い出す現象。
認知バイアス
認知バイアスとは進化の過程で得た武器のバグの部分。紹介した認知バイアスは、スズキアキラの「認知バイアス大全」にまとめていきます。
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参照
※2: Lind, Martina; Visentini, Mimì; Mäntylä, Timo; Del Missier, Fabio (2017-12-04). "Choice-Supportive Misremembering: A New Taxonomy and Review".
※3:Lee, Spike W. S.; Schwarz, Norbert (2010). "Washing away postdecisional dissonance".
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