人の判断は常に頭に浮かぶものに基づいている 「利用可能性ヒューリスティック」
政治家は不正をしやすい?
あなたは「政治家」に対してどんなイメージを持っていますか?……不正、行動が遅い、間違ったお金の使い方、国民の信頼を裏切ることばかり、居眠りなどなど。こうしたイメージがすぐに、そしてスムーズに湧いてきませんでしたか?そうであるならば、それはわたしたちが政治家に関しての情報をニュースやワイドショーを通して得る機会が多いためです。政治家が良い行いをした場合はニュースになりませんが、不正などの悪いことをしたときにはセンセーショナルに報道されます。こうしてわたしたちの意識は、「政治家」に対して取り出しやすい記憶として「不正」というイメージをストックしていきます。この「取り出しやすい」記憶からイメージを形成することを「利用可能性ヒューリスティック」といいます。ヒューリスティック(Heuristic)とは「近道」という意味です。よく考えずに「ちゃっと判断すること」です。
利用可能性ヒューリスティック
利用可能性ヒューリスティック(Availability heuristic)とは
認識、理解、決定の際に、思い出しやすい情報だけに基づいて判断する傾向
です。思い出すことが出来るなら、それは重要であるに違いない」、「少なくともすぐには思い出せることができない代替案より重要である」と言うふうに考えが基になっています。
たとえば「植物のなかで毒を持ったものってどれくらいの割合あると思う?」と問われたとき、毒を持った植物をスムーズに思い出せるほど、わたしたちの意識はその割合を多く見積もります。この「スムーズに思い出せる」というのが「利用可能性」です。英語では「Availability」で、「手に入りやすさ」という意味。
対策
最初の例のようにわたしたちはさまざまな事件についての記憶を報道を通じて蓄積してきます。そうすると報道されやすいものは多くストックされ、されにくいものはストックされません。
サメに襲われて死ぬ可能性と飛行機の部品が落下して死ぬ可能性はどちらが高いか?と問われると「サメ」と答えるのではないでしょうか。わたしは、「そりゃ可能性としてはサメのほうが高いよね」と思いました。しかし実際にはサメに襲われて死ぬ人より落下してきた飛行機の部品によって死ぬ人のほうが数は多いんです(※3)。
他にも世界は貧困や争いで多くの人が死んでいてどんどん世界は悪化していると感じることもあるかもしれませんが、争いによって死んでしまう人の数は年々減少しています。
利用可能性ヒューリスティックの罠への対策は、認知バイアスあるあるですが、まずその存在を知ること。わたしのイメージは接触回数の多い情報で形成されていてフェアでも正確でもないと知っておくことです。
そして気になることや判断材料にするときには調べること。
応用
利用可能性を低くすると関連性が減る
2つのグループにわけて大学生を対象にしてある授業を評価してもらう実験を行いました(※4)。グループAには授業の悪いところを2個挙げてくれと頼み、グループBには10個挙げてくれと頼みました。結果、10個挙げてくれと頼まれたグループは授業に対してグループAより悪いところが少ない授業だと評価しました。これは10個も悪いところを探すのが大変なため、「悪いところはあまりない」という判断が利用可能性ヒューリスティックによって形成されたからです。逆に2個のグループAは、利用可能性が高いため、授業のグループBより低く評価しました。
思い出しやすさやにくさと評価が関連することを応用すると人々の評価を操作できます。取り出しやすさは信頼性や好意を高めます。
認知バイアス
認知バイアスとは進化の過程で得た武器のバグの部分。紹介した認知バイアスは、スズキアキラの「認知バイアス大全」にまとめていきます。
関連した認知バイアス
•単純接触効果(Mere exposure effect)
繰り返し接すると好意度や印象が高まるという効果。
•真理の錯誤効果 (Illusory truth effect)
間違った情報でも、何度も報道されているうちに本当だと考える効果。 初めて知った主張よりも、既に知っている主張を正しいと考える傾向
利用可能性ヒューリスティックについてのオススメ本
認知バイアスやヒューリスティックについての権威であり、 ノーベル経済学賞受賞者のダニエル・カーネマンの著書『ファスト&スロー』。役に立つだけじゃなくて読みやすい!
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参照
※2:利用可能性ヒューリスティックavailability heuristic
※4:The availability heuristic in the classroom: How soliciting more criticism can boost your course ratings
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