「悪い行為は悪いヤツがする」という思い込み 「根本的な帰属のエラー」
車の割り込みをしてきたやつは悪いヤツ
運転していると急に他の車に割り込まれました。そうなると「なんて失礼でマナーのなっていない運転手なんだ」とわたしたちは考えがちです。その運転手が、運転が下手であるとか、家族の事故のためとても急いでるかも、といった状況によるものだとはあまり考えません。
一方で、自分が他のひとの車に割り込んでしまったときには、自分を失礼でマナーのなっていないドライバーだとは考えずに、急いでいることや他者の車がよく見えなかったなどの状況による行為だと考えがちです。
このようにわたしたちは、まず物事には原因があると考え、つぎにそれが他者の行為である場合は、状況的な理由よりもその人の気質によるものだと考えがちです。こうした思い込みを「根本的な帰属のエラー」といいます。「行為者ー観察者バイアス」とほぼ近い意味です。
根本的な帰属のエラー
根本的な帰属のエラー(fundamental attribution error)とは、
人の行動を、気質によるものとか考え、
自分の行動は、状況によるものと考える傾向
です。根本的な帰属のエラーは、認知バイアスであり、帰属バイアスの1種。帰属バイアスとは、「人が体系的なエラーの原因について、それが自分や他人の行動によるものだと考えたり、理由を求めたりすること」。人は、常に因果関係を求めるため、原因をどこかに帰属させようとします(帰属理論)。「行為者ー観察者バイアス」同様に、行動の原因を他者の場合は、観察可能な「その人」に由来すると考えるために起こると考えられています。一方、自分の場合は、自分の気質以外に状況的な影響も考慮が可能になります。入手可能な情報の不均一さが、この根本的な帰属のエラーを引き起こします。これは文化よって異なってきます。FAEとも略されます。
この言葉は、エドワード・E・ジョーンズ(Edward E. Jones)とビクター・ハリス(Victor Harris)による1967年の古典的な実験に引き続き、リー・ロス(Lee Ross)によって作られました(※4)。ダニエル・ギルバート()をはじめとする一部の心理学者は、根本的な帰属エラーを「対応バイアス(Correspondence bias)」という言葉で表現しています。両者は、厳密な意味では区別されますが、ざっくり言えばだいたい同じ意味で使われます。
公正世界仮説が「根本的な帰属のエラー」を作る説
公正世界仮説とは、メルビン・ラーナーが理論化した概念で、「良いことをすれば良いことが、悪いことをすれば悪いことがその身に降り注ぐ」という因果応報の世界感です。この世界観に住む人にとっては、失敗や不幸の原因は、その人の気質となります。この公正世界仮説が魅力的なのは、自分が正しい行いをしていれば、不幸は訪れないという安心感が得られることです。こうして、他者の失敗を当人の気質と考える傾向が生まれます。
批判
行為者ー観察者バイアスでも触れましたが、2006年に行われたメタ分析(※5)では、行為者と観察者の間の帰属の差が見られないという、根本的な帰属のエラーを否定するような結果になりました。しかし観察者と行為者がよく知るもの同士の場合や研究者の自由度が高い場合には、差が現れました。
対策・応用
他者の行為については気質に加えて「状況をよく知ろうとする」
「行為者ー観察者バイアス」と同じ。
関連した認知バイアス
•行為者ー観察者バイアス(Actor–observer bias)
人の行動を、気質によるものとか考え、自分の行動は、状況によるものと考える傾向
•公正世界仮説(Just-world hypothesis)
この世界は人間の行いに対して公正な結果が返ってくると考える傾向
認知バイアス
認知バイアスとは進化の過程で得た武器のバグの部分。紹介した認知バイアスは、スズキアキラの「認知バイアス大全」にまとめていきます。
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参照
※1:Fundamental attribution error
※2:根本的な帰属の誤り
※3:基本的な帰属のエラーfundamental attribution error
※4:The intuitive psychologist and his shortcomings: Distortions in the attribution process
※5:The actor-observer asymmetry in attribution: A (surprising) meta-analysis
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