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内観を信じるな 「内観幻想」

内観幻想

内観幻想(introspection illusion)とは、

自分の精神状態の「起源」を理解していると思い込み、他人の内観を信頼できないものとして扱う傾向

です。この錯覚は、心理学的な実験で検証され、人が、自分と他人を比較するときのバイアスの根拠として示唆されています。これらの実験によって、人は他人の行動から勝手にその人の精神状態を不正確に推測するように、自分自身についてもまた誤って解釈することがあることが示唆されました。

これらの実験は、人々が他人の行動から間接的に他人の精神状態を推測するように、内観は精神状態の基礎となるプロセスへの直接的なアクセスするものではなく、構築と推論のプロセスであることを示唆していると解釈されています。

人々が信頼性のない内観を真の自己認識と勘違いすると、その結果、例えば、人が自分はグループの他の人よりも偏りがなく、適合性も低いと考えるような、他の人よりも優れているという錯覚に陥ることがある。他の被験者の内観をできるだけ詳細に報告させても、被験者は他の内観を信頼できないと評価し、自分の内観は信頼できると考えるのです。

特定の状況では、この内観幻想により、人々は自分の行動について自信を持っているが誤った説明をしたり、将来の精神状態について不正確な予測(感情予測(affective forecasting))をしたりします。


内観幻想の概要

「内観幻想」は、エミリー・プロニン(Emily Pronin)が作った言葉。 プロニンは、この錯覚を4つの要素で構成されていると説明しています。

1. 人は自分を評価するとき、内観的な証拠に強い重みを与える。
2. 人は自分を評価するとき、内観的証拠に強い重みをつけるが、他人を評価するときにはそのような強い重みはつけない。
3. 人は自分を評価するときに自分の行動を無視する(他人については無視しない)。
4.自分の内観は、他の人の内観よりも高く評価される。
人々はお互いの内観にアクセスできないというだけではなく、自分自身のものだけを信頼できると考えている。


バイアスの盲点は内観幻想が原因

バイアスの盲点とは、人々が自分自身を他のグループメンバーよりもバイアスの影響を受けにくいと評価することです。エミリー・プロニン(Emily Pronin)とマシュー・クグラー(Matthew Kugler)は、この現象が内観幻想によるものだと主張しています。プロニンとクグラーの解釈では、人は他人が偏っているかどうかを判断するときには、あからさまな行動を用います。一方、自分自身が偏っているかどうかを評価するとき、人は内観し、自分の思考や感情に偏った動機がないかを探します。偏りは無意識のうちに作用するので、こうした内観は判断材料にはならないのですが、人々はそれを自分自身が他の人々とは違って偏りから免れているという信頼できる徴候として誤って扱います。

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そういえば、ひろゆき氏が「自分探しをしているひとに、頭の良い人がいたことがない」と発言していました。

対策・応用

内観を信じない

いまさらですが「内観」ということばは、理解するのが少しむずかしい。内観とは、自分の状態を観察した結果です。元気かどうか、やる気があるかどうか、落ち込んでいるかどうか、ワクワクしているのか、緊張しているのか、不安なのか、それに対して「今この状態だ」と推測すること、これが内観です。内観とは「構築と推測のプロセス」だと、冒頭で説明していますが、これがかなめで、人は、 内観を「正確な観察結果」だと誤解してしまいます。しかし実際は、「推測して構築していくプロセス」にすぎない。つまりもっというと

人は自分の状態を正確には判断できないということです。

あなたが、落ち込んでいると思っていても、体調不良や気圧の変化の影響であるかもしれないということです。やる気が漲っている!と感じていても、それは運動による高い心拍数の影響であるかもしれない。であれば、内観なんて信じないのが、いちばん良い。何に良いのかと言うと行動に良い。「いまいちやる気が出ない」という評価を自分に対して下しとして、それを信じない。信じないで、行動を開始する。すると「やる気がでない」という状態が消えることがある。このように、行動を抑制する要因を排除できるのが、内観を信じない効用です。いっぽうで、なんだかザワザワするという不安を観測したら、体調の変化などをチェックするのも良いでしょう。


関連した認知バイアスなど

•根本的な帰属のエラー(fundamental attribution error)
個人の行動を説明するにあたって、気質的または個性的な面を重視しすぎて、状況的な面を軽視しすぎる傾向。帰属バイアスのひとつ。

•優越の錯覚(Illusory superiority)
自分の資質を過大評価し、他者の資質を過少評価する傾向。

•感情予測(affective forecasting)
将来における自分の感情の予測を間違えること

•作話(さくわ) (Confabulation)
自分や世界に関する記憶を捏造したり、歪めたり、誤った解釈をしたりすることと定義される記憶の誤り

•バイアスの盲点(Bias blind spot)
自分にはバイアスが少ないと考えるバイアス。



認知バイアス

認知バイアスとは進化の過程で得た武器のバグの部分。紹介した認知バイアスは、スズキアキラの「認知バイアス大全」にまとめていきます。


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参照

※1:Introspection illusion

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