見出し画像

言われるとしたくなくなる 「心理的リアクタンス」

「今しようと思ったのに!」

勉強でも掃除でも仕事でも、しようと思っていたところに、誰からに「しなさい」と言われると、ものすごくしたくなくなります。これは「オススメ」でも起こります。したほうが良いよ!というアドバイスに、人は従いたくなくなります。これを「心理的リアクタンス」といいます。


心理的リアクタンス

心理的リアクタンス(psychological reactance)とは、

警告、規則、推奨など「こうすべき」とか「したほうが良い」という提言に、自分の行動の自由が奪われるように感じて、不快な気持ちになったり、抵抗すること

です。たとえ、したいことでも「したほうが良い」と言われた途端にしたくなくなるのは、したくなってするとき、自分の自由意志で行動したことになります。これは心地よい。しかし「したほうが良い」と言われてするとき、自分の自由意志はなくなり、元来したかったことでも、言われたあとのその行動は「従属」になってしまいます。これが、言われるとしたくなくなる理由です。一部には、この心理的リアクタンスが生まれつき強いひともいます。この特性を「特性リアクタンス(trait reactance)」と呼びます。いわゆる「天の邪鬼」とは、この心理的リアクタンスを指したことばです。

理由

人も動物も、自由を奪われることを恐れます。死活問題につながるためです。欲しい物を手にいれられず、逃げられず、という状態は避けたい忌むべきものです。そのため、行動や思考を制限されることに不快を感じます。警告からオススメまで含めて、自分の行動を制限された状態にすることが可能です。受け取り方次第でもあるのですが、制限された、と感じたとき、心理的リアクタンスは発生します。

リアクタンス理論には、4つの重要な要素があります。(1)知覚された自由、(2)自由に対しての脅威、(3)心理的リアクタンス、(4)自由の回復。ここでいう自由とは、抽象概念ではなく、行動、感情、態度について制限されないという意味です。行動には、何をする(しない)、どのようにするか、いつするか、という複数の要素が含まれています。

心理的リアクタンスの効果

「心理的リアクタンス」を知らない状態では、人は「自由を制限されて不快になっている」という自覚はありません。しかし、この心理的リアクタンスを知った状態でいると、「自由を制限された気持ちになって不快になっている」ということを自覚できるため、したくないのに、心理的リアクタンスのため、何かをしてしまうことや、したいのに、心理的リアクタンスによって、したくなくなる、ということを自分でコントロールして回避できるようになります。

「勉強しよう」と思っていたところで、誰かに「勉強しなさい!」と言われても、それで不快になったところで、その理由が心理的リアクタンスのせいだと理解できるため、当初の意図どおり、勉強をすることが可能になります。


対策・応用

人に何かをすすめない

ではどうしたら良いのかというとジョーナ・バーガーの『ザ・カタリスト』によれば、「情報を与えて自分で考え、自分で選択する状態にする」のが良いようです。この方法の4つのキーは以下の通り。

1.メニューの提示
2.質問をする(命令はしない)
3.ギャップを明確にする
4.理解から始める

3の「ギャップを明確にする」というは、望ましい状態と現状の差という意味のギャップについてのものです。「ポテトチップスがもっとも太る効果のある食べ物だから食べないほうが良い」というアドバイスには、人は抵抗を感じます。心理的リアクタンスが発生するためです。しかし「ポテトチップスがもっとも太る食べ物だと知っているあなたが、痩せたい人にどのようなアドバイスをしますか」という質問をすると、ギャップが明確になります。ここで使われているのは、認知的不協和というものです。


オススメの本

心理的リアクタンスの乗り越えかたを解説しています。


関連した認知バイアス

•認知的不協和(cognitive dissonance)
人が自身の認知とは矛盾する別の認知を抱えた状態になると不快になること


認知バイアス

認知バイアスとは進化の過程で得た武器のバグの部分。紹介した認知バイアスは、スズキアキラの「認知バイアス大全」にまとめていきます。


フォロー&「いいね!」をいただけると喜びます

スズキアキラ avatar2

スズキアキラのnoteでは、ビジネスに役立つエビデンスを紹介しています。おもしろい!と思ってくださった方が、「フォロー」や「いいね!」をしていただけるとスズキアキラはとても喜びます。

参照

※1:Reactance (psychology)

※2:心理的リアクタンスpsychological reactance


#科学 #ビジネス #ビジネススキル #エグゼクティブ #経営者 #生産性 #オフィス #認知バイアス  

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?