見出し画像

「嫌なことは意外なほど忘れている」 感情弱化バイアス

「思い返してみると楽しいことばかりだった」は間違い

人はどうも、良いことより悪いことをさっさと忘れる機能を持っているようです。良いことは、忘れにくく、悪いことは忘れやすい。これが続くとわたしたちの過去は、いろいろあったのに「あれ、意外に良いことばっかりだったかも」という記憶に変化していきます。この嫌な記憶をさっさと忘れる傾向を感情弱化バイアスといいます。


感情弱化バイアス

感情弱化バイアス(Fading affect bias)とは、

嫌な記憶は良い記憶よりも早く忘れる傾向

です。FABと表記されることがあります。ネガティブな感情に結びついた記憶は、ポジティブな記憶よりもはやく忘れられる傾向です。LandauとGunter (2009)の研究により、FABは、経験が一人の人間のものか共有されているか、その記憶を共有しているグループの間で共有されているかに関わらず、起こることがわかりました。人々がある出来事を思い出すことで、その出来事のネガティブな感情の質が軽減されることがあります。感情弱化バイアスは、記憶に影響を与えることがあります。もともとネガティブだった出来事が、時間とともに変化し,よりポジティブに捉えられる傾向があることを認める証拠も増えています。


ナルシストはFABが低い

画像1

ナルシストは、自分にポジティブな記憶を残し、ネガティブなことをさっさと忘れるFABが高いかと思われがちですが、実際はそうではありませんでした。自己愛が強ければ強いほど、FAB効果が少ないことがわかっています(※4)。どうもFABは、健全な感情調節であり、ある意味不健全な自己愛が強いナルシストは、この健全な感情調節に欠けているようです。


対策・応用

「昔は良かった」と思うことがあるとき、「あ、嫌なことは忘れているからか」ということに来づければ、これからも楽しめる(かも)

良い記憶がよく残ることに弊害はさほどないのですが、過度になると「昔は良かった」という凋落主義に陥りかねません。昔は良かったけれど、これからはずっと悪くなっていくんだろうなぁという考えは、このFABによって形成されているかもと気づけば、来る未来に受けて立つマインドセットを獲得できるかも。


関連した認知バイアスなど

•凋落主義(Declinism)
社会や組織が凋落しつつあると考える。過去を美化し、将来を悲観する傾向。


•バラ色の回顧(Rosy retrospection)
過去の出来事を、その時点での評価よりも良い評価の記憶として思い出す現象。


認知バイアス

認知バイアスとは進化の過程で得た武器のバグの部分。紹介した認知バイアスは、スズキアキラの「認知バイアス大全」にまとめていきます。


フォロー&「いいね!」をしていただけると喜びます。

スズキアキラ avatar2

スズキアキラのnoteでは、ビジネスに役立つエビデンスを紹介しています。おもしろい!と思っていただければ、「フォロー」や「いいね!」をわたしはとても嬉しいです。

参照

※1:Fading affect bias

※2:傍観者効果

※3:Bystander Intervention in Emergencies: Diffusion of Responsibility

※4:Ritchie, Timothy D.; Walker, W. Richard; Marsh, Shawnda; Hart, Claire; Skowronski, John J. (January 2015). "Narcissism Distorts the Fading Affect Bias in Autobiographical Memory: Narcissism and the fading affect bias"


#科学 #ビジネス #ビジネススキル #エグゼクティブ #経営者 #生産性 #オフィス #認知バイアス  

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?