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世界を、良い人か悪い人しかいないと捉える「スプリッティング」:認知の歪み(1)

スプリッティング

スプリッティング (Splitting)とは、

全か無かの思考。 人間の思考において、自己と他者の肯定的特質と否定的特質の両方をあわせ、現実的に、全体として捉えることの失敗

です。「分裂(ぶんれつ)」ともいいます。全か無か思考(all-or-nothing thinking)とも呼ばれています。スプリッティングの概念は、ロナルド・フェアバーン((William Ronald Dodds Fairbairn)が、発展させてきました。極端な考え方をする傾向で、個人の行動が、すべて良いものかすべて悪いものであり、中間がない状態になります。スプリッティングは、認知バイアスではなく、認知の歪みです。

認知の歪み(Cognitive distortion)とは、

誇張的で非合理的な思考パターンであり、これらは精神病理状態、とりわけ抑うつや不安を永続化させ得る

ものです。

境界性パーソナリティ障害

スプリッティングは、一人の人を時に、全面的な善としてとらえ、また別のときには、全面的な悪ととらえてしまうため、人間関係が不安定になります。

スプリッティングは、境界性パーソナリティ障害の人々に比較的良く見られる防衛機制です。境界性パーソナリティ障害の診断基準の内の一つである「理想化と脱価値化との両極端を揺れ動くことによって特徴づけられる不安定で激しい対人関係様式」は、そのままスプリッティングの症状にあてはまります。精神分析理論において、境界性パーソナリティ障害の人々は、自己と他者の良いイメージと悪いイメージを統合することができず、良い表象を悪い表象が支配する結果となってしまいます。

自己愛性パーソナリティ障害

自己愛性パーソナリティ障害の診断基準を満たす人々もまた、中心的防衛機制としてスプリッティングを用います。ナルシストは、自尊心を保護するために自己の正しさを安定させようとするとき、スプリッティングをよく使います。結果、自分の意思や地位に従わない人物を完全に卑劣で軽蔑されるべき人間だとみなし、自分自身は全く正直で賞賛に値すると考えるよになります。

境界性パーソナリティ障害におけるスプリッティングは、「良い自己」と「悪い自己」とに分裂して存在しており、それが絶えず「良い対象」と「悪い対象」とに分ける防衛機制として動員されています。それに対して、自己愛性パーソナリティ障害におけるスプリッティングは、基底の人格構造が誇大的自己と無能的自己とに分裂して恒常的に存在しているという点において、性質が、境界性パーソナリティ障害と異なります。

抑うつ

抑うつ患者では、行き過ぎた「全か無かの思考」によって症状を自己強化させることがあります。これらの思考は、「感情のアンプ」とも呼ばれ、認知の歪みがより強化されます。

例:
•私の努力は成功するか、あるいは悲惨な失敗に終わるかのどちらかだ
•私は、すばらしい善人か、もしくはひどい悪人だ
•あなたは、私たちの味方になるか、もしくは敵になるかのどちらかだ


対策・応用

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自分のなかにスプリッティングがあると認められそうなら、パーソナリティ障害か抑うつの傾向がないか、調べる



関連した認知バイアスなど

•ゼロサム・バイアス(zero-sum bias)
誰かが利益を得れば、誰かが損をすると考える傾向


認知バイアス

認知バイアスとは進化の過程で得た武器のバグの部分。紹介した認知バイアスは、スズキアキラの「認知バイアス大全」にまとめていきます。


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参照

※1:Splitting (psychology)

※2:分裂 (心理学)

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