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「あなたが来てからというものろくなことが起きない!」という難癖 「前後即因果の誤謬」

迷信にみる難癖

あなたはマンションの大家さんからこんなクレームを受けたとします。

「私は、あなたが問題の原因だと思わずにはいられません。なぜなら、あなたがこのアパートに引っ越してくるまで暖房設備には何の問題もなかったのですから。」

大家さんのこの話には、間違いがあります。それは、新しい入居者が、入居してから問題が起きたという前後関係のみを根拠として、暖房設備が故障したことと因果関係があると仮定したことです。出来事の前後と、結果と原因は、一緒くたにすべきものではありません。しかし、利用可能性ヒューリスティックスによって、人は「ある人が、引っ越してきてから問題が発生した」つまり「その引越しが原因だ」と考えかねません。このような間違いを「前後即因果の誤謬」といいます(※1)。このような間違った結論は、多くの迷信に見られます。



前後即因果の誤謬

前後即因果の誤謬(Post hoc ergo propter hoc)とは、

ある事象が別の事象の後に起きたことを捉えて、前の事象が原因となって後の事象が起きたと判断する誤謬(因果の誤謬)

です。前後即因果の誤謬は、時系列に因果関係があると見なす点で、誤りとなる傾向があります。前後だからといって、因果の関係にあるとは限らないからです。誤謬は、因果関係を否定するような他の要因を無視し、事象の順序だけに基づいて結論を導くことで生じます。身近なところでは、迷信呪術的思考の多くは、この誤謬に含まれます。

前後即因果の誤謬の形式

前後即因果の誤謬は、以下のような形式で表せます。

•A が発生し、その後 B が発生した。
•従って、A が原因となって B が起きた。

B が好ましくない事象である場合、この形式を逆転させることが多い。すなわち、「B を防ぐためには A を防げばよい」という形式です。


対策・応用

(1)覚えておく

これは、わたしたちにある傾向なので、わたしにもあなたに起こり得る間違いです。「あなたが来てからというものろくなことが起きない!」に近いいらだちや怒りを覚えるとき、それが前後即因果の誤謬かどうか一度考えてみるのが良いでしょう。前後即因果の誤謬に陥るとのは、ちょっと頭が悪い印象を与えます。

(2)「なぜ?」:説明を求める

逆に「あなたが来てからというものろくなことが起きない!」と言われる立場にいる場合はどうすれば良いのでしょうか。それは、この説明にある間違いを指摘することではないでしょうか。その「ろくなことが起きない」ということに、わたしがどう関与しているのか?かの説明を求めて、明確にしてもらう。

しかしー、このような主張をする人は、ロジックが破綻している可能性が高い。第三者を交えた上で、論理を明確にするのが良いかもですが……。バカに理屈は通じないので、他の手段が必要になるかもしれません。


関連した認知バイアスなど

•利用可能性ヒューリスティック(Availability heuristic)
認識、理解、決定の際に、思い出しやすい情報だけに基づいて判断する傾向。



認知バイアス

認知バイアスとは進化の過程で得た武器のバグの部分。紹介した認知バイアスは、スズキアキラの「認知バイアス大全」にまとめていきます。


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参照

※1:Attacking Faulty Reasoning

※2:前後即因果の誤謬


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