あとから入ってくる情報によって、記憶が不正確になる傾向 「誤情報効果」
誤情報効果
誤情報効果 (Misinformation effect)とは、
あとから入ってくる情報によって、記憶が不正確になる傾向
です。誤情報効果は、1970年代半ばから研究されており、アメリカ合衆国の認知心理学者、エリザベス・ロフタス(Elizabeth Loftus)が、誤情報効果における影響力のある研究者の一人です。
誤情報効果は、後から提示された情報が、以前に記録された(エンコードされた)情報を保持する能力を妨害してしまう遡及的干渉です。誤情報効果が起こるメカニズムの一つに、後から与えられた誤った情報が、実際の出来事の記憶に取り込まれるという、帰属のミスがあります。
目撃者との会話や警察の取り調べ、裁判などで目撃者の記憶に誤情報が取り込まれる機会が多いため、誤情報効果を理解することは、目撃証言の正確性に影響を与えるという点でも重要す。
記憶の遡及的鑑賞の図示
By Catherine Hare (talk) - self-made, CC BY-SA 3.0, https://en.wikipedia.org/w/index.php?curid=33446427
誤情報効果の影響の受けやすさ
(1)年齢こどもは大人より誤情報効果を受けやすい(※1)。
(2)ワーキングメモリ
ワーキングメモリの能力が高い人は、誤情報効果の影響を受けにくい(※3)。
(3)性格
内向的で直観的な人は、外向的で感覚的な人に比べて、出来事のあとから入ってくる正確な情報も不正確な情報も、その両方を受け入れる傾向があります(※3)。研究者は、この結果について、内向的な人は、自分の記憶に自信がなく、誤った情報を受け入れる可能性が高いためだと推測しています。また共感性、吸収性、自己監視性などの性格特性も、影響を受けやすさと関連していました。
(4)イメージ能力
イメージ能力の高い参加者は、低い参加者よりも誤情報効果の影響を受けやすい。研究者は、イメージ能力の高い参加者は、記憶の定着時や検索時に誤った情報の鮮明なイメージを形成する可能性が高いため、影響を受けやすくなると推測しています(※3)。
(5)ペアの参加者
参加者同士がペアになって議論すると、お互いの記憶を均質化する効果があることを示した研究があります(※4)。誤情報を含む話題を話し合ったペアは、誤情報効果の影響を受ける傾向がありました。
事前に警戒すれば防げるが事後には効果なし
誤情報効果について理解しているとその影響に抵抗することができます。しかし、誤った情報を提示した後に教えても元の情報と後の情報を識別する助けにはなりませんでした(※5)。
対策・応用
記憶はどのみち頼りにならない
認知バイアス全般を通して理解を進めると自分の記憶や直感がいかに当てにならないかということがわかってきます。メモ、録音、録画など外部の記憶に頼ることをおすすめします。
認知バイアス
認知バイアスとは進化の過程で得た武器のバグの部分。紹介した認知バイアスは、スズキアキラの「認知バイアス大全」にまとめていきます。
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参照
※3:Lee, Kerry (2004). "Age, Neuropsychological, and Social Cognitive Measures as Predictors of Individual Differences in Susceptibility to the Misinformation Effect".
※4:Skagerberg, Elin M.; Wright, Daniel B. (May 2008). "The co-witness misinformation effect: Memory blends or memory compliance?"
※5:Loftus, E. (2005). "Planting misinformation in the human mind: A 30-year investigation of the malleability of memory"
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