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認知バイアス大全

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賢い人も含めて、わたしたち人間が「頭の悪い行動をしてしまう」理由は、だいたい認知バイアスによるものです。認知バイアスとは、進化の過程で得た機能の「バグ」。この認知バイアスの良いと… もっと読む
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2021年6月の記事一覧

言われるとしたくなくなる 「心理的リアクタンス」

「今しようと思ったのに!」勉強でも掃除でも仕事でも、しようと思っていたところに、誰からに「しなさい」と言われると、ものすごくしたくなくなります。これは「オススメ」でも起こります。したほうが良いよ!というアドバイスに、人は従いたくなくなります。これを「心理的リアクタンス」といいます。 心理的リアクタンス心理的リアクタンス(psychological reactance)とは、 警告、規則、推奨など「こうすべき」とか「したほうが良い」という提言に、自分の行動の自由が奪われるよ

「悪いことをする人は自己管理能力が欠如している」と思い込む 「厳格バイアス」

生活保護を受けている人はだらしない?人の望ましくない状態(生活保護が望ましくないかどうかはおいておいて)について、社会的な、または環境的な要素を考えずに、その人の望ましくない気質や道徳観によるものだと、人は考えがちです。これを「厳格バイアス」といいます。 厳格バイアス厳格バイアス(Puritanical bias)とは、 人の良くない行動を、幅広い社会的な要因によるものだと考えるのではなく、 道徳的な欠陥や自己管理能力の欠如によるものだと考える傾向 です。帰属バイアスの

国家間から恋人まで破局に導く 「ナイーブ・シニシズム」

ナイーブ・シニシズム(Naive cynicism)ナイーブ・シニシズム(Naive cynicism)とは、 自分より相手の方が自己中心的だと考える傾向 です。「ナイーブ」とは、日本語で使われる「神経質な」というニュアンスの意味ではなく、元来持っていると「バカ正直な」という意味の言葉です。「批判せずにそのままそう考えてしまう」という意味で使われれています。この言葉は、ジャスティン・クルーガー(Justin Kruger)とトーマス・ギロヴィッチ(Thomas Gilov

サトラレてない? 「透明性の錯覚」

初デートですごく緊張している。きっと心臓の音が相手にも聞こえているに違いない?自分の心理状態を他人に見透かされていると思うことはありませんか。すごく緊張していることがバレたり、イライラしていることがバレていたりしているように思う。実際よりそう感じることを「透明性の錯覚」と言います。これは、逆に他人の心理状態を手に取るようわかると思い込むことも含んでいます。 人は、サトラレ(人に自分の気持を全部知られてしまうことや知ってしまうこと)を実際よりあるように感じています。 透明性

自分だけ相手をよく理解していると思いこむ 「非対称な洞察力の錯覚」

わたしは親友のことをよくわかっているけど、親友は、わたしのことを同じくらいには理解していないだろう…… 質問:親しい友だちを一人思い浮かべて、次の質問に答えてください。 (1)あなたは、その友だちのことをどれくらいよくわかっていますか? 0点(まったくわかっていない)〜10点(完全にわかっている)の間で答えてください。(   )点 (2)友だちは、あなたのことをどれくらいよくわかっていますか? 0点(まったくわかっていない)〜10点(完全にわかっている)の間で答えてください

中立的なニュースにも自分が支持する考えを否定しているように感じる 「敵対的メディア効果」

「このニュースは不正確に偏っている」と双方が感じる1982年、スタンフォード大学の親パレスチナ派の学生と親イスラエル派の学生に、イスラエル軍にそそのかされたキリスト教レバノン民兵によるパレスチナ難民の2人の虐殺に関する同じニュース動画を見せました。このニュース動画に対して親イスラエル派の学生は、ニュースが反イスラエル的な表現が多く、イスラエルに好意的な表現が少ないと感じました。一方、親パレスチナ派の学生は、反パレスチナ的な表現が多いと感じました(※2)。両者ともに自分たちに否

メンバーを見て集団の特徴を推測する 「集団帰属のエラー」

集団帰属エラー 集団帰属エラー(Group attribution error)とは そうではない情報があっても、(1)メンバーの特徴が、グループ全体の特徴を反映していると思いこむ傾向(2)グループの決定は、個々のメンバーの意向を反映していると錯覚する傾向 です。根本的な帰属のエラーに似た帰属バイアス。集団の帰属エラーは、1970年から1985年の間に行われた数多くの研究を評価したスコット・T・アリソン’Scott T. Allison)とデヴィッド・M・メシック(Dav

「わたしは人よりちゃんとしている」という思い込み「偽の独自性効果」

自分は人と違っているという思い込み ある研究者が、発作を起こしたふりをする俳優を使って実験を行い、15人中11人がその人を助けなかったことがわかりました。もしあなたがその実験に参加していたら、あなたはどのような反応をしたと思いますか? こう尋ねると人は、「そのような状況であれば、助けた」と答える傾向があり、実際にはそうでなくても助けると信じています(※5)。このように自分は平均とは違った行動をするという思い込み、とくに望ましい行為に関して、自分はより良く行動するという思

陽性反応が本当に病気である確率 「ベイズの定理」

ベイズの定理ベイズの定理(Bayes' theorem)とは、 ある事象に関連する可能性のある条件についての事前の知識に基づいて、その事象の確率を算出するもの です。「ベイズの法則」とも呼ばれます。イギリスのトーマス・ベイズ牧師にちなんで名付けられました。 トーマス・ベイツ(1701–1761年) ベイズの定理は、例えば、健康問題の発生リスクが、年齢とともに増加することが知られている場合、ある年齢の個人のリスクを、単にその個人が集団全体の典型的な例であると仮定するより

「人も自分と同じように考えるだろう」という思い込み 「偽の合意効果」

偽の合意効果偽の合意効果(False consensus effect)とは、 自分の行動を典型的なものと考え、同じ状況にあれば他者も自分と同じような行動をするだろうと考える傾向 です。人は、自分の考え方を他の人たちに投影する傾向があります。そうして、他の人々も自分と同じように考えていると考えがちになります。このようにして、人々は、自分の意見、信念、好みが、実際よりも他の多くの人々と同じだと思い込みます。この認知バイアスの原因は1つではなく、利用可能性ヒューリスティック、

人の動機の推測はよく間違う 「外部動機づけバイアス」

仕事の動機は何か?チップ・ヒース(Chip Heath)による研究で、学生たちにシティバンクの顧客サービス担当者が、仕事をするうえでの動機になると考える次のリストをランク付けしました。結果は、以下のとおりです。 1位 給料の額 2位 仕事が安定していること 3位 充実した福利厚生 4位 上司からの称賛 5位 気分が良くなること 6位 スキルの向上 7位 やりがいのある仕事 8位 新しいことを学ぶ しかし実際の顧客サービス担当者たちによるランキングは以下の通りになりました。

良くも悪くも自分のしたことを過大に見積もる 「自己中心性バイアス」

良い行いは自分がするし、悪い行いは他人がする日本における実験(1993年)で、被験者たちは、公正な行動については「わたし」という言葉から書き始めるが、公正ではない行動については、「人は」という言葉から書き始める傾向がありました(※2)。 自己中心性バイアス(Egocentric bias)自己中心性バイアス(Egocentric bias)とは、 他の人がしたことよりも、自分のしたことを過大評価する傾向 です。マイケル・ロス(Michael Ross)とフィオーレ・シコ

自分に似ている人を守りたくなる 「防衛的帰属仮説」

被害者が自分に似ていると加害者の罪はより重いと考え、加害者が自分と似ていると罪はより小さいと考えてしまう 被害者が、自分に似ているとき、加害者の罰をより重いと考える傾向が人にはあります。一方で、加害者が自分に似ている場合は、罪はより低いと考えてしまいます。これらを「防衛的帰属仮説」といいます。 防衛的帰属仮説防衛的帰属仮説 (Defensive attribution hypothesis)とは、 事故などのニュースを聞いた時、被害が大きいほど、あるいは被害者が自分の

質問による調査は正確ではないことが多い。その理由となる「6つの反応バイアス」

質問は難しい心理学などの研究では、多くの質問フォームを使って調査を行います。しかし質問の仕方によっては、回答に歪みが生じます。むしろ歪みが生じないような質問を作ることのほうが難しいほど。このように回答をする際に、正確ではない回答をしてしまうことを「反応バイアス」といいます。ここでは6つの反応バイアスを紹介します。 反応バイアス反応バイアス(Response bias)とは、 質問に対して回答者が不正確な回答や虚偽の回答をしてしまう幅広い傾向 です。反応バイアスは、さまざ