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そして今も窓の前で。

白いレースのカーテンがかかった掃き出し窓。
その前に文机を運んでくる。
ここが私にとっての『創作の小部屋』。

そのことに気がついたのは、実は最近のこと。
お題のおかげで、ここが私にとって
『創作と集中のための大切な場所』
なのだと知ることができたのだった。
他の場所ではなかなか得られなかったもの。
想像と創造をカタチにするのを
助けてくれる場所。


文章を書く時の環境にはこだわりがある。

世の中には
pcやスマホ、手帳などがあれば、
どこででも書ける人がいる。
人のざわめきで満ちるカフェだろうが、
耳が痛くなるほど静かな図書館だろうが、
繰り返しの振動が眠気を誘う
電車の中だろうが。
そういう人は逞しいな、と羨ましくもある。
私は音や人の気配に敏感で、
それらに囲まれていると
気が散って集中できない。
我ながら、損な体質だと思う。
しかし
自分に合った環境にあって
集中のスイッチが入ったならば、
もう周りのことは見えないし、
聞こえなくなる。
ただひたすらに、
自分と紙と鉛筆だけの世界に
没頭する。

すぐ目の前に
壁になるものがある方が集中できる。
それは高校や大学の受験勉強の際に
自ら発見したことだった。
視界がひらけた場所だと
雑多な情報が入ってくるからだろうか。
とにかく机の前には壁。
もちろんそこには何も掛けない。
目標○点、などと紙に書いて貼るのは
言語道断だ。
目の前がただの壁だと
とにかく集中しやすかった。

その時の記憶が染みついているからなのか、
今でも集中して文章を書きたい時には
目の前には壁、の環境を探し求める。
家のつくりの事情により、
机のすぐ前に壁、というシチュエーションは
残念ながら用意できないのだけれど、
透けないミラーレースのカーテンは
壁の役目を買って出てくれた。
しかもカーテン越しの窓には
さらに良い点があった。
夜が近づくにつれて、窓の外が暗くなる。
没頭する私に
時間の経過をシンプルに
わかりやすく
教えてくれるのだ。

もう夜だよ、こんな時間だよ。

と。

そこで私は初めてハッとして、
そろそろ切り上げようか、今日はここまで。
と、手を止めるのだ。
時間の教え方として、
とても控えめで、尚且つ、説得力がある。

さあ、書こう。
そう決めたら、私はこの窓の前へ居座る。
静かな空間に遠慮なく身を委ね、
カチッと音が聞こえそうなほどに
スイッチをオンにする。
そして頭の中から湧き上がるものを
紙の上に広げてゆく。
カーテン越しの光はやわらかく
目を傷めない。

ああ今日も
スッキリするくらい出し切った。
ありがとう。


文章を書いて生きていきたい。 ✳︎ 紙媒体の本を創りたい。という目標があります。